音声モールス発生器
音声モールス発生器(おんせいモールスはっせいき、英:Speech/morse generator、独:Sprach/Morse Generator)は、ドイツ民主共和国(東ドイツ)で開発された通信装置の通称である[1]。開発名称は"Gerät 32620 (Device 32620)"と言われている。紙テープに打刻されたモールス信号を合成音声(ドイツ語・スペイン語)に変換、キーパッドに入力した数字をモールス信号に変換するなどして音声出力する装置であり、もっぱら東側諸国の乱数放送などで用いられた。
概要
編集この装置は1980年代前半に旧東ドイツの宇宙研究所で開発された、とされる[1]。老朽化したシュナッターリンヒェン(Schnatterinchen, Device 32028)と呼ばれるアナログテープ式の装置の後継機で[1]、東ドイツのシュタージをはじめ、ポーランドの公共安全省、その他、ソビエト連邦やキューバなど東側の諜報機関において、乱数放送用の音声データを作るのに用いられた[1][2]。キーパッド入力、シリアルポートからの外部入力(音声やモールス信号など)、紙テープ(5孔式鑽孔テープ)から元となる信号を取り入れ、それをモールス信号音や英語・ドイツ語の数字読み上げ音声に変換して出力するものであり、短波送信機に直結することで電波に乗せることもできた[1]。当初の読み上げ音源(ドイツ語・スペイン語)は、内蔵テープに吹き込まれていたが、のちにデジタル音源化された[1]。また、プログラム支援装置(Device 32621)を使用することで、英語やロシア語などの他の言語に当てはめることもできた[1]。
現在では乱数放送の廃止や情報開示などにより、この機械の存在が公に知られているが、今でもロシア発の乱数放送(G06など)ではこの音声モールス発生器を使用している電波が見受けられ[3]、2020年現在でも稼働している動画がyoutubeに掲載されている[4]。
諸元
編集出典による[1]。
寸法:290×260×135mm
重量:約7.1kg
動作電圧:交流:110V・127V・220V、直流:12V
入力方式:キーパッド入力、シリアルポート入力、紙テープ(5孔式鑽孔テープ)
出力方式:KS-51ソケットによる外部出力・内蔵スピーカー
出力言語:ドイツ語・スペイン語・モールス信号
LEDディスプレイ付き(エラーコード付き)
ニカド電池によるデータ保持機能
キーパッド入力
編集キー入力 | モールス入力 | ドイツ語 | 意味 | 機能 |
---|---|---|---|---|
0 | - | Nul | 数字の0 | 操作画面における「No」キー |
1 | .---- | Eins | 数字の1 | 操作画面における「Yes」キー |
2 | ..--- | Zwei | 数字の2 | モールス信号モードでは短点打鍵 |
3 | ...-- | Drei | 数字の3 | モールス信号モードでは長点打鍵 |
4 | ....- | Vier | 数字の4 | |
5 | ..... | Funf | 数字の5 | |
6 | -.... | Sechs | 数字の6 | |
7 | --... | Sieben | 数字の7 | |
8 | ---.. | Acht | 数字の8 | |
9 | ----. | Neun | 数字の9 | |
: | ...- | Achtung | 傾注(暗号開始) | |
/ | ........ | Trennung | 分離(スラッシュ) | |
+ | ...-.- | Ende | 終了(暗号終了) | 音声発生モードでの終了信号 |
= | 対応なし | モールス信号モードでは「アドレスセパレーター」 | ||
? | モールス信号での終了信号 | |||
SPA | スペースキー | |||
RES | リセットキー | |||
STA/STP | 暗号再生・一時停止 | |||
→ | 進む(設定画面) | |||
← | 戻る(設定画面) | |||
MODE | モード設定 | |||
INP | 入力モードキー | |||
OUT | 出力モードキー | |||
CLR | クリアキー | |||
EX | CLR、OUT、RESの実行キー |
使用例
編集以下の乱数放送で音声モールス発生器が使用された。
- スウェーデン狂詩曲 (乱数放送) :G02(ドイツ語) - ポーランド[2]
- ジャーマン・レディ:G06・G07(ドイツ語) - ソ連・ロシア[4]
- Atención:V02(スペイン語)- キューバ