BTR-80
BTR-80(ロシア語:БТР-80ベテエール・ヴォースェミヂェシャト)は、ソビエト連邦で開発された装甲兵員輸送車である。1984年に採用された。BTR-70の改良型にあたる。
2011年に開催されたモスクワ戦勝記念パレードにて撮影 | |
基礎データ | |
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全長 | 7.65m |
全幅 | 2.90m |
全高 | 2.46m |
重量 | 13.6t |
乗員数 | 3名 |
乗員配置 | 乗員3名、歩兵7名 |
装甲・武装 | |
主武装 | KPVT 14.5mm機関銃×1 |
副武装 | PKT 7.62mm機関銃×1 |
機動力 | |
速度 | 10km/h(水上) |
整地速度 | 90km/h |
不整地速度 | 60km/h |
エンジン |
V-8KamAZ-7403 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル 260hp/2,600rpm |
懸架・駆動 | 8輪駆動 |
行動距離 | 600km |
出力重量比 | 19.1hp/t |
開発
編集ソビエト連邦軍では、装甲兵員輸送車として装輪装甲車であるBTR-60PBやBTR-70を運用していた。しかし、1979年から始まったアフガニスタン侵攻では、出入り口が上面にしか無いため、乗降しようとした兵士がムジャーヒディーンに狙撃される、BTR-70で追加された側面出入口が小さ過ぎて使いづらい、ガソリンエンジンは被弾するとたちまち発火・炎上し、しかも小型のエンジン2基という組み合わせでは荒地での運用が困難、といった欠点が次々と露呈し、BTR-60、70共々「燃える車輪付き棺桶」という不名誉なあだ名が流布する有様であった。
こうした欠点を改善すべく、アルザマス自動車工場では1984年から新型装甲兵員輸送車の開発を開始した。
構造
編集BTR-70がBTR-60PBからの小改造にすぎなかったのに対し、BTR-80では大規模な改造が施された。
BTR-70の逆三角形の小型で迅速な乗降ができない兵員用ハッチも改良されている。このハッチが前方向に開いていたのを、下方向に開くよう変更し、ハッチの上部には前方向に開くハッチを追加して兵員の迅速な乗降を可能にした。前方向に開く上ハッチは敵から乗降する歩兵を防御し、下方向に開く下ハッチは車両が走行中でも乗降する歩兵の足場となる。また、兵員室は天井がやや高くなり、容積が増加している。
BTR-70までが2基のガソリンエンジンを搭載していたのに対して、BTR-80では1基のディーゼルエンジンを搭載し馬力も向上した。エンジンを1基にしたことで2基のエンジンを同調させる必要が無くなった。ディーゼルエンジンにしたことで被弾した際に発火しにくく燃費も向上した。
ガンポートは兵員室天井ハッチと車長用前面窓横にガンポートが追加された、天井ハッチ以外のガンポートはBTR-60以来の形状が変化しており、車体側面上部のガンポートは全て斜め前方向を向くように変更された。
武装はBTR-80AやBTR-82Aなどの派生型を除けばKPVTと同軸にPKTを搭載した砲塔もBTR-60PB以来同じである。しかし、アフガン侵攻時に高所から攻撃を受けた戦訓から、機関銃の最大仰角をBTR-70よりも拡大している。また、発煙弾発射機も装備している。
兵員室の収容人数や座席レイアウトはBTR-70と同じで、車体後部に水上推進用のウォータージェットを1つ装備している点も変わらない。エンジンも相変わらず後部に搭載されているため、兵員は車体側面のドアや上部ハッチを用いて乗降しなくてはならない。
運用
編集BTR-80は1987年からソ連陸軍の自動車化狙撃師団に配備され始め、現在もロシア連邦陸軍自動車化狙撃師団の主力兵員輸送車になっている。輸出も積極的に行なわれており、旧ソ連諸国を中心に22ヶ国以上に輸出されており、5,000両以上が配備されているとみられる。
運用国
編集派生型
編集旧ソ連・ロシア
編集- BTR-80K
- 指揮型。
- BTR-80A
- 1995年頃から生産が始まった歩兵戦闘車型。砲塔を大型化し、2A72 30mm機関砲を外装式に搭載。ハンガリー陸軍と朝鮮人民軍陸軍に少数採用された。
- BTR-80S
- ロシア国内軍向け仕様。BTR-80Aの2A72 30mm機関砲をKPVT 14.5mm重機関銃に再換装。
- BTR-82
- 2009年に登場した最新型。対地雷性能の向上、新型暗視装置やGLONASS端末の搭載、300馬力のエンジンへの換装などの改造が行われており、以前のタイプよりも大幅に性能が向上している。武装は14.5mm重機関銃と7.62mm機関銃。
- BTR-82A
- 30mm機関砲を装備したBBPU砲塔を搭載したタイプ。
- BTR-82AT
- 増加装甲板とスラットアーマーを取り付け、夜間交戦能力を向上させたタイプ[6]。
- BTR-BM
- BTR-82ATにDUBM無人砲塔システムを搭載したタイプ[6]。
- BPDM「タイフーンM」
- 戦略ロケットの護衛用
- BREM-K
- 装甲回収車型。
- 2S23「ノーナSVK」自走迫撃砲
- 2S9の2A60 120mm直射・迫撃両用砲塔を搭載した自走迫撃砲。
- RHM-6
- 化学偵察車
- GAZ59032
- 民間向けの装甲車。天井をさらに高くして、10名が乗車することが可能。
- GAZ59037
- 極地・寒冷地調査用の民間向け車両。暖房設備・物資輸送フォームを搭載。
ウクライナ
編集ルーマニア
編集- B33ツィンブル
- ルーマニアのライセンス生産型。
- ツィンブル 2000
- B33の発展型。エンジンをドイツ AG社製のBF6M1013FCに、トランスミッションをアリソン製のものに換装。また砲塔もMLI-84M1と同じOWS-25Rを搭載した。試作車のみ。
北朝鮮
編集登場作品
編集ゲーム
編集- 『Project Reality(BF2)』
- 中東連合軍(MEC)・ロシア連邦軍の装甲兵員輸送車(APC)としてBTR-80、BTR-80Aが登場する。
- BRE-80の装備はTNP-B・TKN-3のカメラ2種、クラクション、歩兵用の給弾箱、KPVT 14.5mm重機関銃、PKT 7.62mm同軸機銃、902B スモークランチャー。
- BTR-80AはKPVT 14.5mm重機関銃の代わりに2A72 30mm機関砲、PKT 7.62mm同軸機銃を装備。
- 『コール オブ デューティシリーズ』
- 『メタルギアソリッドV』
- 「ZHUK BR-3」という名称で登場。
- 『WarThunder』
- 大型アップデート「ラ・ロワイヤル(LA ROYALE)」にてBTR-80Aがソ連のランク4の軽戦車として登場。
脚注
編集- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 181. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 182. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 198. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 205. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ a b 荒木雅也、Vitaly V. Kuzmin 「ARMY 2021 ACT.2 STATIC DISPLAY」『月刊パンツァー』 2022年2月号 アルゴノート社 P32
- ^ ステイン・ミッツアー、ヨースト・オリマンス 2021.
参考文献
編集- 日本兵器研究会 編『新・世界の装輪装甲車カタログ』アリアドネ企画 ISBN 4-384-02791-5 2002年
- 田中義夫 編『戦車名鑑 1946~2002 現用編』光栄 ISBN 4-87719-927-6 2002年
- 『月刊PANZER 2022年2月号 』
- ステイン・ミッツアー、ヨースト・オリマンス『朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍』大日本絵画、2021年。ISBN 9784499233279。