欧州連合の経済(おうしゅうれんごうのけいざい)は、名目では米国に次いで世界第2位、購買力平価(PPP)では中国・米国に次いで世界第3位である。欧州連合のGDPは、2020年では約17兆1千億ドル(名目値)と推定され[1]、世界経済の約1/6を占めている[2]

人口当たりGDP(PPP換算),2019年
平均資産(Credit Suisseによる)
ジニ指数(Credit Suisseによる)
成人一人当たり資産中央値,2018年

通貨

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欧州連合の公式の通貨はユーロであり、欧州連合におけるすべての文書および政策で用いられている。安定・成長協定では安定性と経済的収斂性について財政面における基準を定めている。ユーロはまた欧州連合域内において最も広範に使用されており、ユーロ圏とされる欧州連合加盟17か国で使われている。免除規定が適用されるデンマークを除くこのほかの加盟国では、導入に必要な条件を満たせばユーロへの通貨切替を実施しなければならない。ただしスウェーデンは例外が認められており、ユーロ導入の準備として適用される欧州為替相場メカニズム (ERM-II) に参加する時期や参加の是非そのものを選択することができる。ほかの諸国は欧州連合加盟条約においてユーロ導入が義務付けられている。

経済的多様性

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以下の表では欧州連合および加盟27か国の GDP (PPP) と人口1人あたりの GDP (PPP) を、後者の多い順に示している。この表から加盟国間での相対的な生活水準がおおよそ理解することができ、ルクセンブルクアイルランドの水準が高く、ルーマニアブルガリアは低いことが見て取れる。ルクセンブルク市にあるユーロスタットは統計を担当する欧州委員会の部局であり、欧州連合全体のほか各加盟国の GDP を毎年発表することで富の指標を示し、欧州連合の財政・経済政策の立案・実施に寄与している。以下の表はユーロスタットによる2007年4月21日時点での統計で、金額の単位はユーロ、2007年の数値は見通しである。

加盟国 2006年 2007年
GDP (PPP)
(100万ユーロ)
人口1人あたり
GDP (PPP)
(ユーロ)
対EU27か国
人口1人あたり
平均GDP (PPP)
GDP (PPP)
(100万ユーロ)
人口1人あたり
GDP (PPP)
(ユーロ)
対EU27か国
人口1人あたり
平均GDP (PPP)
  欧州連合 11,557,853 23,500 100% 12,172,536 24,600 100%
  ルクセンブルク 30,183 65,300 278% 31,376 69,900 284%
  アイルランド 143,475 33,700 143% 157,070 35,700 147%
  オランダ 500,762 31,000 132% 530,564 32,800 133%
  オーストリア 250,247 30,200 129% 264,472 31,900 130%
  デンマーク 161,613 29,700 126% 171,298 31,200 127%
  ベルギー 302,570 28,700 122% 319,867 30,200 123%
  スウェーデン 256,327 28,200 120% 274,499 30,000 122%
  イギリス 1,688,660 27,900 119% 1,847,105 29,400 120%
  フィンランド 143,818 27,300 116% 153,595 28,900 117%
  ドイツ 2,184,612 26,700 114% 2,340,372 28,200 115%
  フランス 1,673,128 26,500 113% 1,744,444 27,800 113%
  イタリア 1,432,261 24,300 103% 1,500,475 25,500 104%
  スペイン 1,053,600 24,000 102% 1,121,961 25,400 103%
  キプロス 16,849 21,900 93% 17,773 22,900 93%
  ギリシャ 230,659 20,800 89% 246,671 22,100 90%
  スロベニア 40,867 20,400 87% 44,040 21,800 89%
  チェコ 191,080 18,600 79% 207,174 20,100 82%
  マルタ 7,289 17,700 75% 7,824 18,600 76%
  ポルトガル 185,083 17,500 74% 190,882 18,200 74%
  エストニア 21,170 15,900 68% 23,919 17,900 73%
  ハンガリー 154,358 15,300 65% 166,031 16,200 66%
  スロバキア 79,339 14,700 63% 88,602 16,400 67%
  リトアニア 46,015 13,600 58% 50,241 15,000 61%
  ラトビア 29,971 13,100 56% 33,630 14,900 61%
  ポーランド 473,774 12,400 53% 525,277 13,600 55%
  ルーマニア 190,657 8,800 37% 208,220 9,700 39%
  ブルガリア 66,799 8,700 37% 71,714 9,500 39%
加盟候補国 (上記 EU の合計には含まれていない)
  クロアチア 52,082 11,700 50% 57,948 12,600 51%
  トルコ 503,856 6,900 29% 541,418 7,300 30%
  北マケドニア 13,080 6,400 27% 13,897 6,900 28%

