長谷川櫂
長谷川 櫂(はせがわ かい、1954年2月20日 - )は、日本の俳人。熊本県生まれ。
朝日俳壇選者、ネット歳時記「きごさい」代表、俳句結社「古志」前主宰、東海大学文芸創作学科特任教授、神奈川近代文学館副館長。「蛇笏賞」(角川文化振興財団)、「奥の細道文学賞」「ドナルド・キーン大賞」(草加市)選考委員。
新聞社に勤務するかたわら俳人としても活動し、第一句集『古志』(1985年)で注目される。伝統を重んじる俳風。句集に『天球』(1992年)、『虚空』(2002年)、評論に『古池に蛙は飛びこんだか』(2005年)などがある。
略歴
編集中学時代から俳句をはじめ、のちに平井照敏(加藤楸邨門下、「槙」主宰)、飴山實(安東次男に兄事、主宰誌なし)に学ぶ。東京大学法学部卒業、読売新聞記者を経て俳句に専念。1993年、39歳で俳句結社「古志」を創刊、2009年に、当時31歳の大谷弘至に「古志」主宰を譲った。
複数の句集、東日本大震災を詠んだ歌集を著し、松尾芭蕉、小林一茶、正岡子規(選集編集にも参加)、高浜虚子、加藤楸邨、飯田龍太などの俳人研究、俳句入門書などの著書を刊行。日本文化についての一連の論稿・随想も多い。
特に芭蕉の古池の句の解釈をもとにした俳句の「切れ」と「間」や「奥の細道」解説。また一茶の再評価を梃子にして俳句史の見直しを行っている。
『俳句の宇宙』でサントリー学芸賞(1990年)、句集『虚空』で読売文学賞(2003年)を受賞。2004年より読売新聞に詩歌コラム「四季」を連載開始。プライベートサイト「一億人の俳句入門」で「ネット投句」「うたたね歌仙」を主宰。また1970年に始まった「歌仙の会」(石川淳、丸谷才一、安東次男、大岡信、杉本秀太郎、岡野弘彦らが連衆)を、三浦雅士(文芸評論家)と共に引き継いだ。
「100分de名著 松尾芭蕉『おくのほそ道』」(NHK、2013年)、「課外授業 ようこそ先輩」(NHK、2014年)などのテレビ番組に出演した。
著書
編集- 句集
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- 『古志』牧羊社
- 『天球』花神社
- 『果実』花神社
- 『蓬莱』花神社
- 『虚空』花神社
- 『松島』花神社
- 『初雁』花神社
- 『長谷川櫂全句集』2008年、花神社
- 『新年』角川書店
- 『富士』ふらんす堂
- 『海と竪琴』花神社
- 『鶯』角川書店
- 『震災歌集』2011年、中央公論新社
- 『震災句集』2012年、中央公論新社
- 『唐津』花神社
- 『柏餅』青磁社
- 『吉野』青磁社
- 『沖縄』青磁社
- 『震災歌集 震災句集』2017年、青磁社、『震災歌集』『震災句集』を合本、その後の震災関連の俳句を収録
- 『九月 長谷川櫂句集』2018年、青磁社
- 『太陽の門 長谷川櫂句集』2021年、青磁社
- 歌仙集
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- 『一滴の宇宙』2015年、思潮社、岡野弘彦、三浦雅士と
- 『永遠の一瞬』2019年、思潮社、岡野・三浦に加え、谷川俊太郎、三角みづ紀、蜂飼耳、小島ゆかりと
- 『歌仙はすごい 言葉がひらく「座」の世界』2019年、中公新書、辻原登、永田和宏
- 創作入門
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- 『一億人の季語入門』角川学芸ブックス
- 『一億人の俳句入門』講談社、のち講談社現代新書
- 『句会入門』講談社現代新書
- 『一億人の「切れ」入門』角川俳句ライブラリー
- 俳論
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- 『俳句の宇宙』花神社、のち中公文庫
- 『古池に蛙は飛びこんだか』花神社、のち中公文庫。芭蕉論
- 『「奥の細道」をよむ』ちくま新書、2007年
- 編『松尾芭蕉 おくのほそ道』100分de名著ブックス・NHK出版
- 『芭蕉の風雅 あるいは虚と実について』筑摩選書、2015年
- 『子規の宇宙』角川選書、2010年
- 『俳句の誕生』筑摩書房、2018年
- 『国民的俳句百選』講談社、2008年
- 編著『現代俳句の鑑賞101』新書館、2001年
- 「新しい一茶」、河出書房新社『日本文学全集 第12巻 小林一茶』所収、のち河出文庫
- 文化論
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- 『和の思想』中公新書、のち岩波現代文庫
- 『海の細道』中央公論新社、紀行文
- 『文学部で読む日本国憲法』ちくまプリマー新書
- 『日本人の暦 今週の歳時記』筑摩選書、2010年
- 随想集
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- 『俳句的生活』中公新書、2004年
- 『四季のうた』中公新書、のち中公文庫(2005年~継続中・計15冊)
- 『花の歳時記』ちくま新書カラー版、2012年
- 『俳句と人間』岩波新書、2022年
- 絵本
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- 『芭蕉さん』2017年、講談社、選句解説、イラスト:丸山誠司
- 長谷川櫂研究書
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- 藤英樹『長谷川櫂 200句鑑賞』2016年、花神社、第16句集「沖縄」まで
参考文献
編集- 坂口昌弘『平成俳句の好敵手』文學の森、2012年、ISBN 4864380635