S級駆逐艦 (初代)
S級駆逐艦(英語: S-class destroyer)は、イギリス海軍の駆逐艦の艦級。基本となるアドミラルティS級と、特型としてのソーニクロフトS級、ヤーロウS級がある[1][2]。
S級駆逐艦 | |
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基本情報 | |
種別 | 駆逐艦 |
運用者 |
イギリス海軍 カナダ海軍 オーストラリア海軍 大日本帝国海軍(第百一号哨戒艇) |
就役期間 | 1918年 - 1947年 |
前級 | V級・W級 |
準同型艦 |
アドミラルティS級 ヤーロウS級 ソーニクロフトS級 |
次級 | 改W級 |
要目 (アドミラルティS級) | |
常備排水量 | 1,075トン |
全長 | 84.1 m |
最大幅 | 8.1 m |
吃水 | 2.7 m |
ボイラー | 水管ボイラー×3缶 |
主機 | 蒸気タービン×2基 |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 |
出力 | 27,000馬力 |
速力 | 36.0ノット |
燃料 | 重油301トン |
乗員 | 90名 |
兵装 |
・40口径10.2cm砲×3門 ・39口径40mm高角機銃×1門 ・53.3cm連装魚雷発射管×2基 ・45cm単装魚雷発射管×2基 |
来歴
編集ドイツ帝国海軍の新しい大型駆逐艦が同時期のR級を凌駕する性能を備えているとの情報を受けて、1916年度計画より、イギリス海軍の駆逐艦は、砲熕火力を強化したV級・W級に移行した[1]。
しかしその後、この情報は過大評価されていたと判断されたことから、1917年2月、第三海軍卿は、駆逐艦の建造をR級に基づいた設計に差し戻すことを決定した。これによって、1917年度で建造されたのが本級である[2]。
設計
編集基本配置はアドミラルティ改R級のものが踏襲されているが、船首楼部の設計は大きく改正された。従来は平坦な前甲板とV字形に軽いフレアを付した前部断面となっていたのに対し、本級では船首楼甲板はタートルバック型とされ、かなり強いシアとフレアが付されたことで、艦首部乾舷は5.4メートルに達し、凌波性は大きく向上した。1918年8月、本国艦隊に属していた8隻は、荒天下でもC級軽巡洋艦「カースター」と問題なく随伴し、中には20~24ノットを発揮した艦もあり、凌波性の高さが実証された[3]。またヤーロウS級は他社艦と比して排水量とGM値が小さく、低い精悍なシルエットを備えていた。ソーニクロフトS級は1番砲をプラットフォーム上に設置したほか、扁平な1番煙突が特徴であった[1]。
機関構成もR級と同様で、ブラウン・カーチス式オール・ギヤード・タービンを基本として、パルマーズ社艦および「ティルベリィ」「ティンタージェル」「ストレナウス」ではパーソンズ式が採用された。またヤーロウS級では、直結タービンの搭載が固守された[1]。
ボイラーはヤーロウ式重油専焼水管ボイラーを基本として、ホワイト社艦ではホワイト・フォスター式が搭載された[1]。
なお計画速力は36ノットとされていたが、アドミラルティS級では排水量超過の艦が続出し、これを達成できない艦も少なくなかった。これに対し、ソーニクロフトS級およびヤーロウS級ではいずれも計画速力を達成し、「タイリアン」では39.401ノットを発揮した[1]。
装備
編集艦砲は、40口径10.2cm砲(QF 4インチ砲Mk.IV)を3門搭載した。この砲は当時のイギリス駆逐艦の標準装備であったが、アドミラルティ改R級で採用された長砲身・大発射速度のMk.Vと比べると後退と言えた。対空兵器としては39口径40mm高角機銃(QF 2ポンド・ポンポン砲)を搭載した[1]。
水雷装備としては、当時の駆逐艦の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基が搭載された。また大戦中の駆逐艦の一部では、戦訓に基づいて、冷走魚雷用の45cm魚雷発射管の装備も行われていたが、本級ではこれが当初から盛り込まれた[1]。ただしアドミラルティS級では、上記の通り排水量増大から速力低下が生じていたことから、これを補うため、後期建造艦では45cm魚雷発射管を省いた艦もあった[2]。
同型艦
編集- アドミラルティS級
-
- シムーン(HMS Simoon)
- シミター(HMS Scimitar)
- スコッツマン(HMS Scotsman)
- スカウト(HMS Scout)
- サイザ(HMS Scythe)
- シーベアー(HMS Seabear)
- シーファイヤ(HMS Seafire)
- サーチャー(HMS Searcher)
- シーウルフ(HMS Seawolf)
- シャーク(HMS Shark)
- スパローホーク(HMS Sparrowhawk)
- スプレンディド(HMS Splendid)
- スポーティブ(HMS Sportive)
