VP9
VP9はGoogleが開発しているオープンでロイヤリティフリーな動画圧縮コーデックであり、VP8の後継である。コンテナとしてはWebMなどを使う。
MIMEタイプ | video/VP9 |
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開発者 | |
初版 | 2012年12月13日 |
最新版 | 0.6 (2016年3月31日 ) |
種別 | 動画ファイルフォーマット |
包含先 | Matroska, WebM, IVF |
派生元 | VP8 |
拡張 | VP10 (AV1) |
国際標準 | (Bitstream Specification) |
オープン フォーマット | Yes |
ウェブサイト | www |
作者 | |
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最新版 |
1.8.1[3]
/ 2019年7月15日 |
プログラミング 言語 | C言語 |
対応OS | Unix系(Linux、macOS などを含む)、Windows |
サポート状況 | アクティブ |
種別 | 動画コーデック |
ライセンス | BSDライセンス |
公式サイト |
www |
開発は2011年第3四半期に始まった[4][5]。VP9の開発目標は、同じ画質でVP8の半分のビットレートにすること[6]と、H.265よりも効率の良いコーデックにすること[5]であった。
採用
編集Google Chrome 29、Microsoft Edge14、Mozilla Firefox 28、Opera 16、Android 4.4、Safari 14にデコーダーが搭載されている。libvpxは1.3.0以降で扱える。FFmpegなどの各種動画を扱うツールもエンコード・デコードできる。
YouTubeがVP9を採用し、2017年には4K解像度での提供にH.264をやめ、VP9のみに絞ったため、非対応のApple標準のブラウザ、Safariにはそうした解像度は提供されなくなっていたが[7][8]、Apple T2(macOS Big Sur以降)またはApple M1を搭載するMacに限り、Safariでも対応するようになった。また、2016年に登場したIntelプロセッサ、Apollo Lakeまでに、NVIDIA GeForceは一部の900番台から、AMD RadeonはRX 5X00から、VP9のハードウェア・デコードに対応してきており、CPU・GPUに過大な負荷をかけることなく再生できるようになっている。
技術
編集VP8と比較して、VP9は仕様面で改善している。64x64ピクセルのスーパーブロックが採用されている[9]。スーパーブロックでは四分木コーディングが採用されている。
Rec. 601、Rec. 709、SMPTE-170、SMPTE-240、sRGBの色空間を扱える。
プロファイル
編集VP9 はプロファイル0とプロファイル1がある。プロファイル0はYUV420を扱える。プロファイル1ではYUV422、YUV444、αチャンネル、深度チャンネルなどを扱える。libvpx 1.4.0からは10ビット、12ビット色深度も扱える[3]。
特許
編集Googleと特許ライセンス管理団体MPEG-LA間で、ビデオ圧縮に関する特許についてライセンス合意し、VP9で使われている技術をサブライセンスする権限がGoogleに付与されている[10]。
特許クレーム
編集2019年3月、ルクセンブルクを拠点とするSisvelは、VP9とAV1に対する特許プールの情報を発表した。特許プールのメンバーには、JVCケンウッド、NTT、Orange S.A.、Philips、東芝などが含まれ、 どの企業もAVC、DASH、HEVCのいずれかの特許プール向けのMPEG-LAへの特許をライセンスしている企業である[11][12]。クレームが行われた特許の一覧は2020年3月10日に初めて公開された。一覧には、650件以上の特許が含まれている。
Sisvelが提示した価格は、ディスプレイデバイスごとに0.24ユーロ、VP9を使用しているディスプレイなしデバイスごと0.08ユーロである。ただし、エンコードされたコンテンツに対する特許のロイヤリティは求めていない[13][11]。しかし、Sisvelのライセンスはソフトウェアに対しても免除されない。
Googleは特許プールを認識しているが、VP9またはAV1の現在または今後の使用計画を変更する予定はない[14]。
VP10
編集Googleはさらなる圧縮効率を望み、VP10を開発していた。しかし、2016年に公開されたAV1(AOMedia Video 1)に組み込まれた。AV1には、AMD、ARM、インテル、NVIDIAなどのチップセット開発者、アドビ、Amazon、シスコ、Netflix、YouTubeなどストリーミングサービスの開発者などが参加している[15]。
後継:VP10からAV1へ
編集2014年9月12日、GoogleはVP10のデプロイが開始されたこと、VP10のリリースの18ヶ月後にビデオフォーマットをリリースを計画していることを発表した。2015年8月、GoogleはVP10向けのコードを公開し始めた。
しかし、GoogleはVP10をAV1(AOMedia Video 1)に取り込むことを決定した。AV1コーデックはVP10、Daala(Xiph/Mozilla)、Thor(Cisco)からの技術の組み合わせをもとに開発された。そして、Googleは、VP10を社内でも公式にもリリースしないことを発表した。その結果、VP9がGoogleがリリースしたVPxベースの最後のコーデックとなった。
VP9の現状
編集VP9の仕様書は、2016年3月31日のv0.6を最後に更新されておらず、未完成のままであるが、2021年現在、YouTubeをはじめ様々な場所で使われている[9]。GoogleがAV1(AOMedia Video 1)の開発にすでに移行しているということである。ライブラリのlibvpxは、Gitリポジトリとそのスナップショットが公開されており、2020年3月現在でもメンテナンスが続いている[16]。
関連項目
編集参照
編集- ^ “VP9 Video Codec Summary”. WebM Project (Google) 2013年7月4日閲覧。
- ^ Lou Quillio (2013年7月1日). “VP9 Lands in Chrome Dev Channel”. WebM Project (Google) 2013年7月4日閲覧。
- ^ a b libvpx/CHANGELOG at master · webmproject/libvpx
- ^ “VP-Next Overview and Progress Update” (PDF). WebM Project (Google) 2012年12月29日閲覧。
- ^ a b Adrian Grange. “Overview of VP-Next” (PDF). Internet Engineering Task Force 2012年12月29日閲覧。
- ^ “Next Gen Open Video (NGOV) Requirements” (PDF). WebM Project (Google) 2012年12月29日閲覧。
- ^ “Apple Safari、YouTubeの4K動画再生非対応に。YouTube、4K VP9エンコードのみに切り替え -”. PRONEWS (2017年2月6日). 2017年9月7日閲覧。
- ^ macOS Catalina以前はGoogle ChromeなどのVP9対応のブラウザからは閲覧可能。iOSやiPadOSはWebkitの制約上、サードパーティーのブラウザを導入しても閲覧できない。
- ^ a b Draft VP9 Bitstream and Decoding Process Specification
- ^ “グーグル、MPEG LAと「VP8」ビデオコーデックで合意”. CNET Japan (2013年3月8日). 2019年2月22日閲覧。
- ^ a b Ozer, Jan (2019年3月28日). “Sisvel Announces Patent Pools for VP9 and AV1”. Stream Learning Center. 4 April 2019閲覧。
- ^ Cluff, Phil (2019年3月28日). “Did Sisvel just catch AOM with their patents down?”. Mux.com. 4 April 2019閲覧。
- ^ Ozer, Jan (2019年3月28日). “No Content Royalties in Sisvel VP9/AV1 Patent Pools”. Streaming Media. Information Today Inc. 4 April 2019閲覧。
- ^ “Frequently Asked Questions” (英語). The WebM Project. April 15, 2021閲覧。
- ^ Steven Zimmerman (2017年5月15日). “Google’s Royalty-Free Answer to HEVC: A Look at AV1 and the Future of Video Codecs”. XDA-Developers. 2017年11月1日閲覧。
- ^ WebM Repositories