高周波熱プラズマ(こうしゅうはねつプラズマ、誘導プラズマ、Induction plasma)は、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、電磁誘導によって生成される)などの高温プラズマ高温プラズマの一種である[1]

磁場ガス内に電流を誘導し、ガスを最大10,000ケルビンまで加熱する。高周波熱プラズマ技術は、粉末球状化、ナノ材料合成、プラズマ風洞などの分野で使用されている。この技術は、誘導コイル水冷管、トーチヘッド(ガス分配器)の3つの基本要素で構成される、高周波プラズマトーチを介して適用される。DCプラズマトーチと比較したこの技術の主な利点は、コンタミネーションの原因となる電極が不要なことと、連続運転が可能な点である。

歴史

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1960年代は、宇宙開発競争の必要性によって拍車がかかった熱プラズマ技術の黎明期であった。様々な熱プラズマ発生方法の中で、誘導プラズマ(または誘導結合プラズマ)は重要な役割を担っている。

粉末球状化

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球状粉末は、積層造形粉末冶金半導体パッケージ、医療用粉末など、様々な産業分野で必要とされている。研究された球状粉末の利点は次の通り。

一.  流動性の向上。

二.  充填密度の向上。

三.   造形プロセスにおける拡散性の向上

粉末球状化は、プラズマ中を通過させる溶融プロセスである。不規則な形状の粉末原料を熱プラズマに導入し、各粒子を別々に融解させる。液滴は、表面張力の作用で球形に変わる。これらの液滴はプラズマ領域を出る際に冷却され、球状の粒子に固まる。電極るつぼを使用しないため、非常に高い純度の粉末を維持できる。この技術は、研究開発用途だけでなく工業生産装置も確立されている[2][3]

多種多様なセラミックス金属金属合金は、高周波熱プラズマによる球状化プロセスを使用して球状化に成功している。プラズマの温度が高いため、融解温度が非常に高い材料でも球状化することができる。以下は、すでに量産されている球状粉末の例。

ガスアトマイズと比較した粉末球状化の利点は次の通り。

  • 高収率 (球状化粉末は 原料粉末と同じ粒度分布)
  • 幅広い材料 (ほとんどすべてのセラミックスと金属)
  • 高純度 (電極やるつぼからの汚染なし)
  • 使用済み粉末のリサイクルが可能で、球形度が向上し、場合によっては酸素含有量が減少することもある。
  • 真球度、低空隙率サテライトなし
  • フレーク状のレニウム粉末は、熱プラズマ球状化処理後に緻密な球状粉末になる。
  • 熱プラズマプロセスによって球状化されたSiO2粉末の例。処理量は15~20kg/h

ナノ材料合成

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ナノ材料合成の工業技術における課題は、生産性、品質管理、及び低価格化である。高周波熱プラズマ技術は、原材料を10,000ケルビンの高温プラズマ中に投入することにより、高い沸点を持つ材料でも蒸発させることが可能。様々な風域下での操作により、ナノ粒子コアと表面の化学組成が十分に制御された多種多様なナノ粉末の合成が可能になる。この技術は研究開発用途のみでなく、量産設備も確立されている[4]。ナノ粉末合成に使用される熱プラズマは、高純度、高い柔軟性、スケールアップの容易さ、操作の容易さ、プロセス制御など、他の技術に比べて多くの利点がある。

ナノ合成プロセスでは、最初に材料が高周波プラズマ中で蒸発するまで加熱された後、蒸気はクエンチ/反応ゾーンで非常に急速にクエンチ(冷却)される。クエンチガスは、合成するナノ粉末の種類に応じて、ArN2などの不活性ガスCH4NH3などの反応性ガスを使用することができる。プラズマリアクター内で合成されたナノ粒子は多孔質フィルターによって収集される。金属粉末は反応性が高いため、合成された粉末をフィルターから回収する前に、粉末の不活性化に特別な注意を払う必要がある。

高周波熱プラズマシステムは、ナノ粉末の合成に使用されている。製造されるナノ粒子の典型的なサイズ範囲は、使用するクエンチ条件に応じて20〜100nm。生産性は、材料の物理的特性とプラズマの出力レベルに応じて、20 g/h から 3~4 kg/h まで変化する。産業用途の代表的な高周波熱プラズマナノ合成措置を以下に示す。このような装置で合成されたいくつかのナノ粒子の写真が含まれている。

ギャラリー

プラズマ風洞

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大気圏に突入するスペースシップは非常に高速で飛行し、その前面で数千度に圧縮加熱された空気からの高熱フラックスと高圧にさらされる。スペースシップは、この高い熱流束から保護する必要がある。スペースシップの開発のためには、これらの材料を高熱流束と高圧の同様の条件でテストする必要がある。プラズマ風洞は「高エンタルピー地上試験施設」とも呼ばれ、これらの条件を再現する。高周波熱プラズマは、コンタミのない高エンタルピープラズマを生成できるため、これらのプラズマ風洞に使用されている[5][6]

ノート

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脚注

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  1. ^ https://www.daiken-chem.co.jp/DAIKEN-DZB.pdf
  2. ^ Boulos, Maher (2004-05). “Plasma power can make better powders” (英語). Metal Powder Report 59 (5): 16–21. doi:10.1016/S0026-0657(04)00153-5. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0026065704001535. 
  3. ^ Tekna. “Spheroidization Systems | Tekna” (英語). www.tekna.com. 2024年5月15日閲覧。
  4. ^ Tekna. “Nanopowder Synthesis Systems | Tekna” (英語). www.tekna.com. 2024年5月15日閲覧。
  5. ^ Sirmalla, Prathamesh R.; Munafò, Alessandro; Kumar, Sanjeev; Bodony, Daniel J.; Panesi, Marco (2024-01-08) (英語). Modeling the plasma jet in the Plasmatron X ICP facility. American Institute of Aeronautics and Astronautics. doi:10.2514/6.2024-1685. ISBN 978-1-62410-711-5. https://arc.aiaa.org/doi/10.2514/6.2024-1685. 
  6. ^ Tekna. “Tekna PlasmaSonic product line | Tekna” (英語). www.tekna.com. 2024年5月15日閲覧。