加盟国別の経済

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経済動向は国ごとに異なっており、安定・成長協定は欧州連合の財政政策を司る内容となっている。同協定はすべての加盟国に対して適用され、とくにユーロ圏諸国に対しては、財政赤字を GDP の3%以下に抑制すること、公債発行残高が GDP の60%以下であることといった義務が課されている。しかしながら比較的規模の大きい国の多くが対 GDP で3%超の赤字を出して続けており、ユーロ圏全体としても公債発行残高が対 GDP で60%を超えている。

ギリシャとポルトガルを除くと、人口1人あたりの国民総所得の平均を下回っているのは2004年に加盟した諸国であり、逆に平均を上回っているのはいずれも2004年以前に加盟した国である。

以下の表では加盟国ごとの数値を経済規模の大きい順に並べたものである。背景色は欧州連合全体の平均値を上回っている()か、下回っている()かを示すものである。また太字はそれぞれの最小値と最大値を示している。なおこの表は2007年4月に国際通貨基金が算定した数値を用いている。

加盟国
(GDP 順)
GDP
(10億USドル)
(2007)
GDP 比率
(対EU全体 %)
(2007)
年間 GDP
増減率
(%)
人口1人あたり
GDP (PPP)
(USドル)
(2007)
対 GDP
公債発行残高 (%)
(2006)
対 GDP
年間赤字額 (%)
(2006)
年間
インフレ率 (%)
(2007)
失業率
(%)
(2006)
  欧州連合 [1] 15,183.4 100.0% 2.8 29,342 63.8 -2.6 2.2 7.5
  ドイツ 3,080.6 19.4% 1.8 32,179 66.0 -3.7 2.0 7.8
  イギリス 2,660.7 16.8% 2.9 36,568 41.6 -3.2 2.3 5.3
  フランス 2,401.4 15.2% 2.0 31,873 65.6 -3.7 1.7 8.3
  イタリア 1,993.7 12.6% 1.8 31,694 105.8 -3.0 2.1 6.8
  スペイン 1,359.1 8.6% 3.8 28,445 48.9 -0.3 2.6 7.8
  オランダ 720.9 4.5% 2.9 36,240 55.7 -2.5 1.8 3.2
  スウェーデン 423.6 2.7% 3.3 35,729 51.2 -1.4 1.8 5.5
  ベルギー 423.5 2.7% 2.2 35,693 95.6 -0.1 1.9 7.8
  ポーランド 364.8 2.3% 5.8 15,894 43.6 -3.7 2.2 10.5
  オーストリア 348.7 2.2% 2.8 37,536 65.2 -1.3 1.6 4.5
  ギリシャ 341.8 2.2% 3.8 27,360 106.5 -2.8 3.2 8.3
  デンマーク 302.6 1.9% 2.5 38,072 42.7 -2.8 2.0 4.7
  アイルランド 250.2 1.6% 5.0 46,786 29.9 -1.3 2.4 4.5
  フィンランド 225.4 1.4% 3.1 36,324 43.6 -2.1 1.5 7.5
  ポルトガル 211.7 1.3% 1.8 23,464 61.9 -2.9 2.5 7.4
  チェコ 160.4 1.0% 4.8 24,679 37.4 -3.0 2.9 6.6
  ルーマニア 157.6 1.0% 6.5 10,661 21.2 -4.0 4.5 4.5
  ハンガリー 125.0 1.0% 2.8 20,700 57.6 -4.5 6.4 7.9
  スロバキア 69.3 0.8% 8.2 19,172 36.9 -2.9 2.4 10.8
  ルクセンブルク 45.8 0.3% 4.6 84,507 7.5 -1.1 2.1 4.6
  スロベニア 41.1 0.3% 4.5 25,266 29.4 -1.9 2.7 6.4
  ブルガリア 35.8 0.2% 6.0 10,677 24.8 -4.0 5.3 7.8
  リトアニア 35.4 0.2% 7.0 16,863 19.7 -2.5 3.5 6.1
  ラトビア 24.1 0.2% 10.5 17,364 14.4 -0.8 7.3 6.3
  キプロス 19.9 0.1% 3.9 31,053 62.3 -3.5 2.1 4.8
  エストニア 19.6 0.2% 9.9 20,114 4.9 -1.8 4.8 4.2
  マルタ 6.2 0.1% 2.3 21,061 75.0 -5.2 2.4 6.8

