SCHAFT (ロボット)
株式会社SCHAFT(英語: SCHAFT Inc.)は、Alphabet傘下でロボットの研究開発を手がける日本の企業。2018年末に解散した[1]。
種類 | 非公開企業 |
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本社所在地 |
日本 東京都文京区 |
設立 | 2012年5月15日 |
業種 | 精密機器 |
法人番号 | 4013201019151 |
事業内容 | ロボットの研究開発 |
代表者 | 中西雄飛:CEO、浦田順一:CTO(2013年当時) |
主要株主 | Alphabet |
外部リンク |
schaft-inc |
概要
編集株式会社SCHAFTは、東京大学情報システム工学研究室稲葉雅幸教授のもとでロボットと人工知能を研究し、小太郎、小次郎、腱臓、腱志郎など筋骨格ヒューマノイド・ロボットの制作や浦田レッグで成果をあげてきた中西雄飛と浦田順一(当時助教)が[2]、DARPAロボティクス・チャレンジに参加するために同大学を辞して2012年5月に設立された[3][4]。東京大学は軍事目的に転用可能な技術開発をする組織からの資金提供を受けることを禁止しているため、DARPAの資金支援を受けるには職を辞する必要があった[5]。立ち上げ時の中心メンバーは中西雄飛CEO、浦田順一CTO、鈴木稔人COO、加藤崇CFO、産業技術総合研究所の西脇光一である。
元銀行員である加藤崇が資金調達を担当し[6]、ベンチャーキャピタルや社外取締役・鎌田富久の出資により数千万を工面し、当初の開発着手に至った[7][8]。
国内の低評価と国外の高評価
編集その後も資金調達を進めたが国内では評価が認められず、国内企業や産業革新機構や経済産業省から開発費3億円の資金調達を試みたが「類似のベンチャーは全て失敗している」「面白い。だけど、どこに市場があるの?」[9]「介護・福祉のロボットなら補助の枠があるんだが、君たちのようなタイプには枠がないんだよ」「介護用のロボットに対する補助金を申請してみてはどうか」「そんなにやりたいんなら、アメリカでやればいい…」[10]とあしらわれ不調に終わる。しかし、鎌田のツテで海外企業に打診したところ、2013年7月18日にGoogleのアンディ・ルービンの前でデモを行う機会を得た。そこで高く評価されて数百億円での買収が決まり、4ヶ月後の11月18日には買収手続きが完了し、Google X傘下に入った。
Googleは傘下に入れたSCHAFTの情報を徹底的に遮断し、2013年12月21日に行われたDARPAロボティクス・チャレンジ予選でS-ONEが他を圧倒して1位となり世界中で賞賛された時にはすでにWebサイトも事実上閉鎖されており、それまで距離を置いてきた経産省が連絡を試みてもなしのつぶてであった[11]。国内の有望企業が米国に流出した事が明らかになると国内のマスメディアは支援枠が少なく後手に回った行政の対応や[12][13]、大学内の自主ルールで掣肘され産学官軍で協力した研究開発が実施できない現状を批判した[14]。
アンディ・ルービンの失脚
編集2014年10月にGoogle Xの責任者アンディ・ルービンが失脚すると[15]、Google Xは方向性を見失い[16]、短期採算見通しの立たないロボット事業は売却対象とされた[17]。2017年6月、Alphabetはソフトバンクグループとの間でSCHAFTとボストン・ダイナミクスの売却について合意したが[18]、SCHAFTの多くの職員がソフトバンクで働くことを拒否したため、ボストン・ダイナミクスの売却のみ成立し、SCHAFTの買収は成立しなかった[19]。その後もAlphabetは多くの選択肢を検討したが、代わりの買い手も現れなかったため、2018年11月にSchaft事業を終了することを決定した[20][21]。SCHAFT従業員は配置転換された[22]。
沿革
編集- 2012年05月15日 - 株式会社SCHAFTが設立された
- 2013年03月17日 - 第三者割当増資
- 2013年11月18日 - Googleによる買収が完了した
- 2013年12月21日 - S-ONEがDARPAロボティクス・チャレンジ予選を最高得点で通過した[23]
- 2016年04月09日 - 膝のない二足ロボットのデモを行った[24]
- 2016年05月31日 - トヨタ自動車がGoogleとSCHAFTとボストン・ダイナミクスの買収間近と報道された[25]
- 2017年06月09日 - Alphabetとソフトバンクグループの間でSCHAFTとボストン・ダイナミクスの買収で合意するが後に不成立となった[26]
- 2018年11月14日 - Alphabetが二足歩行ロボットの開発中止を決定したことが報道された
脚注
編集- ^ “元SCHAFTのFounder&CEO中西雄飛氏が宇宙ロボットスタートアップのGITAIに参画”. PR TIMES (2019年8月11日). 2023年8月13日閲覧。
