Wikipedia:ルールすべてを無視しなさい/解説
Wikipedia:ルールすべてを無視しなさい は、二文だけのシンプルな方針ですので、様々な解釈がなされます。その解釈とルールの歴史についてここで説明します。
解釈の例
編集もちろん、これ以外に解釈があります。適切な解釈がありましたら随時追加をお願いします。
ルール全部を把握する必要はない
編集ウィキペディアのルールは複雑です。さらに悪いことに、月日が経つにつれて、ますます複雑になっていきます。でも、心配しないでください(特に新規参加者の方)。ルール全部を覚える必要はありません。このルール「ルールすべてを無視しなさい」は、とりあえずルールを知らなくても編集できることを保証するものです。まずは、百科事典の編集を楽しんでください。
編集をしていくうちに自分や他の人の編集したものが、修正されていくのを見ることができるでしょう。また、自分の編集したものにコメントがついたり「要出典」のようにかかれたり、残念なことに削除されたりするかもしれません。そのような体験を通して、ウィキペディアのルールを身につけてください。特に重要なルールについては、Wikipedia:五本の柱にまとめられています。できるだけ早くこれらのルールを理解してください。
ルールは破られるためにある
編集ウィキペディアでは、百科事典をつくるという目的の下、多くの人が活動しています。複数の人が共同で作業する限り、ルールが必要です。ルールがあるがために、執筆を協調して行えます。
しかしルールは、暫定的な対応だったり、問題が起こるごとに条項が追加されたり、細かい状況にあわせたりしたために、複雑なものになりがちです。よく知らなかったルールがあったために、あなたが一方的に非難されたように思えることがあるかもしれません。また、ルールを破ってしまうことを恐れて、何も出来なくなるのは本末転倒です。
もしも、いまあるルールが妨げとなって、ウィキペディアの改善や維持が難しくなるのなら、そのルールを無視することも考えてみてください。その場合、ルールの代わりに常識を働かせてください。あなたがウィキペディアを理解しており、常識的で理性的な行動をとるのなら、きっとうまくいくでしょう。
ルールの精神と常識を尊重する
編集ルール名「ルールすべてを無視しなさい」にはパラドックスが含まれています。このルールで対象としているものには、「ルールすべてを無視しなさい」自体も含みます。もしも、ルールすべてを破るような行動をしても、この「ルールすべてを無視しなさい」だけは守れてしまいます。逆にルールすべてを守るよう行動しても、このルールを守ることはできません。ウィキペディアのルールは複雑です。「ルールすべてを無視しなさい」は一文のみが矛盾していますが、ウィキペディアのルール全体を見渡すと、矛盾は他にも当然あるでしょう。完璧なルールなど存在しません。
単にルールの文面に従うのではなく、そのルールに含まれている精神を理解し、尊重してください。例えば、スリー・リバート・ルールは編集合戦ではなく、合意形成で論争を解決するのが目的です。このルールに引っかからないように編集合戦を繰り返す行為は、ルールの精神に反します。文面通りでは守れないルールである「ルールすべてを無視しなさい」は、ルールの精神が尊重されることを前提としています。このルールは、ルールの精神を無視することの正当化に使ってはいけません。
また、ルールを適用するときには常識を用いてください。ルールを表面上しか守らない行為は、必要以上にルールを複雑にする原因にもなります。例えば、あなたの家の前で、たびたび犬のフンがされて困っているとします。そこで、あなたは家の前に「ここで犬にフンをさせないでください」と張り紙をしました。ルールを表面上しか解釈されないのなら「犬の小便ならいいのか」と屁理屈を言われたり、今度は猫のフンをされたりするかもしれません。今度はそれに対応するように張り紙の文面を付け加えなければならないでしょう。そうすると今度は空き缶が家の前に……。というようにだんだん文面が複雑になっていきます。常識で判断すれば「ここで犬にフンをさせないでください」という張り紙は、「ここを綺麗に保ってください」という意味に解釈すべきでしょう。
一般的に、あるルールを無視して行動するためには、その根拠となる適切な理由が必要となります。この方針文書のルールすべてを無視という表現はルールすべてを全く無効とする態度を認めるものではありません。いまある方針を十分に考慮した上で、そのルールのいくつかについて、あえてそれらを省略した行動を取っても、それがウィキペディアの基本精神に合った解決方法であることを示しています。またこの方針が十分正当な理由によって運用されれば、個々の方針文書やコミュニティの改善はよりスムーズになるでしょう。しかし根拠もなく濫用されれば、かえって混乱は大きくなるでしょう。