経済成長

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リーマンショック以前

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欧州連合の世界総生産額 (GWP) に占める割合は5分の1で安定している。比較的新しい加盟国では力強い経済成長を示しているが、欧州連合全体では緩やかなものとなっており、フランスやとくにドイツイタリアポルトガルでは成長が鈍っている。またベルギーオランダも比較的低い成長率を示している。バルトの虎とも言われるエストニアラトビアでは欧州連合や世界でも高い GDP 成長率を示している[3]

 
加盟国と加盟候補国の人口と人口1人あたりの GDP の分布
 
欧州連合(European Union)およびユーロ圏(Euro area)における経済成長率(実質経済成長率)。2013年以降はIMFの予想値。
EU15か国 GDP成長率 2004年以降の加盟国 GDP成長率
加盟国 GDP成長率 (%)
2004 2005 2006 2007
  オーストリア 2.4 2.0 2.8 2.9
  ベルギー 2.4 1.5 2.7 2.3
  デンマーク 1.9 3.2 2.7 2.3
  フィンランド 3.5 2.9 3.5 3.1
  フランス 2.0 1.2 2.4 2.4
  ドイツ 1.2 0.9 2.0 2.5
  ギリシャ 4.7 3.7 3.7 3.7
  アイルランド 4.3 5.5 5.8 5.0
  イタリア 1.1 0.0 1.5 1.9
  ルクセンブルク 4.2 4.0 4.0 5.0
  オランダ 2.0 1.5 2.9 2.8
  ポルトガル 1.2 0.4 1.2 1.8
  スペイン 3.1 3.4 3.4 3.7
  スウェーデン 3.7 2.7 4.0 3.8
  イギリス 3.3 1.9 2.7 2.8
加盟国 GDP成長率 (%)
2004 2005 2006 2007
  ブルガリア 5.7 5.5 5.6 6.1
  キプロス 3.9 3.7 3.5 3.8
  チェコ 4.2 6.1 6.0 4.9
  エストニア 7.8 9.8 9.5 8.7
  ハンガリー 5.2 4.1 4.5 2.4
  ラトビア 8.6 10.2 11.0 9.6
  リトアニア 7.0 7.5 6.8 7.3
  マルタ -1.5 2.5 1.6 3.0
  ポーランド 5.3 3.4 6.1 6.5
  ルーマニア 4.1 8.5 7.7 6.7
  スロバキア 5.4 6.1 6.5 8.5
  スロベニア 4.2 4.0 5.2 4.3
  欧州連合 2.4 1.8 2.8 2.4
  ユーロ圏 2.1 1.3 2.4 2.0
出典 IMF[2], [3] / Eurostat[4]

東ヨーロッパの10か国および北ヨーロッパ西ヨーロッパとは対照的に高い経済成長率を誇っている。特にバルト三国の成長率は目を見張るものがあり、ラトビアは11%の伸びを示しており、過去25年間での平均成長率が9%で世界の経済成長を牽引している中国に劣らない数値となっている。この急成長の背景には政府による安定的な通貨政策や輸出指向の通商政策、低いフラット税率や相対的に安い労働力といったものが挙げられる。

欧州連合の成長を示す現在の地図には大きな地域格差があり、大国は低成長に悩み、新しい加盟国は持続的でしっかりとした経済成長を示している。

欧州連合27か国の GDP は増加傾向にあるが、 GWP に占める割合は減少傾向であり、これは中国やインドブラジルといった国の台頭が原因にある。中長期的には、欧州連合の GDP 成長はヨーロッパ経済の中心であるフランスやドイツ、イタリア次第であり、また東ヨーロッパの新しい加盟国においても好景気が継続し安定して成長することが期待されている。