- ^ “「シャフト」って一体何者? 『IEEEスペクトラム』が解説”. ロボスタ (2014年2月8日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “「より人間らしく」進化を続けるロボット研究 稲葉雅幸教授インタビュー1”. 東大新聞オンライン (2014年11月14日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “SCHAFT開発とGoogleの買収、ロボットビジネスの今 稲葉雅幸教授インタビュー2”. 東大新聞オンライン (2014年11月18日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “Googleが買収!ヒト型ロボットへの株式会社SCHAFTの飽くなき挑戦”. 就活エンジニア (2015年1月28日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “イノベーションの最前線 東大発ベンチャー・シャフト元CFO激白 世界一の国産ロボットはなぜグーグルに買われたのか”. 文藝春秋 (2014年12月17日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “SCHAFT社CFO加藤氏に聞く、Google買収までの舞台裏【@itmsc】”. techwave (2013年12月20日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “DARPAロボコンで勝利した日本のヴェンチャー企業が、グーグルに買収された理由”. wired (2013年12月23日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “東大「SCHAFT」はなぜ日本を去ったのか”. WEBRONZA (2015年2月26日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “ゾンビ企業を助け新産業を見殺す国”. 日経ビジネス (2016年1月11日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “(ザ・テクノロジー:上)のまれる日本のロボット技術 グーグル、次世代にらみ買収”. 朝日新聞デジタル (2014年4月30日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “(ザ・テクノロジー:2)「日本の快挙」がグーグルに”. 朝日新聞デジタル (2014年4月30日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “グーグル・東大連合の波紋 税金投じた技術、海外流出”. 日経新聞社 (2014年2月14日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “ロボット開発にも東大独自ルールの壁 「頭脳流出」問われる姿勢”. 産経新聞 (2014年5月1日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “Androidの生みの親アンディ・ルービン氏、グーグルを去る”. gizmodo (2014年10月31日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “グーグルのソフトバンクへのロボット売却は必然だ —— SCHAFT共同創業者・加藤氏に聞いた”. BUSINESS INSIDER (2017年6月9日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “Googleがロボットを売った理由、ソフトバンクが買った理由”. gizmodo (2017年6月19日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “ソフトバンク、Boston Dynamicsの買収に合意”. ソフトバンクグループ (2017年6月9日). 2018年11月16日閲覧。
- ^ “Alphabet、二足歩行ロボット開発のSCHAFTを解散へ--2013年買収の東大発ベンチャー”. cnet (2018年11月16日). 2018年11月16日閲覧。
- ^ “Google、二足歩行ロボットのSchaft事業終了へ。ソフトバンクの買収折合わず、新たな買い手もなし”. engadget (2018年11月17日). 2018年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月17日閲覧。
- ^ “Google is closing its Schaft robotics unit after failing to find a buyer”. techcrunch (2018年11月15日). 2018年11月17日閲覧。
- ^ “二足歩行ロボの開発中止 米グーグル持ち株会社”. 日本経済新聞 (2018年11月14日). 2018年11月16日閲覧。
- ^ “東大発のベンチャー企業SCHAFT、DARPA主催のロボコンで首位に”. CNET Japan (2013年12月24日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “Alphabet(旧Google)の秘蔵っ子、日本のSchaftが新しい二足ロボットをデモ”. techcrunch (2016年4月9日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “トヨタ、ロボ開発2社買収交渉 米グーグルから”. 日経新聞社 (2016年6月1日). 2017年7月6日閲覧。
- ^ “ソフトバンク、米グーグルからロボVB2社買収”. 日経新聞社 (2017年6月9日). 2017年7月6日閲覧。