このルールの運用について
編集このルールは、百科事典の編集に集中できるようにするためにあります。無用な論争を避けるためにも以下の点に注意してください。
そのルールが本当に邪魔なら、ルールを変えていく
編集結局、複数の人が共同で作業する限り、ルールが必要です。ルールがあるがために、投稿者は協調しやすくなり、無用な論争を避けることができます。この「ルールすべてを無視しなさい」ルールをむやみに適用すると、あなたをめぐって様々な論争が起こるでしょう。あなたはその行為に対して説明しなければなりませんから、その対応に手間をとられてしまい、かえって快適な編集が出来なくなります。
あるルールが本当に邪魔で「ルールすべてを無視しなさい」を何度も適用しなければならないのならば、そのルールの変更をノートなどで提案してください。あなたの提案がウィキペディアの目的に合った良いものならば、きっと賛同者が集まり変更できるでしょう。ウィキペディアの項目すべてが不完全で改善を必要とするのと同様に、ウィキペディアのルールすべても不完全で改善が必要なものです。
管理者権限の行使への適用は慎重に
編集「ルールすべてを無視しなさい」は、ある編集者がした行為を他の編集者が変更できることが前提となっています。しかし、管理者権限はコミュニティにより認められた一部の人しか行使できません。このため管理者権限を行使する場合にこのルールを適用するのは慎重にならなければなりません。もしも判断に迷った場合には、管理者権限を行使しない方が問題がおこる可能性が少なくなります。管理者にとって管理者権限の行使は義務ではありません。
もちろん、緊急性がある場合などに、コミュニティで十分時間をかけた合意形成をおこなうことができないまま、管理者の判断で権限行使が必要なこともあるでしょう。その場合、他の利用者から理由を聞かれたときには、説明しなければなりません。説明に「ルールすべてを無視しなさい」を持ち出してもかまいませんが、そのときには、その行動の背景(尊重したルールや援用した常識など)を記述する必要があるでしょう。
そして、コミュニティのユーザーも、管理者が無償のボランティアとして管理者権限を行使しているということを忘れないでください。むやみにこのルールだけを持ち出すのは、このルールの誤った使い方になります。
判断のフローチャート
編集何かを思いついたとします…
- それは常識から考えて正しく、この百科事典を改善するものと確信できますか?
- 確信できない: やめてください。
- 確信できる:
- それは何かルールに違反しますか?
- 違反しない: やってください。
- 違反する:
- それはルールがおかしいからですか?
- いや、ルール自体は正しい:ルールを無視してやってください。
- そう、ルール自体がおかしい:まずそのルールを変えてから、やってください。
- それはルールがおかしいからですか?
- それは何かルールに違反しますか?
最後に
編集どうです?この難しいルールが分かりましたか?分からなくなりそうだったら考えすぎず、記事を書いてみるのもいいかもしれませんね。
慎重にルールを破壊するのは素敵だ。ルールを無視するのはそうじゃない。ルールを知らないのはうまくない。
—AxelBoldt
このルールの英語版での歴史
編集このルールは英語版ウィキペディアの黎明期から存在します。ウィキペディアが発足した時には、ルールは不要でした。百科事典をつくるという目的のもと、参加者誰もが自由に編集してました。参加者が増えて、ルールが必要になったとき、ラリー・サンガーがこの "Ignore All Rules"を提案し、ルール集(Rules to consider)の先頭に書き入れました。
その後、ラリー・サンガーは、このルールよりもWikipedia:ページの編集は大胆にの方が自分の意図したものに近いと感じるようになり、この "Ignore All Rules" に反対するようになりました([1]の"Some questions..."から始まる段落)。また、このルールが荒らしを助長しているという指摘があり、存続するか廃止するかで議論となりました。結局、このルールは必要とされました。また、一時期解説が付け足されましたが、多様な解釈を許すほうがこのルールの本質に合っていると考えられるようになり、英語版では一文だけの状態に戻されています。