HP-1501983年ヒューレット・パッカードより発売されたパーソナルコンピュータである。Intel 8088を搭載し、タッチスクリーンを搭載した商用のコンピュータとしては初期の製品であった。IBM PCとの互換性はないが、MS-DOS 2.01、2.11、3.20のカスタマイズ品が利用できた。すべてのHP3000用ソフトウェアが利用できるとされた[1]

HP-150
HP-150のタッチスクリーン
開発元 ヒューレット・パッカード
発売日 1983年11月 (1983-11)
標準価格 US$2,795(2023年時点の$8,550と同等)
OS MS-DOS
CPU Intel 8088 8MHz
メモリ RAM 256KB, ROM 160KB
ストレージ フロッピーディスク 270KB x 2
ディスプレイ 9インチCRT
グラフィック 80字×27行(テキスト), 720×378ピクセル(グラフィック)

ハードウェア

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CPUのIntel 8088は当時のIBM PCで使われていた4.77MHzを上回る8MHzで動作した。アドオンカードを使うとメモリを256KBから640KBに増設することができた。しかし、メインボードのスペースの都合からIntel 8087コプロセッサを取り付けるスロットは搭載されなかった。HP-150の別売のハードディスク付きモデルは "Touchscreen MAX" と呼ばれた。

ディスプレイはタッチした不透過物体の位置を検出するための赤外線送信機・検出機が周囲に付いたソニー製9インチCRTであった。最初のHP-150では、これらの送信機・検出器はモニターのベゼル内側に付いた小さな穴に設置されていた。そのため、下側の穴には埃がたまりやすく、それを取り除かないとタッチが検出されないことがあった。

Macintoshと同様に、コンピュータ本体はCRTと一体型であるものの、3.5インチドライブは外付けであった。HP-150 45611Aは電話帳大あるいはハードディスク装置大の9121D[2]デュアル3.5インチフロッピードライブで、HP-IBで接続できた。45600A[3]はデュアルZ80 CP/Mマシンで9121ドライブを使用していた。

HP-150II

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1984年、HP-150は45849A[4]に置き換えられた。依然「タッチスクリーン」と呼ばれていたものの、タッチスクリーンは標準ではなく別売で提供された。別売のタッチスクリーンのベゼルは送信機と検出器を赤外線透過プラスチックの裏側に配置しており、最初のモデルのように穴の内部を掃除する必要はなくなった。

HP-150IIはHP-150と類似した外観だが、12インチディスプレイを搭載したことで本体のサイズは大きくなった。内蔵プリンターは省略された。HP-150IIでは4つの拡張スロットが利用でき、別売の8087コプロセッサボードを取り付けることができた。HP-150とHP-150IIの間ではグラフィック機能にいくつか些細な互換性の問題が存在した。

1985年、HPはVectra英語版を発表した。これについてInfoWorld誌は「完全なIBM PC互換機を望む顧客に応じた。」と評した。HP-150はHP 3000ミニコンピュータのワークステーションとして再定義された[5]

仕様

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HP モデル コマンドセット FDD数 FDD種別 各FDD容量 HDD数 HDD容量 注釈
82901M Amigo 2 5.25インチ 両面 270kb 0 無し 拡張用
82902M Amigo 1 5.25インチ 両面 270kb 0 無し 拡張用
9121D Amigo 2 3.5インチ 片面 270kb 0 無し -
9121S Amigo 1 3.5インチ 片面 270kb 0 無し 拡張用
9122D SS/80 2 3.5インチ 両面 710kb 0 無し -
9122S SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 0 無し 拡張用
9123D SS/80 2 3.5インチ 両面 710kb 0 無し HP-150 IIのみ
9125S Amigo 1 5.25インチ 両面 360kb 0 無し 拡張用、起動不可
9127S Amigo 1 5.25インチ 両面 360kb 0 無し 拡張用、起動不可
9133A Amigo 1 3.5インチ 片面 270kb 1 5Mb -
9133B Amigo 1 3.5インチ 片面 270kb 1 10Mb -
9133D SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 15Mb -
9133H SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 20Mb 要DOS 3.20
9133L SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 40Mb 要DOS 3.20
9133V Amigo 1 3.5インチ 片面 270kb 1 5Mb -
9133XV Amigo 1 3.5インチ 片面 270kb 1 15Mb -
9134A Amigo 0 無し 無し 無し 1 5Mb -
9134B Amigo 0 無し 無し 無し 1 10Mb -
9134H SS/80 0 無し 無し 無し 1 20Mb 要DOS 3.20
9134L SS/80 0 無し 無し 無し 1 40Mb 要DOS 3.20
9134V Amigo 0 無し 無し 無し 1 5Mb -
9134XV Amigo 0 無し 無し 無し 1 15Mb -
9153A SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 10Mb -
9153B SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 20Mb 要DOS 3.20
9153C SS/80 1 3.5インチ 両面 710kb 1 10/20/40Mb 要DOS 3.20
9154A SS/80 0 無し 無し 無し 1 10Mb -
9154B SS/80 0 無し 無し 無し 1 20Mb 要DOS 3.20
  • ディスプレイ解像度
    • テキスト:80桁×27行(720×378ピクセル
      • 文字サイズ:7×10ピクセル
      • 文字セルサイズ:9×14ピクセル
      • HP2623グラフィックターミナルと同等のHP独自端末エミュレーション
    • ビットマップ:512×390ピクセル
    • テキスト画面とグラフィック画面は別々のプレーンにある
  • モニターセンサー分解能:40×24(縦×横)
  • オプションの内蔵サーマルプリンター 2647A(ロール紙)
  • 通信ポート
    • RS-232 × 2(うち1つはRS-422をサポート)
    • HP-IB (IEEE 488)
    • HP-HIL(HP-150IIでは標準でサポート、HP-150では別売のアドオンカードで対応)

HP-150のタッチスクリーン分解能はやや粗く、2文字幅の解像度しかない。主に大雑把なカーソル位置の取得やファンクションキーの制御に使用され、図形の描画には使用されなかった。

関連項目

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脚注

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  1. ^ 「ASCII 1983年12月号」第7巻第12号、株式会社アスキー出版、1983年12月1日。 
  2. ^ 9121D
  3. ^ HP-120 45600A
  4. ^ HP-150II 45849A
  5. ^ Petrosky, Mark (1985年9月30日). “HP's Vectra Called PC AT 'Hybrid'”. InfoWorld: pp. 5. https://books.google.com/books?id=iS8EAAAAMBAJ&lpg=PA18&pg=PA5#v=onepage&f=false 20 February 2015閲覧。 

参考文献

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外部リンク

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