長島良三
長島 良三(ながしま りょうぞう、1936年9月16日 - 2013年10月14日)は、日本の編集者・翻訳家。フランス文学の翻訳を専門とする。
アンドレ・モーロワ、ボリス・ヴィアン、ジョルジュ・シムノン(「メグレシリーズ」)、モーリス・ルブラン(「ルパン・シリーズ」)などの翻訳で知られる。別名、北村良三(きたむら りょうぞう)。少年文芸作家クラブ会員。
生涯
編集東京府に生まれる。明治大学文学部仏文科卒。大学を修了後、早川書房に入社。[1]1973年から1975年までは「ブラック・ユーモア選集」などを企画した。のち、1973年から1975年には「ミステリマガジン」の編集長、1974年から1975年には「SFマガジン」の編集長も兼務(いずれも前編集長の退社による)。1975年に早川書房を退社して、翻訳専業になる。
初期(1960年代 - 1970年代中盤)には「北村良三」名義を使用した。これは、早川書房が建前として、「社員の、翻訳などの『本来の業務以外』の活動は禁止」していたためである(実際は、多くの社員が内緒で、翻訳を行っていた)。この名義での翻訳にジョルジュ・シムノン「G-7 タクシーの中の男」(所収:『名探偵登場6』早川書房、1963年)、ボアロー=ナルスジャック『青列車は停まる』(早川書房、1968年)、アンドレ・モーロワ『読心機』(早川書房、1969年)、「フロラ・トリスタンの生涯」(所収:『ノンフィクション全集17』筑摩書房、1974年)などがある。
1975年(もしくは1976年)からは「長島良三」の名義を使う。以降、継続的に翻訳業を続け、訳書(小説が主体で、ノンフィクションの翻訳は数点に留まる)の合計は100を超える[2]。ボリス・ヴィアンのハードボイルド群、河出書房新社版「メグレ・シリーズ」のうち十数冊、偕成社「アルセーヌ=ルパン全集」全28冊のうち9冊を翻訳するなど、フランスのミステリー作品・娯楽作品を多く手がける。文学的なものとしてはアンドレ・モーロワ『女の愛について』が挙げられる。
著書は、「メグレ・シリーズ」に関するものが数点と、小説が1編ある。
2013年10月14日、虚血性心不全により東京都内の自邸にて死去[3]。77歳歿。
著書
編集創作
編集- 『ドラフト連続殺人事件』(リヨン社) 1985
評論・伝記など
編集訳書
編集- 『青列車は13回停る』(ボアロー,ナルスジャック、北村良三名義訳、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1968
- 『贋作展覧会』(トーマ・ナルスジャック、稲葉明雄,北村良三名義共訳、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1969
- 『読心機』(アンドレ・モーロワ、北村良三名義訳、早川書房、ハヤカワ・SF・シリーズ) 1969、のち講談社文庫 1980
- 『狼男の怪』(ガイ・エンドア原作、北村良三名義訳、武部本一郎絵、朝日ソノラマ、少年少女世界恐怖小説10) 1973
- 『80日間世界一周』(ジュール・ヴェルヌ原作、北村良三名義訳、中村英夫絵、朝日ソノラマ、少年少女世界冒険小説10) 1974
- 『幽霊』(アガサ・クリスティ他原作、北村良三名義訳、杉村篤え、朝日ソノラマ、少年少女怪奇の世界5) 1975
- 『エマニエル夫人』(エマニエル・アルサン、二見書房、サラ・ブックス) 1975
- 『エマニエルの子供たち』(エマニエル・アルサン、二見書房、サラ・ブックス) 1975
- 『反処女エマニエル夫人』(エマニエル・アルサン、二見書房、サラ・ブックス) 1975
- 『女の愛について』(アンドレ・モーロワ、読売新聞社) 1975
- 『恋する女たち』(アンドレ・モーロア、読売新聞社) 1976
- 『O嬢の物語』(ポーリーヌ・レアージュ、二見書房、サラ・ブックス) 1976
- 『愛しのジュリエッタ』(ルイーズ・ド・ヴィルモラン、文化出版局) 1976
- 『冷たい壁』(イヴェット・M・ロワゾー、角川文庫) 1976
- 『ある愛の物語』(ルイーズ・ド・ヴィルモラン、文化出版局) 1977
- 『眠れローランス』(ディディエ・ドウコワン、角川文庫) 1977
- 『愛よ、ニューヨークよ』(ディディエ・ドゥコワン、読売新聞社) 1981
- 『バカンスは死の匂い』(モニック・マディエ、角川書店) 1981
- 『正・続O嬢の物語』(ポーリーヌ・レアージュ、二見書房、サラ・ブックス) 1981
