GJ 9827 は、地球から見てうお座の方向に約97光年離れた位置にある10等級恒星である。太陽の6割程度の質量半径を持つK型主系列星であり[2]スペクトル分類上では K6V 型に属する[1]光度は太陽の約12%であり[3]不確実性が大きいが、形成されてから約60億年が経過していると考えられている[4]2024年初頭時点で周囲を3個の太陽系外惑星公転していることが知られている[3]

GJ 9827
GJ 9827 とその周囲を公転している惑星の想像図。左下に主星 GJ 9827、右上に大きく GJ 9827 d が描かれている。 提供: NASA, ESA, Leah Hustak and Ralf Crawford (STScI)
GJ 9827 とその周囲を公転している惑星の想像図。左下に主星 GJ 9827、右上に大きく GJ 9827 d が描かれている。
提供: NASA, ESA, Leah Hustak and Ralf Crawford (STScI)
星座 うお座
見かけの等級 (mv) 10.10[1]
分類 K型主系列星[1]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  23h 27m 04.8376907739s[1]
赤緯 (Dec, δ) −01° 17′ 10.582653030″[1]
赤方偏移 0.000107[1]
視線速度 (Rv) 32.1 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: 375.977 ミリ秒/[1]
赤緯: 215.870 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 33.7247 ± 0.0169ミリ秒[1]
(誤差0.1%)
距離 96.71 ± 0.05 光年[注 1]
(29.65 ± 0.01 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 7.7[注 2]
軌道要素と性質
惑星の数 3
物理的性質
半径 0.602+0.005
−0.004
R[2]
質量 0.606+0.015
−0.014
M[2]
平均密度 3.76+0.75
−0.57
g/cm3[3]
表面重力 (logg) 4.682 ± 0.021[4]
自転速度 1.3 ± 1.5 km/s[3]
自転周期 16.9+2.14
−1.5
[5]
スペクトル分類 K6V[1]
光度 0.119+0.035
−0.029
L[3]
有効温度 (Teff) 4,305 ± 29 K[2]
金属量[Fe/H] -0.26 ± 0.09[2]
年齢 60.5+25.0
−28.9
億年[4]
他のカタログでの名称
BD-02 5958[1]
EPIC 246389858[1]
HIP 115752[1]
K2-135[1]
LTT 9542[1]
NLTT 56901[1]
TIC 301289516[1]
TYC 5244-1092-1[1]
2MASS J23270480-0117108[1]
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大きさの比較
太陽 GJ 9827
太陽 Exoplanet

惑星系

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2017年アメリカ航空宇宙局 (NASA) のケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッションである「K2」でのトランジット法での観測で、GJ 9827 の周囲を公転している3個の太陽系外惑星が発見された[3]。K2による観測で太陽系外惑星が発見されたことから、GJ 9827 には K2-135 という名称が付与されている[1]。いずれも地球の約1.2倍から約2倍の大きさを持つスーパーアース規模の惑星であるとされている[3]公転周期は10日を下回っており、最も GJ 9827 から離れている GJ 9827 d でも大気の影響などを考慮しない場合の表面の平衡温度英語版は 681 K(408 )に達していると推定されている[2]

3つの惑星は公転周期の比が1:3:5となる軌道共鳴の関係に非常に近いことが知られており、これは最も主星に近い GJ 9827 b が軌道を5周する間に GJ 9827 c はほぼ3周、GJ 9827 d はほぼ1周することを意味している[3]。しかし実際には完璧にこの比になっているわけではなく、特に GJ 9827 c と GJ 9827 d は公転周期の比が3:5であると見做すには GJ 9827 d の公転周期が2%長いことが分かっており、このように同じ惑星系内の複数の惑星における公転周期の比が完璧な整数比から僅かにずれているような関係はケプラー宇宙望遠鏡によって観測された複数惑星系ではよくみられることが報告されている[3][6]

