Intel 80186
Intel 80186(インテル 80186)は、インテルが1982年6月に発表した、主として組み込みシステム向けのマイクロプロセッサ、ないしマイクロコントローラである。
生産時期 | 1982年から2007年9月28日まで |
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生産者 | Intel, AMD, 富士通, シーメンス |
CPU周波数 | 6 MHz から 25 MHz |
FSB周波数 | 6 MHz から 25 MHz |
命令セット | x86 (16ビット) |
パッケージ | 68ピン PGA |
前世代プロセッサ | Intel 8088 |
次世代プロセッサ | Intel 80188 |
トランジスタ | 55000 |
コプロセッサ | Intel 8087, Intel 80187 |
特徴
編集同年2月に発表されていた80286のリアルモードと同様に、11個の命令が追加されている。しかし、80286以降のチップとは異なり、命令セットアーキテクチャの大幅な拡張はなく、8086と同世代のアーキテクチャである。 コアの拡張ではなく、周辺IC(クロックジェネレータ、割り込みコントローラ、タイマ、DMAC、チップセレクタ)をオンダイに組み込んでいることから、性格的にはマイクロコントローラに近く、組み込みシステム向けの特徴を備える。
一部命令の実行クロック数が削減されることにより、同一クロックで動作するi8086と比較して、約1.3倍程度の性能があるとされる(命令による)。
写真の独特なパッケージ形状は CLCC(セラミック・リードレス・チップ・キャリア)と称されるもので、専用のソケットを用いなければ基板に実装できない。後に PLCC・QFP・PGA など他のパッケージも供給されるに伴い、パッケージ形状がそれぞれ R(CLCC)・ N(PLCC)・ S(QFP)・ A(PGA)とチップ名の先頭で区別された。
もっとも、IBM PC等で使用されているDMAC等とは互換性が無いため、パーソナルコンピュータ(PC)では、部品点数削減が重要なブック型パソコンで使用された程度である。
なお、同時期にNECが8086互換プロセッサとして展開していたVシリーズの中では、V35/V25が機能的に酷似している。
追加または仕様変更された命令
編集先行する80286に追加されていた新たな命令のうち、プロテクトモードや80287に関連しない汎用の命令11個[注 1]が80186にも採用された。これらはもともと286命令の一部であるが、数字的に186より大きい数字のプロセッサで使用できるようになったことから、結果的に「186命令」などとされることもある。
ENTER … Make stack frame for procedure LEAVE … High level procedure exit PUSHA … Push all general registers POPA … Pop all general registers BOUND … Check array index against bounds INS … Input string INSB … Input string byte INSW … Input string word OUTS … Output string OUTSB … Output string byte OUTSW … Output string word
このほか80186/80286では以下の10命令[注 2][注 3]に対しても、既存の命令に対してアドレッシングモードが追加されている。いずれもオペランドにイミディエイト(即値)が使えるようになった[注 4]。なお、シフト/ローテイト命令ではビット数として指定できる有効な値が31以下に変更されており、それより大きな値を指定しても下位5ビット分しか認識されなくなった[注 5]。
IMUL Integer multiplication PUSH Push word onto stack RCL Rotate left through carry RCR Rotate right through carry ROL Rotate left ROR Rotate right SAL Shift arithmetic left SHL Shift left logical SAR Shift arithmetic right SHR Shift right logical
また、8086では8087命令の使用中はWAIT
命令でCPUを止めておかなければならなかった[注 6]が、80186では自動的にタイミングが調整されるようになり、8087命令の前に必ずしもWAIT
命令を入れる必要はなくなった。
その他の80186シリーズ
編集脚注
編集注釈
- ^ INS, OUTSはオペランドでバイトかワードを指定させる表記法で実際にはそれぞれINSBかINSWおよびOUTSBかOUTSWと同じものであるため実質9命令。
- ^ ただしSALとSHLは全く同じ動作なので、実質9命令。
- ^ PUSH imm8のオペコードは6Ah、PUSH imm16は68hとなっており、マシン語レベルでみるとこれらも新命令である。
- ^ 8086でも1ビットのシフト/ローテイト命令はある。複数ビットのシフト/ローテートを行うには8086では一度シフト・ローテートするビット数をレジスタに入れる必要があったが、80186,80286では命令の即値オペランドで指定できるようになった。
- ^ V30は一般的に80186の命令互換とされるが、この変更は適用されておらず、8086互換の挙動になる。例えばシフト命令で31を超えるような大きな値を指定すると、8086やV30では演算結果が0になるが、80186/80286以降では32で割った余り(剰余)の分だけしかシフトされないという違いが生じる。この挙動の違いは上記
ENTER
命令の第2オペランドについても同様で、80186(以降)では下位5ビット分しか使われないが、V30ではそのような制限は無い。 - ^ 通常、アセンブラが自動的に
WAIT
命令を入れる。
参考文献
編集- 成田佳應、『80x86/x87ハンドブック』、ナツメ社、1995年。
関連項目
編集- x86
- Intel 8086
- Intel 80286
- Intel 80386
- FM-16β - シリーズの最初の機種は本CPUを搭載している。