Xabre
Xabre(セイバー)は、SiS社が開発したビデオチップ(グラフィックアクセラレータ、GPU)、およびそれらの製品シリーズ名である。
Xabreという名称は、eXtraordinary, Advanced, Brilliant, Rapture, Enrichmentの5語より1字ずつとり[1]、剣を意味する Saber の音に当てはめたものである。性能・価格的には、ローエンドからメインストリームクラスの製品である[1]。
概要
編集Xabreは、SiSによるビデオチップ「SiS 315」の後継製品で、コードネーム SiS 330 シリーズとして開発された[1]。256ビットの3Dエンジンと128ビットの2Dエンジンで構成されるグラフィックスコアを持つ。
4P/2Tで構成されるピクセルピクセルシェーダー Pixelizerを搭載し、バーテックスシェーダーはソフトウェア処理とすることでDirectX 8.1に対応している[1]。Xabre 600では Vertexilzer と呼ぶバーテックスシェーダーのソフトウェア処理を支援する仕組みが搭載された[2][3]。
また、AGP 8Xバスを他社に先駆けて採用[1]。SiSはAGP 8XならびにDirectX 8へ対応したXabreのデザインを 8X8 と呼んだ[1]。Xabreの発表時はまだAGP 8Xの規格自体が正式に策定されておらずプロポーザル規格に準じた対応であった[1]が、AGP 8xをサポートするSiS 648チップセットと合わせ、同シリーズのアドバンテージとして積極的にアピールされた。この他、2x/4xのFSAAに対応する Jitter-Free Anti-Aliasing およびディスプレイ出力の色調補正を行う Coloredeemer などの機能を搭載する[1]。
さらにコンパニオンチップのSiS 301を併用すると、デュアルディスプレイ機能の Double Scene Technology を利用可能となる。これによりセカンダリの出力はVGAだけでなく、DVIまたはS-Video/NTSC/PALの出力も可能となる。実際にXabre 400/600を搭載したビデオカードの多くがSiS 301を搭載している。
動画再生支援機能としては最大20 Mビット/秒のビットレートでMPEG-1/2のハードウェアデコードが可能な他、スケーリングおよびインターレース補完、ダウンスケーリングにもハードウェアで対応する[1]。
歴史
編集採用製品
編集Xabreを採用したビデオカードは大手ボードベンダー各社よりリリースされた。特に、Triplex社より販売されたビデオカードは銀色の基板や、三角柱の独特なパッケージングデザインが話題になった[5]。
派生品
編集SiSは2002年、Intelプラットフォーム向けの統合チップセット SiS 660 および、AMDプラットフォーム向けの統合チップセット SiS 760 を発表した。これらに統合される Mirage2 (旧称Ultra256) グラフィックスコアはXabre80がベースとなっている。
SiS 760はメインメモリの一部をVRAMとして使用するUMA以外にビデオメモリ専用に外部メモリを接続する Local Frame Buffer (LFB) をサポートする。LFBはメモリバス幅64ビットで接続され、UMAとの併用も可能である。LFBとUMAとの併用時にはメモリバス幅は128ビットとなる。
後にLFBサポートを省略した"SiS 760GX"も発表された。
製品仕様
編集製品名 | 製造プロセス | コアクロック | メモリクロック | メモリバス幅 | 最大容量 | インターフェース |
---|---|---|---|---|---|---|
Xabre 600 | 130 nm | 300 MHz | 600 (300×2) MHz | 128ビット | 128 MB | AGP 8x |
Xabre 400 | 150 nm | 250 MHz | 500 (250×2) MHz | 128ビット | 128 MB | AGP 8x |
Xabre 200 | 150 nm | 200 MHz | 400 (200×2) MHz | 128ビット | 128 MB | AGP 8x |
Xabre 80 | 150 nm | 200 MHz | 333 (166×2) MHzまたは166 MHz (SDR) | 64ビット | 64 MB | AGP 4x |
Mirage 2 | N/A | 133 MHz | N/A | 128ビットまたは64ビット | 128 MB | AGP 8x相当 |
評価とその後
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XabreシリーズはGPU市場ではマイナープレイヤーに属するSiSの製品でありながら、多くのビデオカードOEMメーカーに採用された。またNVIDIAが供給する競合製品であるGeForce4 MXシリーズへの値下げ圧力となる[6]など一定の成功を収め、SiSは前モデルであるSiS 315に続き、GPUベンダーとして一定の存在感を示した。
これはXabreシリーズが安価であることに加え、普及価格帯のビデオカード製品としては初めてピクセルシェーダ1.3を搭載し、DirectX 8.1に対応した点が大きい。(当時の競合となるGeForce4 MX、RADEON 7x00ともにDirectX 7世代であった)
その後、Xabreシリーズの後継製品として、Xabre II がたびたびアナウンスされた。これは8P/8Tで構成されピクセルシェーダ2.0およびバーテックスシェーダ2.0を搭載することでDierctX 9.0に完全対応し、0.13 μmプロセスルールで製造されるGPUであるとされていた。しかしXabre IIが正式発表されないまま、SiSはグラフィック部門を分社化する形でXGI社を設立。Xabreシリーズに関する諸権利はSiSに残されたが、以後SiSではディスクリート向けGPUの開発は行われず、Xabreシリーズも終了した。
脚注
編集- ^ a b c d e f g h i j k “SiS、新ビデオチップ「Xabre」を公開”. (2022年4月25日) 2022年7月31日閲覧。
- ^ “COMDEX/Fall会場レポート:自作PCパーツ・その他編 時代はデュアルチャネルDDRへ ~Granite BayやSiS655搭載マザーに注目”. (2002年11月22日) 2022年7月31日閲覧。
- ^ “RADEON 9700でDirectX 9 RC0を試す” 2022年7月31日閲覧。
- ^ “SiS、バーテックスシェーダーを強化した「Xabre600」”. 2022年7月31日閲覧。
- ^ ASCII. “初のAGP 8x対応GPU“Xabre 400”搭載ビデオカード展示開始!1万円台後半で早ければ今週末入荷予定”. ASCII.jp. 2023年2月27日閲覧。
- ^ “SiS Xabre 400の鮮やかな登場” 2022年7月31日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- SiS(英語)