2023年にはハッブル宇宙望遠鏡による大気分光観測によって、最も外側を公転している GJ 9827 dの大気中から水蒸気が検出されたという研究結果が公表された[7]。これにより、GJ 9827 d は大気中から水蒸気が検出された最も小さな既知の太陽系外惑星となった。この観測結果から、大量のを含んでいる海洋惑星のような惑星である可能性が示されているが、水素などを多く含んだ外層に包まれたミニ・ネプチューンのような惑星である可能性も残されている。仮に大部分が水で出来た海洋惑星である場合、表面の温度は金星と同等であるため、大気が主に水蒸気で構成されていれば非常に高温多湿な環境になっていると考えられる[8][9]

GJ 9827の惑星[2]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 5.14±0.47 M 0.01880±0.00016 1.2089819±0.0000071 <0.063 86.07+0.41
−0.34
°
1.577+0.027
−0.031
 R
c <1.3 M 0.03925±0.00033 3.648096±0.000063 <0.094 88.19+0.21
−0.18
°
1.241+0.024
−0.026
 R
d 3.53+0.87
−0.88
 M
0.05590±0.00046 6.201470±0.000063 <0.13 87.443±0.045° 2.022+0.046
−0.043
 R

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Result for BD-02 5958”. SIMBAD Astronomical Database. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2024年1月31日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Bonomo, A. S.; Dumusque, X.; Massa, A et al. (2023). “Cold Jupiters and improved masses in 38 Kepler and K2 small planet systems from 3661 HARPS-N radial velocities. No excess of cold Jupiters in small planet systems”. Astronomy and Astrophysics 677: 18. arXiv:2304.05773. Bibcode2023A&A...677A..33B. doi:10.1051/0004-6361/202346211. A33. 
  3. ^ a b c d e f g h i Rodriguez, Joseph E.; Vanderburg, Andrew; Eastman, Jason D. et al. (2018). “A System of Three Super Earths Transiting the Late K-Dwarf GJ 9827 at 30 pc”. The Astronomical Journal 155 (2): 72. arXiv:1709.01957. Bibcode2018AJ....155...72R. doi:10.3847/1538-3881/aaa292. 
  4. ^ a b c Kosiarek, Molly R.; Berardo, David A.; Crossfield, Ian J. M. et al. (2021). “Physical Parameters of the Multi-Planet Systems HD 106315 and GJ 9827”. The Astronomical Journal 161 (1): 47. arXiv:2009.03398. Bibcode2021AJ....161...47K. doi:10.3847/1538-3881/abca39. 
  5. ^ Niraula, Prajwal; Redfield, Seth; Dai, Fei et al. (2017). “Three Super-Earths Transiting the Nearby Star GJ 9827”. The Astronomical Journal 154 (6): 266. arXiv:1709.01527. Bibcode2017AJ....154..266N. doi:10.3847/1538-3881/aa957c. 
  6. ^ Fabrycky, Daniel C.; Lissauer, Jack J.; Ragozzine, Darin et al. (2014). “Architecture of Kepler's Multi-transiting Systems. II. New Investigations with Twice as Many Candidates”. The Astrophysical Journal 790 (2): 12. arXiv:1202.6328. Bibcode2014ApJ...790..146F. doi:10.1088/0004-637X/790/2/146. 146. 
  7. ^ Roy, Pierre-Alexis; Benneke, Björn; Piaulet, Caroline et al. (2023). “Water Absorption in the Transmission Spectrum of the Water World Candidate GJ 9827 d”. The Astrophysical Journal Letters 954 (2): 11. arXiv:2309.10845. Bibcode2023ApJ...954L..52R. doi:10.3847/2041-8213/acebf0. L52. 
  8. ^ "Hubble finds water vapour in small exoplanet's atmosphere". Max Planck Institute (Press release). 25 January 2024. 2024年1月31日閲覧
  9. ^ Jamie Carter(河原稔 訳) (2024年1月31日). “わずか97光年先に「水の惑星」発見、地球型惑星探査に画期的な一歩”. Forbes JAPAN. 2024年1月31日閲覧。

外部リンク

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