高周波活性オーロラ調査プログラム
高周波活性オーロラ調査プログラム(こうしゅうはかっせいオーロラちょうさプログラム、英: High Frequency Active Auroral Research Program、略称:HAARP、ハープ)とは、アメリカ合衆国で行われている高層大気と太陽地球系物理学、電波科学に関する共同研究プロジェクトである[1]。
概要
編集アメリカ空軍、アメリカ海軍、国防高等研究計画局 (DARPA)、アラスカ大学などの共同研究であり[2][1]、HAARPによれば、研究の目的は地球の電離層と地球近傍の宇宙環境で発生する自然現象を探求し、理解することにある[3]。「電離層ヒーター」ともいわれている送信施設は、アラスカ州・ランゲル・セントイライアス国立公園の西にあるOTHレーダーの跡地に建設され、1980年代の終わりから建設が始まり、2005年の終わり頃に完成したとされる。HAARP研究施設の建設には、2億9000万ドルもの投資が成された。
プロジェクトにはアラスカ大学をはじめとして、スタンフォード大学、ペンシルベニア州立大学 (ARL)、ボストン大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) など14以上のアメリカ国内の大学が関わっており、日本の東京大学も誘導磁力計 (induction magnetometer) を提供している[4]。
2014年5月、アメリカ空軍は老朽化したアラスカのHAARP研究施設を閉鎖(廃止)することを発表した。
2015年アラスカ大学が施設を受け継ぎ、民間の研究機関として活動が続けられる。
議論
編集欧州議会の外務委員会は高周波が環境に与える影響を懸念し、議論のために1998年に北大西洋条約機構 (NATO) 関係者を招いたが、NATOはこの件に関して議論できるポリシーを持たないとして拒否されている[5]。また無線通信の撹乱を目的とした軍事研究であるとの批判もある[6]が、HAARPによれば、このプロジェクトは、すべての活動が記録され、一般に公開されており、外国人科学者であってもセキュリティクリアランスなしに、日常的に施設での活動を許可されており、また、HAARPを用いて得られた科学的な結果は、日常的にGeophysical Research Letters、Journal of Geophysical Researchなどの主要な学術研究誌に発表されている。HAARPはプロジェクトに国防総省が参加している目的は、電離層を通過する膨大な数の無線通信、観測システムや、地下の物体を探知したり、地下または海中の大深度における通信に応用しうる技術革新にあり、将来の国防総省のシステムの開発における問題を解決し、商用の通信システムの利用効率を高めることができると説明している[1]。
陰謀論
編集高周波活性オーロラ調査プログラムは、「電磁波兵器として利用されているのではないか?」という陰謀論がある。
陰謀論者としても知られる[7][8][9][10]ジェシー・ベンチュラ(元プロレスラー、元米国ミネソタ州知事)はCNNの取材において、東日本大震災が本プログラムによって引き起こされた、と述べている[11]。だが、電離層に対する電波照射と、地殻変動による地震を関連付ける論理は不明である。
巨大地震が、電離層に対して何らかの変化をもたらすことは知られている[12][13][14]が、それらは大規模な地殻変動による圧電効果によって発生するパルスが、間接的に電離層にもたらす影響と考えられている。
脚注
編集- ^ a b c “HAARP Fact Sheet”. HAARP (15 June 2007). 27 September 2009閲覧。
- ^ E. J. Kennedy, P. Rodriguez, and C. A. Selcher (2004年). “The High Frequency Active Auroral Research Program”. NRL Review. アメリカ海軍研究所. 2011年6月28日閲覧。
- ^ “An Overview of the HAARP Program”. The High Frequency Active Auroral Research Program. 2011年6月28日閲覧。
- ^ “HAARP Induction Magnetometer”. The High Frequency Active Auroral Research Program. 2011年6月28日閲覧。
- ^ "EU clashes with US over atmosphere tests"(EU、大気研究実験をめぐって米国と衝突), physicsworld.com, Institute of Physics, 1998年2月27日
- ^ 米軍施設『HAARP』は「敵国全体を機能不全にする」兵器? WIRED.jp、2008年2月28日
- ^ “Jesse Ventura Working On Conspiracy Theory Series For truTV”. Huffingtonpost.com. (September 30, 2008) 2010年6月13日閲覧。
- ^ “"TruTv:Conspiracy Theory with Jesse Ventura"”. News.turner.com. 2012年12月15日閲覧。
- ^ “Conspiracy Theory with Jesse Ventura Delivers 1.6 Million Viewers, truTV's Biggest Audience Ever for a New Series Launch”. TVbytheNumbers.com (2009年12月3日). 2011年4月1日閲覧。
- ^ Conspiracy Theory with Jesse Ventura Second Season episode list, TruTv.com
- ^ CNN:Piers Morgan記者PressTV2011年4月7日放映'US weapon caused Japan disaster'
- ^ 日本経済新聞 2011年5月2日10時17分『大地震、5~6日前に「前兆」 上空の電離層乱れる 電通大の研究グループが確認』
- ^ 2011年5月27日 日本地球惑星科学連合大会『2011年東北地方太平洋沖地震の直前に起こった電離圏全電子数の正の異常』、北海道新聞 2011年3月28日10時11分『大震災40分前上空の電子急増 チリ地震と類似「前兆か」』、中日新聞 2011年5月28日 9時20分『大震災40分前、上空の電子が異常増加 直前予知に有望』
- ^ 2011年3月11日東日本太平洋沖地震に伴う電離圏擾乱
参考資料
編集- Y. Zaitsev (11 May 2007). “From radio telescopes to electromagnetic weapons.”. Ria Novosti. 2009年9月27日閲覧。
- “Evidence for Precipitation of Energetic Particles by Ionospheric «Heating» Transmissions”. National Geophysical Data Center (7 December 2004). 2009年9月27日閲覧。
- J. E. Smith (6 May 2006). “HAARP Completed!”. Indybay 2009年9月27日閲覧。
- U. S. Inan and T. F. Bell. “Polar Aeronomy and Radio Science (PARS):ULF/ELF/VLF Project”. STAR Laboratory, Stanford University. 2009年9月27日閲覧。
- U. S. Inan, M. Golkowski, D. L. Carpenter, N. Reddell, R. C. Moore, T. F. Bell, E. Paschal, P. Kossey, E. Kennedy, and S. Z. Meth (2004). “Multi-hop whisler-mode ELF/VLF signals and triggered emissions excited by the HAARP HF heater”. Geophysical Research Letters 31: L24805. doi:10.1029/2004GL021647 .
- H. L. Rowland (28 April 1999). “Simulations of ELF radiation generated by heating the high-latitude D- region”. Naval Research Laboratory, Plasma Physics Division, Beam Physics Branch. 2009年9月27日閲覧。
特許
編集- C. W. Hansell (1945)."Communication system by pulses through the Earth", アメリカ合衆国特許第 2,389,432号.
- R. L. Tanner (1965). "Extremely low-frequency antenna", アメリカ合衆国特許第 3,215,937号.
- G. F. Leydorf (1966). "Antenna near field coupling system", アメリカ合衆国特許第 3,278,937号.
- B. J. Eastlund (1987). "Method and apparatus for altering a region in the Earth's atmosphere, ionosphere, and/or magnetosphere", アメリカ合衆国特許第 4,686,605号.
- B. J. Eastlund (1991). "Method for producing a shell of relativistic particles at an altitude above the earths surface", アメリカ合衆国特許第 5,038,664号.