アジポニトリル (adiponitrile) は有機化合物の一種で、ジニトリルである。可燃性で有毒ガスを放出する恐れがあることから、国連危険物分類の分類6「毒物類」に指定されている[4]。また、日本の毒物及び劇物取締法の関連法令である毒物及び劇物指定令の第2条 第32号では「有機シアン化合物」の一種として劇物指定されている[5][6][7]。日本の消防法に定める第4類危険物(引火性液体)の第3石油類に該当する[7][8]

アジポニトリル
Structural formula of adiponitrile
Ball-and-stick model of the adiponitrile molecule{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 111-69-3 チェック
PubChem 8128
ChemSpider 13876621 チェック
UNII SYT33B891I ×
EC番号 203-896-3
国連/北米番号 2205
MeSH adiponitrile
RTECS番号 AV2625000
バイルシュタイン 1740005
特性
化学式 C6H8N2
モル質量 108.14 g mol−1
外観 無色の液体
密度 951 mg mL−1
融点

1 ~ 3 °C

沸点

295.1 °C

への溶解度 50 g/L (20 °C)
蒸気圧 300 mPa (at 20 °C)
屈折率 (nD) 1.438
熱化学
標準生成熱 ΔfHo 84.5–85.3 kJ mol−1
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(高毒性)
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H301, H315, H319, H330, H335
Pフレーズ P260, P284, P301+310, P305+351+338, P310
NFPA 704
2
4
0
発火点 550 °C (1,022 °F; 823 K)
爆発限界 1.7–4.99%
許容曝露限界 無し[2]
半数致死量 LD50 155 mg kg−1 (経口, ラット)
関連する物質
関連するアルカンニトリル グルタロニトリル
関連物質 アジピン酸
アジピン酸ジヒドラジド
塩化アジポイル
アジポアミド
1,4-ジイソシアノブタン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アジポアミド五酸化バナジウムなどを触媒として脱水することで得られる。

H
2
NCO(CH
2
)
4
CONH
2
→ NC(CH
2
)
4
CN + 2 H
2
O

アジポニトリルにニッケルなどを触媒として水素を付加することでヘキサメチレンジアミンが得られる。

NC(CH
2
)
4
CN + 4H
2
→ H
2
N(CH
2
)
6
NH
2

アジポニトリルの加水分解により、アジピン酸が得られる[9]

6,6-ナイロンの合成中間体として重要な化合物である。

出典

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  1. ^ adiponitrile - Compound Summary”. PubChem Compound. USA: National Center for Biotechnology Information (26 March 2005). 15 June 2012閲覧。
  2. ^ a b NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0015
  3. ^ Archived copy”. 2015年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月26日閲覧。
  4. ^ アジポニトリル”. 国際化学物質安全性カード (ICSCs). 国際労働機関 (ILO) および世界保健機関 (WHO) (2018年5月). 2020年2月1日閲覧。 “「国連分類 国連危険物分類(UN Hazard Class):6.1; 国連包装等級(UN Packing Group):III」”
  5. ^ 毒物及び劇物取締法 (毒劇法) - 毒物劇物の検索”. 国立医薬品食品衛生研究所 (NIHS). 2020年2月1日閲覧。 “「官報公示名: 有機シアン化合物」「化学物質(例): アジポニトリル」「CAS: 111-69-3」「分類: 劇物」「規定: 指32」”
  6. ^ 毒物及び劇物指定令(昭和四十年政令第二号)第2条: 劇物”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年6月19日). 2020年2月1日閲覧。 “令和元年政令第三十一号改正、2019年7月1日施行分”
  7. ^ a b 製品安全データシート アジポニトリル”. 職場のあんぜんサイト. 厚生労働省 (2010年3月31日). 2020年2月1日閲覧。 “「適用法令 毒物及び劇物取締法: 劇物(指定令第2条)(政令番号:32)」「適用法令 消防法: 第4類引火性液体、第三石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1)」”
  8. ^ 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表第一”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2018年6月27日). 2020年2月1日閲覧。 “平成三十年法律第六十七号改正、2019年7月1日施行分”
  9. ^ Whyman, Robin 著、碇屋隆雄・山田徹 訳『有機金属と触媒 -工業プロセスへの展開』化学同人、2003年。ISBN 978-4759809480