リーマンショック以後

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2008年のリーマン・ショック以降、欧州各国はマイナス成長に陥った。その落ち込みからの回復の速度は 国ごとに異なる。アイスランド、ノルウェー、スイスはEUには加盟していないが、それらの国の実質経済成長は概してEUの経済成長よりも 力強いものとなっている。実際にはアイスランドは2008年に債務不履行となりマイナス成長となった。だが自国通貨アイスランド・クローナが暴落し、それが輸出産業への恩恵となり順調に経済が成長している [4] [5]。欧州連合は2007年から2014年にかけてゼロ成長となっている。米国の成長率はEUよりも高いが、スイスはそれを上回る成長をみせている。

各国の実質GDP
(2007年時を100とした場合)
   スイス
   米国
   ノルウェー
   アイスランド
   EU

エネルギー資源

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欧州連合には莫大な石炭原油天然ガス資源がある。欧州連合域内には6つの産油地帯があり、とくに北海油田は特筆される。イギリスの産油量は群を抜いており、このほかにもデンマーク、ドイツ、イタリア、オランダも原油を産出している。原油市場では一般的な考え方ではないが、仮に欧州連合を単一の産油国とすると、世界第7位の原油産出国となり、1日に342万4000バレル](2001年)を産出している。しかし、同時に欧州連合は世界第2位の原油消費国でもあり、産出量を上回る1日あたり1459万バレル(2001年)を消費している。

欧州連合のすべての加盟国は京都議定書を締結しており、欧州連合は同議定書を強く推し進めた当事者の1つでもある。欧州委員会は2007年1月10日、包括的なエネルギー政策を初めて明らかにしている。

貿易

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欧州連合は世界最大の輸出「国」であり、また世界第2位の輸入「国」である。域内における加盟国間の通商は、関税出入国審査といった障壁が除去されていることが推し進める要因となっている。ユーロ圏内では通貨の違いがないことが通商の助けとなっている。欧州連合による連合協定では、より広範な国との通商について、域内での通商と似たような扱いを受けることができ、一部では穏やかなアプローチ(ムチのない飴)といわれ、対象国の政治に影響を与える。

欧州連合では欧州共同体が加盟国を代表して世界貿易機関に参加し、一加盟国として議論に加わっている。


労働市場

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EUにおける15-74歳人口の
労働市場(2020年)[6]

  フルタイマー (48.0%)
  パートタイマー(時間延長を望まない) (9.2%)
  不完全雇用パートタイマー (2.0%)
  失業者(就職活動中) (4.5%)
  就職活動中だが現在は就業不可 (0.6%)
  就業できず、求職していない (32.9%)

失業率

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欧州連合の2007年6月の失業率季節調整値は6.9%であり、2006年6月の数値(当時の25加盟国にブルガリアとルーマニアを加えている)は7.9%であった。ただし失業率は加盟国によって幅がある。比較対象としてユーロスタットによると、アメリカ合衆国は4.5%、日本は3.8%であった。

以下の表は2007年6月と前年同期の各国の失業率を示している[7]

加盟国 失業率 (%)
2006年6月 2007年6月
  オーストリア 4.8 4.3
  ベルギー 8.4 7.2
  デンマーク 4.2 3.5
  フィンランド 7.8 6.7
  フランス 9.5 8.6
  ドイツ 8.3 6.4
  ギリシャ 9.0 8.6
  アイルランド 4.5 4.0
  イタリア 6.8 6.1
  ルクセンブルク 4.6 4.9
  オランダ 3.9 3.3
  ポーランド 7.6 7.9
  スペイン 8.5 8.0
  スウェーデン 7.2 5.3
  イギリス 5.4 5.4
加盟国 失業率 (%)
2006年6月 2007年6月
  ブルガリア 9.0 7.0
  キプロス 4.8 3.9
  チェコ 7.1 5.7
  エストニア 5.7 5.1
  ハンガリー 7.3 7.7
  ラトビア 7.0 5.7
  リトアニア 5.6 4.7
  マルタ 7.4 6.4
  ポーランド 13.9 10.2
  ルーマニア 7.3 7.3
  スロバキア 13.4 10.7
  スロベニア 6.1 5.1
  欧州連合 7.9 6.9

若年失業率

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EU加盟国の若年失業率は総じて高く、多くの加盟国で2桁の数字となっている。ギリシャやスペインでは若年者の4割以上が失業している。 EU全体では約450万人の若年者が失業しており、そのうちの300万人はユーロ加盟国の国民である[8]

EU加盟国の若年失業率(%)[8]