- 『人類創世』(J・H・ロニー・エネ、角川書店、カドカワノベルズ) 1982
- 『裏切られたノストラダムス』(エリザベート・ベルクール、リヨン社) 1982
- 『ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険』(ジャン・デュトゥール、講談社) 1982
- 『寂しすぎるレディ』(ドミニック・ルーレ、早川書房) 1983
- 『女テロリストを殺せ』(ギイ・テセール、文春文庫) 1983
- 『マドモアゼル・ムーシュの殺人』(ドムーゾン 講談社文庫 1983
- 『鉄仮面』(ボアゴベイ、講談社) 1984、のち文芸文庫
- 『ミラボー橋に消えた男 パリ・ミステリーガイド』(レオ・マレ、中公文庫) 1984
- 『殺意の運河サンマルタン パリ・ミステリーガイド』(レオ・マレ、中公文庫) 1984
- 『ソロモン王の苦悩』(エミール・アジャール、河出書房新社) 1984
- 『マンハッタンの二つの愛』(ディディエ・ドゥコワン、角川文庫) 1985
- 『レジスタンス三銃士』(ヴォルドマール・レスティエンヌ、TBS出版会) 1985
- 『男爵夫人は朝五時にご帰館』(ナディーヌ・ロスチャイルド、竹井出版) 1985
- 『真夜中の汽笛』(J・F・コアトムール、角川文庫) 1986
- 『引き裂かれた夜』(J・F・コアトムール、角川文庫) 1987
- 『ハンナ 炎のように』(ポール=ルー・シュリッツェル、竹井出版) 1988
- 『雨を逃げる女』(クリストフェール・ディアブル、角川文庫) 1988
- 『オペラ座の怪人』(ガストン・ルルー、偕成社) 1988、のち角川文庫
- 『フランス怪奇小説集』(偕成社文庫) 1988
- 『七日目の終り』(フレデリック・ルパージュ、文春文庫) 1988
- 『太陽の下、三死体』(ジャック・サドゥール、新潮文庫) 1988
- 『血塗られた夜』(J・F・コアトムール、角川文庫) 1989
- 『絞殺魔の森』(ローランス・オリオール、角川文庫) 1990
- 『留学生』(フイリップ・ラブロ、新潮社) 1991
- 『ベイビー・ブルース』(パスカル・バセ=シェルコ、新潮文庫) 1991
- 『インドシナ』(クリスチャン・ド・モンテラ、二見書房) 1992
- 『TGV(フランス新幹線)殺人事件 』(アラン・フォージャ、光文社文庫) 1992
- 『禁断のクローン人間』(ジャン=ミッシェル・トリュオン、新潮文庫) 1993
- 『野性の夜に』(シリル・コラール、二見書房) 1993
- 『リリの娘たちの愛と嘘』(フランソワーズ・ドラン、新潮文庫) 1994
- 『やがて死すべき愛について』(シリル・コラール、角川書店) 1994
- 『鮮血の音符』(フランソワ・ジョリ、角川文庫) 1996
- 『星の王子さまを探して』(ポール・ウェブスター、角川文庫) 1996
- 『恐怖病棟』(ジャン=フランソワ・ルメール、読売新聞社) 1997
- 『涙、渇くまで』(カリズ・ベヤーラ、角川文庫) 1997
- 『黄色い部屋の謎』(ガストン・ルルー、集英社文庫) 1998
- 『真夜中の犬』(セルジュ・ブリュソロ、角川文庫) 1998
- 『グリシーヌ病院の惨劇』(ジャック・バルダン、読売新聞社) 1998
- 『壁抜け男』(マルセル・エイメ、角川文庫) 2000
- 『臨死 - ラ・トラヴェルセ』(フィリップ・ラブロ、河出書房新社) 2001
- 『スイス銀行の陰謀』(ダニエル・ジュフュレ、中公文庫) 2001
- 『エロイーズとアベラール 三つの愛の物語』(アントワーヌ・オドゥアール、角川書店) 2003
- 『消えた小麦』(エリック・ローラン、小学館、セス・コルトンシリーズ1) 2003、のち文庫
- 『深海の大河』(エリック・ローラン、小学館、セス・コルトンシリーズ2) 2004、のち文庫
- 『黒衣の下の欲望』(マルト・ブロー、堀内一郎共訳、河出書房新社) 2004
- 『サクリファイス』(フローランス・デュガ、河出書房新社) 2004
- 『欲望の旅路』(フランソワーズ・サンペール、河出書房新社) 2005
- 『ある娼婦の秘密の生涯』(マリー・テレーズ、河出書房新社) 2005
- 『私をたたいて!』(メラニー・ムレール、河出書房新社) 2006
- 『マリリン・モンローの最期を知る男』(ミシェル・シュネデール、河出書房新社) 2008
モーリス・ルブラン
