アイダレッド’(: ‘Idared’)[注 1]は、アメリカ合衆国アイダホ州モスコーで育成されたリンゴ(セイヨウリンゴ)の栽培品種の一つである。1930年代に‘ジョナサン(和名: 紅玉)’と‘ワグナー’の交配によって作出され、1942年に発表された。果実は中型から大型、赤くなる(図1)。果肉は緻密で甘酸っぱい。生食および調理用に用いられる。貯蔵性がよい。

‘アイダレッド’
1. 果実
リンゴ属 Malus
セイヨウリンゴ M. domestica
交配ジョナサン/紅玉’ (‘Jonathan’) × ワグナー (‘Wagener)’
品種 ‘アイダレッド’[1] (‘Idared’)
開発 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 アイダホ州、1942年
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特徴

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樹姿は開張性で樹勢は中程度、わい化しやすい[6]。豊産性で収穫期は10月ごろ[6][7]自家不和合性に関わるS遺伝子型はS3S7である[7]。癌腫病、うどんこ病さび病に対する感受性が高い[6]

2a. 果実
2b. 果実とその断面

果実は中型から大型、円形から偏円形[6][8](図2)。地色は黄緑色から黄色であり、紅色に染まる[6][8](上図1, 2)。果皮は滑らかで光沢があり、熟すと油あがり[注 2]することがある[6]。果肉は淡黄色(上図2)、硬く緻密、果汁が多く甘酸っぱい[6]。早めに収穫されたものはやや味気ない傾向がある[6]。貯蔵性が極めてよく、普通冷蔵で4–6ヶ月ほど保存できる[6][7]

生食のほか、アップルソースアップルパイなど調理用に適している[6]。形が崩れにくく、焼きリンゴにも用いられる[6]シードルの原料とされることもある[6]

生産

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‘アイダレッド’はヨーロッパで多く生産されており、2022/2023年の生産量(33,594,210ブッシェル)はリンゴ全生産量の5.3%、品種別では第4位であった[10]アメリカ合衆国における2022/2023年のリンゴ生産では、‘アイダレッド’の生産量(5,552,954ブッシェル)は全体の2.3%、品種別では第11位であった[10]

歴史

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アメリカ合衆国アイダホ州モスコーのアイダホ農業試験場において、1930年代に‘ジョナサン (紅玉)’ (‘Jonathan’) を種子親、‘ワグナー’ (‘Wagener’) を花粉親とした交配が行われ、その実生の中から選抜、1942年に発表された[6][8][7][11][1]

派生品種

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‘アイダレッド’を種子親としたものとして、‘Pia’(花粉親は‘Helios’)[12]、‘Piflora’(花粉親は‘ゴールデンデリシャス’)[13]、‘Pingo’(花粉親は‘Bancroft’)[14]などがある。

一方、‘アイダレッド’を花粉親としたものとして、‘Arlet’(種子親は‘ゴールデンデリシャス’)[15]、‘Fiesta’(種子親は‘コックスオレンジピピン[16][17]、‘Pikosa’(種子親は‘Pirella’)[18]、‘Pilana’(種子親は‘Pirella’)[19]、‘Pivita’(種子親は‘Pirella’)[20]などがある。

また、‘アイダレッド’(種子親)× ‘Maigold’(花粉親)を種子親とし、‘Elstar’を花粉親とした交配からスイスで育成された品種が‘Junami’である[21]

脚注

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注釈

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  1. ^ 栽培品種(単に「品種」とよばれることも多いが、分類学における「品種」とは異なる区分であり、規約が異なる)を表記する国際規約(国際栽培植物命名規約)では、栽培品種名(栽培品種小名)を引用符で囲むこととしている[2]。近年では、日本語でも同様に表記されることがある[3][4][5]。本稿では、これにならって栽培品種名を引用符で囲って表記する。
  2. ^ 果皮からリノール酸オレイン酸などの不飽和脂肪酸を分泌し、果実の表面が光ってベタつくこと[9]

出典

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  1. ^ a b エリカ・ジャニク 甲斐理恵子訳 (2015). “アイダレッド”. リンゴの歴史. 原書房. p. 160. ISBN 978-4562051724 
  2. ^ Brickell, C.D. et al. (2016). “International Code of Nomenclature for Cultivated Plants (9th ed.)”. Scripta Horticulturae. 18. International Society of Horticultural Science. ISBN 978-94-6261-116-0. https://www.ishs.org/sites/default/files/static/ScriptaHorticulturae_18.pdf 
  3. ^ リンゴ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年1月4日閲覧。
  4. ^ 金浜耕基, ed (2015). 果樹園芸学. 文永堂出版. ISBN 978-4830041297 
  5. ^ 小松宏光, 臼田彰, 羽生田忠敬, 小池洋男, 山下裕之 & 宮沢孝幸 (1998). “リンゴ新品種‘シナノスイート’について”. 長野県果樹試験場報告 5: 9-15. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010640958.pdf. 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m Idared”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年11月1日閲覧。
  7. ^ a b c d Idared apple”. Orange Pippin. 2024年11月1日閲覧。
  8. ^ a b c Idared”. National Fruit Collection. 2024年11月1日閲覧。
  9. ^ 一木茂 (2020年3月26日). “第17回 「ジョナゴールド」果皮の「油あがり」”. 一木先生のリンゴ学講座. りんご大学. 2024年10月9日閲覧。
  10. ^ a b Industry Outlook 2023”. U.S. Apple Association. 2024年11月11日閲覧。
  11. ^ Summary of the Idared
  12. ^ Pia”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  13. ^ Piflora”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  14. ^ Pingo”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  15. ^ Arlet apple”. Orange Pippin. 2024年11月1日閲覧。
  16. ^ Fiesta apple”. Orange Pippin. 2024年11月1日閲覧。
  17. ^ Fiesta”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年11月1日閲覧。
  18. ^ Pikosa”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  19. ^ Pilana”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  20. ^ Pilana”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年12月27日閲覧。
  21. ^ Junami apple”. Orange Pippin. 2024年11月1日閲覧。

外部リンク

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  • Idared”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年11月1日閲覧。