- ステュルワート(HMS Stalwart)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Stalwart)[4] - ティルベリィ(HMS Tilbury)
- ティンタージェル(HMS Tintagel)
- セイバー(HMS Sabre)
- サラディン(HMS Saladin)
- サーダニックス(HMS Sardonyx)
- シーク(HMS Sikh)
- サーダー(HMS Sirdar)
- ソンム(HMS Somme)
- スピアー(HMS Spear)
- スピンドリフト(HMS Spindrift)
- サクセス(HMS Success)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Success)[5] - シャムラック(HMS Shamrock)
- シカリ(HMS Shikari)
- セナター(HMS Senator)
- シポイ(HMS Sepoy)
- セラフ(HMS Seraph)
- シレイピス(HMS Serapis)
- シリーン(HMS Serene)
- セサミ(HMS Sesame)
- スワロー(HMS Swallow)
- ソーズマン(HMS Swordsman)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Swordsman)[6] - ストレナウス(HMS Strenuous)
- ストロングホールド(HMS Stronghold)
- スターディ(HMS Sturdy)
- ステッドファスト(HMS Steadfast)
- スティーリング(HMS Sterling)
- ストーンヘンジ(HMS Stonehenge)
- ストームクラウド(HMS Stormcloud)
- トリビューン(HMS Tribune)
- トリニダッド(HMS Trinidad)
- タクティシアン(HMS Tactician)
- タラ(HMS Tara)
- タスマニア(HMS Tasmania)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Tasmania)[7] - タツー(HMS Tattoo)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Tattoo)[8] - トロウジャン(HMS Trojan)
- トルーアント(HMS Truant)
- トラスティ(HMS Trusty)
- タービュレント(HMS Turbulent)
- テネドス(HMS Tenedos)
- サネット(HMS Thanet)
- スレイシアン(HMS Thracian)
→1941年12月25日、香港の戦いにおいて鹵獲され、第百一号哨戒艇として日本海軍に編入
- ヤーロウS級
-
- トーチ(HMS Torch)
- トマホーク(HMS Tomahawk)
- トライフォン(HMS Tryphon)
- チューモルト(HMS Tumult)
- トルクォイズ(HMS Turquoise)
- タスカン(HMS Tuscan)
- タイリアン(HMS Tyrian)
- ソーニクロフトS級
- ターマリン(HMS Tourmaline)
参考文献
編集- ^ a b c d e f g h 「イギリス駆逐艦史」『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、42-46頁、ISBN 978-4905551478。
- ^ a b c Randal Gray (1984). Robert Gardiner. ed. Conway's All the World's Fighting Ships 1906-1921. Naval Institute Press. pp. 84-85. ISBN 978-0870219078
- ^ 中川務「軍艦建造史上に占める特型駆逐艦の意義 (特集・特型駆逐艦とそのライバルたち)」『世界の艦船』第664号、海人社、2006年10月、75-83頁、NAID 40007446602。
- ^ Royal Australian Navy. “HMAS Stalwart (I)” (英語). 2017年3月6日閲覧。
- ^ Royal Australian Navy. “HMAS Success (I)” (英語). 2017年3月6日閲覧。
- ^ Royal Australian Navy. “HMAS Swordsman” (英語). 2017年3月6日閲覧。
- ^ Royal Australian Navy. “HMAS Tasmania” (英語). 2017年3月6日閲覧。
- ^ Royal Australian Navy. “HMAS Tattoo” (英語). 2017年3月6日閲覧。
- ^ a b Sandy McClearn (1997-2001). “Admiralty 'S' Type destroyer” (英語). 2017年3月7日閲覧。