イシスフォルディア学名Isisfordia)は、ワニに近縁なワニ形上目新鰐類に属する絶滅した爬虫類[1]。全長は約1メートルで、化石オーストラリア白亜紀中頃の地層から産出している[1]。形態はアメリカアリゲーターと類似するが、吻部がより平坦かつより長い[2]。当初は最初期の正鰐類として記載されたが、その系統的位置に関しては後継研究で見解が分かれており、正鰐類とする文献とそれよりも基盤的な派生的新鰐類とする文献が見られる[1]

イシスフォルディア
生体復元図
地質時代
白亜紀半ば(約9800万 - 9500万年前)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 四肢動物上綱 Tetrapoda
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜型下綱 Archosauromorpha
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
上目 : ワニ形上目 Crocodylomorpha
階級なし : 新鰐類 Neosuchia
: イシスフォルディア Isisfordia
学名
Isisfordia Salisbury et al., 2006
シノニム
  • Isisfordia duncani Salisbury et al., 2006
  • I. selaslophensis (Etheridge, 1917) Hart, 2020
  • I. molnari Hart et al.2019

形態

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タイプ種 I. duncani は1990年代中盤にオーストラリアクイーンズランド州に分布するウィントン層英語版で発見された[3][2]。発見場所は乾燥した河床であり、頭蓋骨の前側部分を除く大部分が発見された[2]。化石の初期のプレパレーションはクイーンズランド博物館英語版で実施され、その後はクイーンズランド大学のスティーブ・ソールズベリーの古生物学研究室に移管された[2]。その後の4年に亘る遠征の後、ソールズベリーらの研究室は2005年4月に大きさのみオリジナルの標本と異なるほぼ完全な頭蓋骨を発見した[2]。学名はイシスフォード英語版の町の付近で化石が発見されたことにちなみ、種小名は化石の発見者であるイシスフォードの元副市長であるイアン・ダンカンへの献名である[2]

第二の種 I. molnariニューサウスウェールズ州のライトニング・リッジの付近に分布するグリマン・クリーク層英語版で発見された神経頭蓋が発見され、2019年に命名された。また、同一のユニットから産出した上顎骨断片に基づいて命名された Crocodylus (Bottosaurus) selaslophensisI. molnari に再分類された[4] 。しかし、後に Hart (2020) は C. selaslophensis のホロタイプが AM F125553 と重複しないことを指摘し、C. selaslophensisI. molnari とは別種の I. selaslophensis として扱った。なお、彼は両者がシノニムの関係にある可能性も言及した[5]

現生ワニとの関係

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派生的な新鰐類における背側皮骨板のセグメンテーション。左から順にベルニサルティアスシスクス、イシスフォルディア、イリエワニ

化石の発見を経て古生物学者は、以前考えられていたよりも3000万年早い白亜紀において現生ワニを包含するグループがゴンドワナ大陸で最初に進化したと考えるようになった[2]。イシスフォルディアの形態は現生のワニと類似しており、ボールとソケット状の関節を持つ脊柱や、完全な骨性の二次口蓋を有していた。後者は口腔に空気を入れることなくへ空気を通す仕組みである[2]

Turner and Pritchard (2015) の系統解析では、イシスフォルディアはスシスクスと共にディロサウルス科英語版よりも派生的な非正鰐類新鰐類とされ、ゴニオフォリス科よりも基盤的とされた[6]。Rio and Mannion (2021) はイシスフォルディアを正鰐類から除外し、パラアリゲーター科英語版姉妹群とした[7]。また、Hart et al. (2019) は系統関係の議論を避け、比較的派生的な非正鰐類型新鰐類と正鰐類との間の過渡期の特徴が見られると指摘した[4]

出典

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  1. ^ a b c 土屋健『地球生命 水際の興亡史』技術評論社、2021年7月28日、143-144頁。ISBN 978-4-297-12232-4 
  2. ^ a b c d e f g h “Ancestor of all modern crocodilians discovered in outback Queensland”. The University of Queensland. (14 June 2006). http://www.uq.edu.au/news/?article=9853 11 July 2013閲覧。 
  3. ^ Missing link crocodile found down under”. Science Buzz. Science Museum of Minnesota (18 June 2006). 11 July 2013閲覧。
  4. ^ a b Hart, Lachlan J.; Bell, Phil R.; Smith, Elizabeth T.; Salisbury, Steven W. (2019-06-21). Isisfordia molnari sp. nov., a new basal eusuchian from the mid-Cretaceous of Lightning Ridge, Australia”. PeerJ 7: e7166. doi:10.7717/peerj.7166. ISSN 2167-8359. PMC 6590469. PMID 31275756. https://peerj.com/articles/7166. 
  5. ^ Hart, Lachlan J. (2020-02-25). “Taxonomic clarifications concerning the crocodyliform genus Isisfordia” (英語). PeerJ 8: e8630. doi:10.7717/peerj.8630. ISSN 2167-8359. PMC 7047858. PMID 32140307. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7047858/. 
  6. ^ Turner AH, Pritchard AC. (2015) The monophyly of Susisuchidae (Crocodyliformes) and its phylogenetic placement in Neosuchia. PeerJ 3:e759 https://doi.org/10.7717/peerj.759
  7. ^ Rio, Jonathan P.; Mannion, Philip D. (6 September 2021). “Phylogenetic analysis of a new morphological dataset elucidates the evolutionary history of Crocodylia and resolves the long-standing gharial problem”. PeerJ 9: e12094. doi:10.7717/peerj.12094. PMC 8428266. PMID 34567843. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8428266/.