産業

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欧州連合においてサービス部門は重要な位置にあり、GDP の69.4%を占めている。一方で製造業は28.4%であり、農業は2.3%にとどまっている。

農業

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農業部門は共通農業政策という形態で欧州連合から助成を受けているが、この助成額は欧州連合の歳出の40-50%を占めており、これによって欧州連合における農家は最低収入が保証されている。この政策は保護主義的で、貿易を阻害し、途上国に損害を与えているとして批判を受けている。域内第2の経済大国であるイギリスはこれに強く反発する国の1つであり、共通農業政策の大幅な転換がなければ、毎年の欧州連合への拠出金払い戻し制度の変更案を拒否し続けている[注釈 1]。なおフランスは共通農業政策最大の受益者であり、また域内第3の経済大国であるが、同政策最大の賛成者である。

観光

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欧州連合は巨大な観光地帯であり、域外の観光客が訪れ、欧州連合の市民も域内を旅行する。域内観光はシェンゲン協定やユーロにより一部の加盟国の市民にとっては便利なものになっており、欧州連合のすべての市民は査証なしで域内を移動する資格がある。国別に見ても、フランスは国外からの観光客の目的地としては世界一であり、続いてスペインが第2位、イタリアが第5位、イギリスが第6位となっている。欧州連合を単一の国として考えると、域外からの観光客は少なくなり、これは 加盟国への観光客のほとんどが別の加盟国から旅行しているためである。

企業

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欧州連合加盟国からは世界有数とされる多国籍企業の多くが生まれ、世界規模での本社もおかれている。そのような企業には分野別で世界最大の規模を持つものもある。例えばアリアンツ金融業の売上高では世界最大であり、エアバス社は世界のジェット機のほぼ半分を製造している。エールフランス‐KLMは運行本数で世界最大の航空会社アモリムは世界最大のコルク加工・製造会社、アルセロール・ミッタルは世界最大の鉄鋼会社、ダノン・グループ乳製品市場の世界最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブは世界最大のビール会社、ロレアル・グループは世界最大の化粧品会社、LVMHは世界最大の高級嗜好品コングロマリットBASFは世界最大の化学メーカーである。欧州連合にはこのほかにも売上高、営業利益、市場占有率、従業員数などの指標で世界最大規模の企業が存在する。欧州連合に本拠を置く企業の多くがそれぞれの部門で世界上位10位以内に入っている。

地方の多様性

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欧州連合の富裕地域を比較することは困難であるといえる。なぜなら NUTS[注釈 2]-1 と NUTS-2 は均質ではなく、例えば NUTS-1 におけるヘッセン州(21,100平方キロメートル)やイル=ド=フランス地域圏(12,011平方キロメートル)のように広い地域もあれば、その一方で NUTS-1 におけるハンブルク(755平方キロメートル)やグレーター・ロンドン(1,580平方キロメートル)のような狭い地域もある。

このデータを扱うにあたっては、グレーター・ロンドンのような一部の地域には多くの通勤者の流入が問題となり、このため数値が名目的になってしまうのである。このため GDP が押し上げられるものの、その地域の居住人口は変わらず、結果人口1人あたりの GDP が上昇することになる。

このデータは欧州地域開発基金のような財政支援プログラムによって支援される地域を定義するさいに使われている。

NUTS の地域分類はほとんどが任意なもので、方針や基準のようなものはなく、またヨーロッパ全体として分けられている。

NUTS-1、NUTS-2における経済圏上位10地域

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NUTS-1 および NUTS-2 の分類において人口1人あたりの GDP 上位10地域はいずれも2004年以前の加盟国内にあり、2004年5月および2007年1月に加盟した国からは1つも入っていない。NUTS 規則[9]では、NUTS-1 の地域の人口規模について最小で300万人、最大で700万人としている一方で、NUTS-2 の地域においては最小80万人、最大300万人としている[10]。しかしこの定義はユーロスタットではあまり尊重されておらず、例えば NUTS-2 におけるイル=ド=フランス地域圏の居住人口は1130万人とされ、一方で NUTS-1 におけるブレーメン州の居住人口は66万2000人とされている。


NUTS-1 地域 人口1人あたり
GDP (PPP)
(ユーロ、2004年)
1   ルクセンブルク 53,978
2   ベルギー ブリュッセル首都圏 53,381
3   ドイツ ハンブルク 41,972
4   イギリス グレーター・ロンドン 40,542
5   フランス イル=ド=フランス 37,526
6   ドイツ ブレーメン 33,508
7   フィンランド オーランド 31,909
8   オランダ ランドスタット 30,762
9   アイルランド 30,414
10   ドイツ バイエルン 29,646

