NBI-1117568
NBI-1117568は、ネクセラファーマから導出(ライセンスアウト)され、アメリカの製薬会社ニューロクライン・バイオサイエンシズにより開発されている、統合失調症の治験薬(抗精神病薬)のこと[1]。投与経路は経口投与[2]。旧開発コード:HTL-0016878[3]。
概要
編集ムスカリンM4受容体作動薬であり[2]、間接的にドーパミンを調整することにより、統合失調症を改善させる。2016年4月にアイルランドの製薬会社アラガンに導出され、2017年9月に「アルツハイマー病等に関連した神経行動学的症状」の適応で第Ⅰ相臨床試験まで進んだが[4]、2020年5月にアラガンがアッヴィに買収され、アッヴィのパイプラインの事業上の判断により、2021年1月ネクセラファーマにライセンスが返還された[5]。2021年11月アメリカの製薬会社ニューロクライン社に新たに導出され[1]、統合失調症の治療薬として研究開発が進められ、2024年9月現在、第Ⅱ相臨床試験まで終了している[6][7]。
歴史
編集- 2016年
- 2017年
- 2021年
- 1月 - アラガンからNBI-1117568(旧開発コード:HTL-0016878)のライセンスがネクセラファーマに返還される[5]。
- 11月 - ニューロクライン社に導出、ニューロクライン社がNBI-1117568の研究開発を行うこととなった[1]。
- 12月 - アメリカのハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法の待機期間が満了し、ニューロクライン社のNBI-1117568に対するライセンスの効力が発生[8]。
- 2022年
- 2024年
臨床試験
編集第Ⅱ相臨床試験
編集第Ⅱ相臨床試験は統合失調症の成人患者200人に対してアメリカの15施設で実施された[12]。主要評価項目は、投与6週間後の陽性・陰性症状評価尺度 (PANSS)合計スコアの変化より評価され、20mg1日1回群がプラセボ投与群と比較し7.5ポイントの改善(ベースラインから18.2ポイントの改善、p値=0.011、効果量0.61)とし、 統計学的に有意な改善を示した[13]。40mg1日1回群、60mg1日1回群、30mg1日2回群ではいずれもプラセボ群と比較して統計的有意差は見られなかった(P値40mg群:0.282、60mg群:0.189、30mg1日2回群:0.090)[13]。
第Ⅱ相臨床試験の株式市場評価
編集NBI-1117568はPANSSの改善量が7.5であり、同時期に臨床試験を行っていたムスカリン受容体作動薬であるKarXT(カルナ・セラピューティクス)の8.4、エムラクリジン(セレベル・セラピューティクス)の12.7を下回ったこと、また用量依存性が認められなかったことから[14]、株式市場では失望が広がり第Ⅱ相臨床試験の結果発表翌日、ニューロクライン社の株価は19%下落した[15]。
関連項目
編集- ネクセラファーマ
- ニューロクライン・バイオサイエンシズ
- キサノメリン-トロスピウム - 機序を同じくする統合失調症の治療薬
- エムラクリジン - 機序を同じくする統合失調症の治療薬
脚注
編集- ^ a b c “ニューロクライン社との統合失調症およびその他の精神神経疾患を対象とした新規ムスカリン受容体作動薬に関するライセンス契約締結のお知らせ”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES. PR TIMES (2021年11月22日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b c “ネクセラファーマ株価6.5%高 薬候補で毒性試験成功 - 日本経済新聞”. 日本経済新聞 電子版. 日本経済新聞社 (2024年4月17日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ “当社提携先のニューロクライン社が、統合失調症を対象にしたNBI-1117568の第II相臨床試験の開始を発表[そーせいグループ] | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞”. 日経コンパス. 日本経済新聞社 (2022年10月28日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b “アルツハイマー病等の主要症状の治療薬として開発中の新薬候補、 選択的ムスカリンM4受容体作動薬の第I相臨床試験で最初の被験者への投与を実施”. ネクセラファーマ(旧そーせいグループ株式会社) (2017年9月1日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b c “ムスカリン作動薬プログラムのグローバルな研究開発権・販売権が返還”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES. PR Times (2021年1月5日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b 日経バイオテクONLINE (2024年9月2日). “ネクセラファーマ、統合失調症治療薬候補 NBI-1117568の第II相臨床試験の良好な結果によりニューロクライン社より35百万米ドルのマイルストンを受領”. 日経バイオテクONLINE. 日本経済新聞社. 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b “ネクセラ---大幅反落、ニューロクラインの株価下落に追随売り | 個別株 - 株探ニュース”. kabutan.jp. MINKABU THE INFONOID, Inc. (2024年8月29日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ “そーせいグループ、ニューロクライン社とのライセンス契約に関する米国ハート・スコット・ロディノ反トラスト改正法の待機期間満了のお知らせ”. 日経バイオテクONLINE. 日本経済新聞社 (2021年12月24日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ “M4作動薬がP2入り、導出先から報酬40億円 そーせい”. 日刊薬業 - 医薬品産業の総合情報サイト. 株式会社じほう (2022年8月5日). 2024年9月18日閲覧。
- ^ “当社提携先のニューロクライン社が、統合失調症を対象にしたNBI-1117568の第Ⅱ相臨床試験の開始を発表”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES. PR TIMES (2022年10月28日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ “Nxera wins $35m after Phase II schizophrenia trial success” (英語). Pharmaceutical Technology. Pharmaceutical Technology (2024年9月2日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ “Neurocrine Biosciences Initiates Phase 2 Clinical Study Evaluating NBI-1117568 in Adults with Schizophrenia”. ニューロクライン (2022年10月27日). 2024年9月17日閲覧。
- ^ a b “ネクセラファーマ[4565:ニューロクライン社との提携プログラムである統合失調症治療薬候補NBI-1117568の第2相臨床試験で良好な結果 2024年8月28日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞]”. 日本経済新聞 電子版. 日本経済新聞社. 2024年9月17日閲覧。
- ^ “Nxera Pharma Official IR Blog 「ニューロクライン社から35百万米ドルのマイルストン受領」”. soseiheptares.blogspot.com. ネクセラファーマ (2024年9月2日). 2024年9月19日閲覧。
- ^ “Neurocrine Stock Down 19% on Mixed Schizophrenia Study Results” (英語). Zacks Investment Research. Zacks Investment (2024年8月29日). 2024年9月17日閲覧。