C/2024 G3 (ATLAS)

2025年に肉眼で観測された長周期彗星

C/2024 G3 (ATLAS) は、2024年に発見された長周期彗星の一つである。近日点では太陽から 0.1 au よりも内側にまで接近することから、サングレーザーに属する彗星の一つであり、2025年初頭に地球から観測される明るさが眼視等級に達すると予測され[2]、最も明るく観測される彗星になる可能性がある[5]

ATLAS彗星
C/2024 G3 (ATLAS)
仮符号・別名 C/2024 G3
分類 19.2(発見時)[1][2]
軌道の種類 長周期彗星(計算上)[3]
サングレーザー
発見
発見日 2024年4月5日[1]
発見者 ATLAS-CHL[1]
発見場所 Río Hurtado
チリの旗 チリコキンボ州
軌道要素と性質
元期:TDB 2,460,477.5 = 2024年6月16.0日[4]
注釈: 特記が無い軌道要素はこの元期に従い、特記している元期の月日は全てその年の1月1.0日となっている。
軌道の種類 楕円軌道(計算上)[3]
軌道長半径 (a) 3,196 au(元期1800年)[3]
7,117 au(元期2200年)[3]
(元期に応じて大きく変動)
近日点距離 (q) 0.0935 au[4]
(約1399万 km
遠日点距離 (Q) 6,391 au(元期1800年)[3]
14,234 au(元期2200年)[3]
(元期に応じて大きく変動)
離心率 (e) 0.999970(元期1800年)[3]
0.999987(元期2200年)[3]
公転周期 (P) 約 18 万年(元期1800年)[3][注 1]
約 60 万年(元期2200年)[3][注 2]
(元期に応じて大きく変動)
軌道傾斜角 (i) 116.851°[4]
近日点引数 (ω) 108.125°[4]
昇交点黄経 (Ω) 220.331°[4]
平均近点角 (M) 359.551°(元期1800年)[3]
-0.105°(元期2200年)[3]
前回近日点通過 TDB 2,460,688.924[4]
2025年1月13日
最小交差距離 0.483 au(地球軌道に対して)[4]
物理的性質
絶対等級 (H) 7.6 ± 0.5(全光度)[4]
Template (ノート 解説) ■Project

発見

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C/2024 G3 (ATLAS) は、2024年4月5日チリコキンボ州で行われた、口径 0.5 m の反射望遠鏡を用いた小惑星地球衝突最終警報システム (ATLAS-CHL) によるサーベイ観測から発見された[1]。発見時は木星軌道のやや内側である、太陽から約 4.84 au(約7億2400万 km)離れた場所に位置しており、19等級程度の明るさで観測された[1][6]。初めて観測された際にはすでに5秒角の大きさで見えるコマが発生していることが認められ、11日後の4月16日には南アフリカ共和国ケープ州で行われた観測で長さ7.5秒角のも確認された。彗星活動の確認を受けて、同年4月18日小惑星センター (MPC) より発行された小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular) にて、正式に C/2024 G3 (ATLAS) と命名された[1]

特徴

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C/2024 G3 (ATLAS) は、オールトの雲から飛来したと考えられている長周期彗星であるとされている。太陽に接近している頃の時期を元期とした軌道要素に基づくと、軌道の離心率が1を超える双曲線軌道を持つ非周期彗星となっているが[4]、これは一時的なものであり、JPL Horizons On-Line Ephemeris System によるさらに長期的な計算結果に基づくと太陽に接近する遥か前と遥か未来では軌道離心率がわずかに1を下回る楕円軌道となっており、太陽からの重力に緩く束縛された長周期彗星であると求められている[3]。発見当初は絶対等級 (H) が9等級程度と非常に暗かったため、軌道計算の結果では近日点では太陽から約 0.09 au(約1400万 km)にまで接近するサングレーザーとされるも、彗星核の崩壊を起こさずに無事に近日点を通過できない可能性があると考えられていた[5][7]。しかしその後の軌道の精査により、この彗星が以前にも近日点を通過して太陽へ接近した可能性が指摘されており、力学的に古い彗星であることが示されている[8][9]。また、更なる観測により絶対等級 (H) が以前考えられていた推定よりも明るい7等級程度と見積もられるようになり、絶対等級 (H) が明るい彗星ほど近日点を通過できる可能性が高くなるという経験則であるボートルの限界[注 3]に基いて、C/2024 G3 (ATLAS) が彗星核の崩壊を起こさずに近日点を通過できる可能性が見込めるようになった[5]