NUTS-2 地域 人口1人あたり
GDP (PPP)
(ユーロ、2004年)
1   イギリス インナー・ロンドン 65,138
2   ルクセンブルク 53,978
3   ベルギー ブリュッセル首都圏 53,381
4   ドイツ ハンブルク 41,972
5   オーストリア ウィーン 38,632
6   フランス イル=ド=フランス 37,526
7   イギリス バークシャーバッキンガムシャー
オックスフォードシャー
37,379
8   ドイツ オーバーバイエルン 36,408
9   スウェーデン ストックホルム 35,621
10   オランダ ユトレヒト 33,905

NUTS-2における経済圏下位地域

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2004年における経済圏下位15地域はすべてブルガリア、ポーランドルーマニアから入り、最下位のルーマニア北東部 (Nort-est) の欧州連合の平均 GDP に比べて24%にとどまっている。その後ブルガリアの Severozapaden, Yuzhen tsentralen, Severen tsentralen がそれぞれ欧州連合の平均 GDP に比べて26%となっている。欧州連合の平均 GDP に比べて75%以下となっている地域は、ポーランドが15、ギリシャとルーマニアがそれぞれ8、チェコが7、ブルガリアとハンガリーがそれぞれ6、フランス(海外領土を含む)とイタリア、ポルトガルがそれぞれ4、スロバキアが3、スペイン、エストニア、ラトビア、リトアニアマルタがそれぞれ1となっている。

順位 NUTS-2 地域 人口1人あたり GDP (PPP)
(ユーロ、2004年)
対 EU 27か国
平均 GDP 比
(%、2004年)
1   ルーマニア 北東部 5,070 24
2   ブルガリア Severozapaden 5,502 26
3   ブルガリア Yuzhen tsentralen 5,509 26
4   ブルガリア Severen tsentralen 5,681 26
5   ルーマニア 南部 6,111 28
6   ルーマニア 南西部 6,183 29
7   ブルガリア Severoiztochen 6,299 29
8   ブルガリア Yugoiztochen 6,420 30
9   ルーマニア 南東部 6,612 31
10   ルーマニア 北西部 7,093 33
11   ポーランド ルブリン 7 568 35
12   ポーランド ポトカルパチェ 7 617 35
13   ルーマニア 中部 7 629 35
14   ポーランド ポドラシェ 8 148 38
15   ルーマニア 西部 8 395 39

