Zの悲劇』(ゼットのひげき、The Tragedy of Z )は、1933年に発表されたアメリカ合衆国推理作家エラリー・クイーンの長編推理小説

Zの悲劇
著者 エラリー・クイーン
(バーナビー・ロス名義)
発行日 1933年
ジャンル 推理小説
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
形態 著作物
前作 Yの悲劇
次作 レーン最後の事件
ウィキポータル 文学
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ドルリー・レーンを探偵役とする「悲劇」4部作の第3部。本作を含む4作品は「バーナビー・ロス」名義で発表された。

あらすじ

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Yの悲劇』から10年、警察本部を退職したサム警視は、私立探偵事務所を開いて娘のペイシェンスとともに暮らしている。

そんなある日、2人が不正金調査で滞在していた街で殺人事件が発生し、前科者のアーロン・ドウが容疑者として逮捕される。独自の推理でドウが無実であるという結論を出したペイシェンスは、ドルリー・レーンの協力も得てドウの無実を証明しようとするが、決定的な証拠が得られぬままドウは有罪となり、終身刑を宣告されて刑務所へ送られた。

さらに、突如ドウが脱獄し、同じ日の夜に第2の殺人が発生したため、状況はさらに悪化する。2つの殺人の犯人として死刑を宣告されたドウを救い、真犯人を捕らえるため、ドルリー・レーン、ペイシェンス、サム警視は死刑執行時刻に追い詰められながら奮闘する。

特徴

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  • 容疑者を一堂に集め、犯人ではない者を次々に理由を挙げ消していき、最後に残った一人を犯人とする劇的なクライマックス(同様の手法は、クイーンの先行作『フランス白粉の謎』でも用いられている)。

提示される謎

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  • 犯人当て(犯人ではない者への無罪証明)

作品の評価

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  • エラリー・クイーン・ファンクラブ会員40名の採点による「クイーン長編ランキング」では、本作品は19位となっている[1]
  • ジャーロ』2005年冬号の「海外ミステリーオールタイム・ベスト106」では、本作品は45位となっている[2]

作品について

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  • タイトルのZは事件の秘密に関連する。
  • ブルーノ地方検事は今回も一応主要登場人物であるが、州知事となっており登場機会は激減している。
  • 他の3作は三人称視点で描かれているが、本作のみペイシェンス・サムの一人称視点で描かれている。

日本語訳書

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出版年月日 タイトル 出版社 文庫名等 訳者 巻末 ページ数 ISBNコード カバーデザイン 備考
1951年 Zの悲劇 新樹社 ぶらっく選書 第18 岩田賛 319
1956年 Zの悲劇 東京創元社 世界推理小説全集 第38巻 鮎川信夫 272 監修:江戸川乱歩ほか
1959年5月31日 Zの悲劇 早川書房 世界探偵小説全集 No.303
(現ハヤカワ・ポケット・ミステリ
砧一郎 319
1959年 Zの悲劇 新潮社 新潮文庫 横尾定理 訳者あとがき 336 978-4102137031 増田幸右
1959年9月20日 Zの悲劇 東京創元社 創元推理文庫104-3 鮎川信夫 中島河太郎 357
1961年 世界名作推理小説大系 別巻 第2
Zの悲劇 レーン最後の事件
東京創元社 世界名作推理小説大系 鮎川信夫 中島河太郎 582
1965年 Zの悲劇 角川書店 角川文庫 田村隆一 367 石岡瑛子ほか [日本語訳 1]
1983年4月 Zの悲劇 東京創元社 創元推理文庫104-3 鮎川信夫 中島河太郎 358 4-488-10403-7 辰巳四郎 ほか 新版
1989年7月15日 Zの悲劇 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫HM 2-44 宇野利泰 新保博久
Aの次にZ
411 4-15-070144-X カバーデザイン:スタジオ・ギヴ
カバー写真:フォトニカ
2011年3月25日 Zの悲劇 角川書店 角川文庫 ク19-3 越前敏弥 解説 法月綸太郎 356 978-4-042-50717-8 國枝達也(角川書店装丁室)

児童書

出版年月日 タイトル 出版社 文庫名等 訳者 巻末 ページ数 ISBNコード カバーデザイン 備考
1989年12月1日 Zの悲劇 ポプラ社 ポプラ社文庫 怪奇・推理シリーズ108 木下友子 206 4591034380 絵:関よしみ
2004年9月1日 Zの悲劇 ポプラ社 ポプラ社文庫 ミステリーボックス 4 木下友子 201 978-4591082300 若菜等+Ki 新装改訂版

注釈(日本語訳)

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  1. ^ 現在、グーテンベルク21が電子書籍化している。

脚注

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  1. ^ 『エラリー・クイーン Perfect Guide』(ぶんか社、2004年)
  2. ^ 『ジャーロ』(光文社、2005年)