その後、彗星観測データベース (Comet Observation Database, COBS) に報告された観測結果では、2024年12月末頃には眼視等級(6等級)に達した[11]。その後も C/2024 G3 (ATLAS) は増光を続け、年が明けた2025年1月2日には天体観測家のテリー・ラヴジョイによって彗星の急激な増光(アウトバースト)が発生したと報告され、このときに肉眼での明るさは3.2等級に達したとされる[12]。翌1月3日オーストラリアで行われた観測では2.4等級にまで明るくなったことが天文電報中央局 (CBAT) に報告されており[13]1月6日には1等級よりも明るく観測されるようになった[11]

C/2024 G3 (ATLAS) は2025年1月13日に近日点を通過するが、彗星核の崩壊が発生しない場合においてどこまで明るくなるかの予測には差があり、彗星観測家の吉田誠一は-2等級程度[2]天文学者の Gideon van Buitenen は、彗星が太陽と地球の間に入り込むことによる前方散乱英語版の影響も考慮して-4等級程度にまで明るくなると予測している[14]。楽観的な予測では-4.5等級まで明るくなり、近日点を通過した1月末になっても5等級程度と、双眼鏡などを用いれば容易に観測できる明るさを維持しているとも予測されている[8]。近日点通過時は C/2024 G3 (ATLAS) は非常に太陽に接近しているため、この時の地球から観測した際の太陽からの離角はわずか5度しかないとみられている[5]

脚注

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注釈

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  1. ^ PR(公転周期)がおよそ 6.594E+07 となっており[3]、これは日単位なので年に変換すると約 180,535 年となる。
  2. ^ PR(公転周期)がおよそ 2.191E+08 となっており[3]、これは日単位なので年に変換すると約 599,998 年となる。
  3. ^ 太陽に非常に接近する彗星においては、近日点を通過するには少なくとも7等級よりも明るい絶対等級 (H) が必要となるとこの経験則では示されている[10]

出典

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  1. ^ a b c d e f MPEC 2024-H22 : COMET C/2024 G3 (ATLAS)”. Minor Planet Electronic Circular (MPEC). Minor Planet Center (2024年4月18日). 2025年1月8日閲覧。
  2. ^ a b c 吉田誠一 (2025年1月2日). “アトラス彗星 C/2024 G3 (ATLAS)”. aerith.net. 吉田誠一のホームページ. 2025年1月8日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Barycentric Osculating Orbital Elements for Comet C/2024 G3 (ATLAS) in epoch 1800 and 2200”. JPL Horizons On-Line Ephemeris System. Jet Propulsion Laboratory. 2025年1月7日閲覧。 太陽と木星の影響を考慮した太陽系重心 (Barycenter) を用いて解を算出。「Elements and Center: @0」に設定。
  4. ^ a b c d e f g h i Small-Body Database Lookup: C/2024 G3 (ATLAS)”. JPL Small-Body Database. Jet Propulsion Laboratory (2024-12-28 last obs.). 205-01-08閲覧。
  5. ^ a b c d C/2024 G3 (ATLAS):2025年の最も明るい彗星になるか?”. StarWalk (2024年12月25日). 2025年1月8日閲覧。
  6. ^ C/2024 G3 (ATLAS)”. Minor Planet Center. International Astronomical Union. 2025年1月8日閲覧。
  7. ^ M. Mattiazzo. “2024G3”. Southern Comets Homepage. 2025年1月8日閲覧。
  8. ^ a b Bob King (2024年12月18日). “Comet ATLAS (C/2024 G3) Kicks off the New Year — What to Expect”. Sky and Telescope. 2025年1月8日閲覧。
  9. ^ ALPO Comet News for NOV 2024” (PDF). www.alpo-astronomy.org. Association of Lunar and Planetary Observers (2024年). 2025年1月8日閲覧。
  10. ^ 7月までのアイソン彗星動向と今後の予測”. AstroArts (2013年8月8日). 2025年1月8日閲覧。
  11. ^ a b Observation list for C/2024 G3”. COBS – Comet OBServation database. 2025年1月8日閲覧。
  12. ^ T. Lovejoy (2025年1月3日). “C/2024 G3 in outburst? - Jan 2.76, 2025 UT”. Groups.io. 2025年1月8日閲覧。
  13. ^ Green, Daniel (2025年1月4日). “Electronic Telegram No. 5488 | COMET C/2024 G3 (ATLAS)” (txt). Central Bureau for Astronomical Telegrams. 2025年1月8日閲覧。
  14. ^ G. van Buitenen. “C/2024 G3 (ATLAS)”. astro.vanbuitenen.nl. 2025年1月8日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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