加盟国別のNUTS-2における経済圏上位地域と下位地域

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加盟国 地域 人口1人あたりGDP
(ユーロ) 対EU27か国平均
(%)
  欧州連合 21,503 100.0%
  オーストリア 27,666 128.7%
最富裕 ウィーン 38,632 179.7%
最貧 ブルゲンラント 19,305 89.8%
  ベルギー 26,759 124.4%
最富裕 ブリュッセル首都圏 53,381 248.3%
最貧 エノー 17,546 81.6%
  ブルガリア 7,134 33.2%
最富裕 Yugozapaden 10,550 49.1%
最貧 Severozapaden 5,502 25.6%
  キプロス 19,648 91.4%
  チェコ 16,171 75,2%
最富裕 プラハ 33,784 157.1%
最貧 中部モラヴィア 12,856 59.8%
  デンマーク 26,772 124.5%
  フランス 24,146 112.3%
最富裕 イル=ド=フランス 37,526 174.5%
最貧 フランス領ギアナ 11,690 54.4%
  ドイツ 24,903 115.8%
最富裕 ハンブルク 41,972 195.2%
最貧 デッサウ 16,295 75.8%
  エストニア 11,978 55.7%
  フィンランド 24,834 115.5%
最富裕 オーランド 31,461 146.3%
最貧 フィンランド東部 18,336 85.3%
  ギリシャ 18,245 84.8%
最富裕 アテネ 24,230 112.7%
最貧 ギリシャ西部 11,714 54.5%
  ハンガリー 13,751 64.0%
最富裕 中部ハンガリー 21,837 101.6%
最貧 北部ハンガリー 9,003 41.9%
  アイルランド 30,414 141.4%
最富裕 アイルランド南部・東部 33,653 156.5%
最貧 国境周辺・中部・西部 21,518 100.1%
  イタリア 23,095 107.4%
最富裕 ロンバルディア 30,426 141.5%
最貧 シチリア 14,447 67.3%
  ラトビア 9,775 45.5%
  リトアニア 10,981 51.1%
  ルクセンブルク 53,978 251.0%
  マルタ 15,988 74.4%
  オランダ 27,946 130.0%
最富裕 ユトレヒト 33,905 157.7%
最貧 フレヴォラント 20,736 96.4%
  ポーランド 10,908 50.7%
最富裕 マゾフシェ 16,523 76.8%
最貧 ルブリン 7,568 35.2%
  ポルトガル 16,086 74.8%
最富裕 リスボン 22,745 105.8%
最貧 ノルテ 12,648 58.8%
  ルーマニア 7,301 34.0%
最富裕 ブカレスト=イルフォヴ 13,862 64.5%
最貧 ルーマニア北東部 5,070 23.6%
  スロバキア 12,196 56.7%
最富裕 ブラチスラヴァ 27,802 129.3%
最貧 プレショフコシツェ 9,102 42.3%
  スロベニア 17,920 83.3%
  スペイン 21,658 100.7%
最富裕 マドリード 28,416 132.1%
最貧 エストレマドゥーラ 14,419 67.1%
  スウェーデン 25,865 120.3%
最富裕 ストックホルム 35,621 165.7%
最貧 スウェーデン中東部 21,862 101.7%
  イギリス 26,455 123.0%
最富裕 インナー・ロンドン 65,138 302.9%
最貧 コーンウォールシリー諸島 17,025 79.2%

地域経済圏の比較

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その他

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欧州連合は世界各地でEUSCBB英語版計画を進めており、その一環として「IncoNet CA」を打ち出している。

この計画は2013年9月から開始されたプロジェクトの一部で、中央アジア諸国への研究計画参加を奨励することを目的としたものである。「IncoNet CA」は、東ヨーロッパ、南コーカサス、西バルカンなどの地域が関与する以前の協力計画の経験に基づいて打ち立てられており、中央アジアとヨーロッパの研究施設の連携に重点を置いている[11]

脚注

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注釈

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  1. ^ イギリスはその経済規模により欧州連合の財源のひとつである各国拠出金の額も大きなものになっている。ところが 1984年に当時のイギリスの首相マーガレット・サッチャーは、欧州連合(当時は 欧州経済共同体 )の歳出の7割が共通農業政策にあてられており、農家の少ないイギリスには恩恵がほとんどないと主張し、欧州経済共同体はイギリスに対する優遇措置として毎年払い戻すことを決めた。
  2. ^ Nomenclature of Territorial Units for Statistics - 直訳は地域統計分類単位。欧州連合における統計で地域を分類するときに用いられる。NUTS-1 と NUTS-2 の2つの分類がある。

出典

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  1. ^ Report for Selected Countries and Subjects”. 2020年10月閲覧。
  2. ^ Report for Selected Country Groups and Subjects”. www.imf.org. 12 October 2020閲覧。
  3. ^ THE BALTIC TIGERS - AN END IN SIGHT FOR THE GROWTH STORY?
  4. ^ In European crisis, Iceland emerges as an iland of recovery The Wall Streat Journal, 21 May 2012
  5. ^ Iceland starts torecover its voice after financial crisis The Guardian, World, 23 Nov 2012
  6. ^ Labour market slack – annual statistics on unmet needs for employment”. Eurostat. 2022年4月閲覧。
  7. ^ Eurostat June 2007 2007年7月31日 (英語、PDF形式)
  8. ^ a b Mapped: Europe divided - how the jobless disease is splitting the continent apartM. Khan, The Daily Telegraph, 3 Feb 2016
  9. ^ 欧州委員会規則No 105/2007 OJ L 39, 10.2.2007, p. 1-37
  10. ^ Basic principles of the NUTS ユーロスタットサイト内 (英語ほか10言語)
  11. ^ Mukhitdinova, Nasiba (2015). Central Asia. In: UNESCO Science Report: towards 2030. Paris: UNESCO. pp. 365–387. ISBN 978-92-3-100129-1 

参考資料

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当項目内の GDP 成長率と GDP のデータは以下の IMF のリンク先のものを使用した。

関連項目

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