陳 進(チェン・ジン、1907年 - 1998年)は、台湾の女性画家。台湾新竹県生まれ[1]

戦前の日本に留学して日本画を学び、日本や台湾の女性を主なモティーフとした。戦後は台湾における近代美術教育の発展に尽くした。

略歴

編集

富裕な知識人階級家庭に生まれる。台北第三高等女学校を卒業後、1925年日本の女子美術学校(現・女子美術大学)日本画科に留学する。女子美術学校を卒業した後は日本にとどまり、1929年3月に松林桂月の紹介によって日本画家鏑木清方らに入門、実際には伊東深水山川秀峰の指導を受けたとみられ、さらなる研鑽に励んだ。1934年チャイナドレスの姉妹が中国楽器を演奏する《合奏》が第15回帝展に初入選する[2]。1936年台湾の先住民母子を描いた《サンティモン社の女》が文展鑑査展に入選している[3]。戦後は台湾に戻り、台湾近代美術教育の発展に尽くした。

作風

編集

日本留学初期は日本的な題材を描いていたが、ローカルカラーを求める当時の日本画壇に応じるようにチャイナドレスの女性や台湾の先住民女性を描くようになる[4]。特に台湾先住民母子をテーマにした《サンティモン社の女》は「野蛮で土着的」な先住民の姿が好まれた社会にあって、一線を画するように聖母子的人物画となっている[5]。戦後台湾においては日本で学んだ日本画と中国の伝統的な絵画との対立の中で苦悩した[6]。後半生はいわゆる家庭的な題材に取組んだ。

主な作品

編集
  • 《芝蘭の香》1932年 個人蔵
  • 《合奏》1934年 個人蔵
  • 《サンティモン社の女》1936年 福岡アジア美術館蔵

出典

編集
  1. ^ ラワンチャイクン寿子他編『東京・ソウル・台北・長春 官展にみる近代美術』福岡アジア美術・府中市美術館・兵庫県立美術館、2014年、p.264
  2. ^ 稲木吉一監修、女子美術大学美術資料センター編『アジアの華Ⅱ―美の還流』女子美術大学・女子美アートミュージアム、2004年、p.58
  3. ^ ラワンチャイクン寿子編『日本時代の台湾絵画』福岡アジア美術館 2006年、p.21
  4. ^ シュエ・イェリン「日本時代の台湾が探し求めた〈地域色彩〉」ラワンチャイクン寿子編『日本時代の台湾絵画』福岡アジア美術館 2006年、p.34-35
  5. ^ 稲木吉一監修、女子美術大学美術資料センター編『アジアの華Ⅱ―美の還流』女子美術大学・女子美アートミュージアム、2004年、p.12-13
  6. ^ https://www.artm.pref.hyogo.jp/2002-2008old/exhibition/t_0606/main.html (2021年3月7日閲覧)

参考文献

編集
  • 渋谷区立松濤美術館・兵庫県立美術館・福岡アジア美術館編『台湾の日本女性画家 生誕100年記念 陳進展』図録、2006年
  • 鏑木清方記念美術館編 『鏑木清方の系譜‐師年方から清方の弟子たちへ−』 鏑木清方記念美術館、2008年

外部リンク

編集