PROBANK
PROBANK(プロバンク、PROgressive BANKing solution:プログレッシブバンキングソリューション)は、富士通が開発した金融機関向けの勘定系システムである。「PROBANK」は富士通の登録商標である。富士通の勘定系システムアウトソーシングサービスである「FUJITSU Financial Services Solution FSPS(FUJITSU Standard Platform Serviceの略)」についてもこの項目で扱う。
概要
編集富士通製メインフレームで稼働し、24時間365日連続運転機能の標準提供 、既存チャネル(営業店システム、ATM等)やサブシステムとの容易な接続、コスト削減などが特徴。同社は開発・運用を含めたアウトソーシングとして提案している。
富士通が1999年(平成11年)12月に発足させた「PROBANK研究会」における翌年2月時点での参加行は、地銀18行(東邦銀行、青森銀行、岩手銀行、大分銀行、群馬銀行、佐賀銀行、十八銀行、筑邦銀行、名古屋銀行、北陸銀行など)であった。東邦銀行を第1号ユーザーとして、同行のシステムをベースに基本設計や運用を共通化したものを開発し、それを各行向けにアレンジするという形を目指したが、当初から開発が難航し、1号ユーザーの東邦向けの開発が大幅に遅延[1]。遅れを取り戻すために2号目以降のユーザーである全国の地銀にいたエンジニアを引き上げ、東邦に集結させて対応するという手段を取った[1]。この事態を受け、自行の開発までもが遅れたことから参加行の提携解除が相次いだ[1]。このうち北日本銀行は従前のシステムが危篤状態だったといわれ、2003年(平成15年)10月には「富士通が、十八銀行・筑邦銀行・佐賀銀行に対して“損失弁済金”を支払っていた」と報道された。
2011年(平成23年)9月の連休時にハードウェア更新を行い、第2世代のPROBANK(PROBANK-R2)が稼働。そのプライマリユーザーも東邦だった。2014年(平成26年)5月7日には、第1世代稼働行で唯一R2へ移行しなかった北都銀行がBeSTAcloudへ移行したため、第1世代のPROBANK稼働行はなくなった。
R2稼働行のうち東邦銀行は2024年1月にTSUBASAアライアンスの基幹系共同システムに移行した。清水銀行と西京銀行は、2024年2月に清水がNTTデータのSTELLA CUBE、西京も同年度中に日本ユニシス(現:BIPROGY)のBankVisionへ移行すると発表した[2]。2024年5月7日、清水銀行・西京銀行が共に新システムに移行し、富士通が社運をかけて開発に臨んだPROBANKの利用行はゼロになった[2][3]。
採用銀行
編集- 第1世代PROBANK稼働行
- 第2世代PROBANK(PROBANK-R2)稼働行
- 第1次PROBANK採用撤回行
FSPS
編集2017年(平成29年)1月、富士通は勘定系システムをアウトソーシングするサービスの「FUJITSU Financial Services Solution FSPS」を稼働させ、同月には滋賀銀行の独自勘定系システム、10月には東邦のPROBANKを移行した[16]。
2024年(令和6年)1月にFSPS利用行の滋賀は日立製作所のオープン勘定系システム「OpenStage」[17]、東邦はTSUBASAアライアンスの共同化システムに移行することになっていた。その後滋賀銀行はOpenStageへの移行が難航し、複数回にわたり予定を延期し[18]、2024年12月にはOpenStageへの移行を断念した[19]。
脚注
編集- ^ a b c “富士通が地銀勘定系システムから実質撤退、共同利用システム加盟行がゼロに”. ダイヤモンドオンライン. (2021年10月8日) 2021年12月13日閲覧。
- ^ a b “富士通の共同システム利用行はゼロに 清水銀行が離脱”. 日本経済新聞. (2021年9月28日) 2021年12月13日閲覧。
- ^ a b c “富士通「PROBANK」の顧客がゼロに、清水銀行と西京銀行の新システム移行で”. 日経XTech. (2024年5月7日)
- ^ 東邦銀行の新勘定系システムが稼働 株式会社東邦銀行 富士通株式会社 平成15年9月16日
- ^ 清水銀行と富士通がバンキングシステムのアウトソーシングで基本合意 株式会社清水銀行 富士通株式会社 平成12年2月29日
- ^ “金融機関向け基幹系サービス「BeSTAcloud®」 フィデアグループ(荘内銀行・北都銀行)への本格提供を開始”. 株式会社NTTデータ. (2014年5月7日) 2014年10月27日閲覧。
- ^ 東邦銀行様が次期勘定系システムに富士通「PROBANK」を継続採用 富士通株式会社 2010年3月4日
- ^ 清水銀行様が次期勘定系システムに富士通「PROBANK」を継続採用 富士通株式会社 2010年11月10日
- ^ 『清水銀行がNTTデータ基幹系共同センター「STELLA CUBE®」への参加を決定』(プレスリリース)株式会社NTTデータ、2021年9月27日 。2021年9月29日閲覧。
- ^ 西京銀行様が次期勘定系システムに富士通「PROBANK」を継続採用 富士通株式会社 2011年5月11日
- ^ 『西京銀行がオープン勘定系システム『BankVision』の採用を決定』(プレスリリース)日本ユニシス(現:BIPROGY)、2021年9月24日 。2021年9月29日閲覧。
- ^ “北日本銀行が富士通の勘定系パッケージ導入を白紙撤回”. 日経コンピュータ. (2003年4月2日)
- ^ “北日本銀行が日立の地銀向け共同システムの利用を開始”. 日経コンピュータ. (2008年1月7日)
- ^ “島根銀行の次世代システム、既存ベンダーへのアウトソーシングで一件落着”. 日経コンピュータ. (2004年8月2日)
- ^ “経営の情識 第31回:繰り返されるシステム共同化の失敗”. ITpro (日経コンピュータ). (2006年11月14日)
- ^ 『東邦銀行様が、勘定系システムアウトソーシングサービス「FSPS」を採用』(プレスリリース)富士通株式会社、2015年7月17日 。2016年2月6日閲覧。
- ^ “滋賀銀行が日立のオープン勘定系を採用、富士通製からリプレース”. 日経クロステック 2021年9月29日閲覧。
- ^ “277億円超を支払った滋賀銀行の次期勘定系システム、継続か一度立ち止まるか”. 日経クロステック. (2024年7月30日) 2024年9月20日閲覧。
- ^ a b “滋賀銀行、日立製作所からの基幹システム導入を断念”. 日本経済新聞. (2024年12月20日) 2024年12月21日閲覧。
- ^ コストを抑えた二重化システムで、万一にも備えた安定環境を構築富士通株式会社 2017年2月1日
- ^ 『基幹系システム共同化に関する基本合意について』(プレスリリース)東邦銀行、2019年9月18日 。2021年9月29日閲覧。
外部リンク
編集- PROBANKソリューション - 富士通バンキングソリューションズ