編集- 『ルパンの告白』(ルブラン、北村良三名義訳、金森達絵、集英社、怪盗ルパン2) 1973
- 『強盗紳士』(ルブラン、北村良三名義訳、金森達絵、集英社、怪盗ルパン9) 1974
- 『水晶の栓』(モーリス・ルブラン、角川文庫) 1976
- 『ルパンの冒険』(モーリス・ルブラン、角川文庫) 1979
- 『八点鐘』(モーリス=ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集14) 1981
- 『奇岩城』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集4) 1982、のち文庫
- 『謎の家』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集18) 1983
- 『赤い数珠』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集23) 1983
- 『カリオストロの復讐』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集24) 1983、のち文庫
- 『女探偵ドロテ』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集別巻1) 1986
- 『三つの眼』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ=ルパン全集別巻3) 1987
- 『緑の目の令嬢』(ルブラン、偕成社、アルセーヌ・ルパン) 1994
- 『813・ルパンの二重生活』(ルブラン、偕成社) 1994
- 『続813・ルパンの三つの犯罪』(ルブラン、偕成社) 1994
- 「アルセーヌ・ルパン名作集」(岩崎書店)
ジョルジュ・シムノン
編集- 『メグレと若い女の死』(ジョルジュ・シムノン、北村良三名義訳、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1972
- 『メグレ警部とギャング』(ジョルジュ・シムノン、白木茂等編、北村良三名義訳、津田櫓冬え、岩崎書店、世界の名探偵物語3) 1974
- 『メグレと殺人者たち』(ジョルジュ・シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1976、のち文庫
- 『メグレと口の固い証人たち』(シムノン、河出書房新社) 1976、のち文庫
- 『メグレ氏ニューヨークへ行く』(シムノン、河出書房新社) 1977、のち文庫
- 『メグレと首無し死体』(シムノン、河出書房新社) 1977、のち文庫
- 『メグレと政府高官』(シムノン、河出書房新社) 1977
- 『メグレと宝石泥棒』(シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1978
- 『メグレの打明け話』(シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1978
- 『メグレ夫人の恋人』(シムノン、角川文庫) 1978
- 『メグレと老婦人の謎』(シムノン、河出書房新社) 1978、のち文庫
- 『メグレ最後の事件』(シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1978
- 『メグレ警視のクリスマス』(シムノン、講談社文庫) 1978
- 『メグレと老外交官の死』(シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1980
- 『メグレと深夜の十字路』(シムノン、河出書房新社、メグレ警視シリーズ) 1980
- 『メグレ警視と生死不明の男』(シムノン、講談社文庫) 1981
- 『メグレの退職旅行』(シムノン、角川文庫) 1981
- 『メグレ警視の事件簿』(シムノン、偕成社文庫) 1986
- 『メグレと死体刑事』(シムノン、読売新聞社) 1986
- 『メグレ激怒する』(シムノン、河出文庫) 1988
- 『ベティー』(シムノン、読売新聞社) 1992
- 『家の中の見知らぬ者たち 』(シムノン、読売新聞社) 1993
- 『ドーヴィルの花売り娘』(シムノン、読売新聞社、名探偵エミールの冒険1) 1998
- 『老婦人クラブ』(シムノン、読売新聞社、名探偵エミールの冒険2) 1998
- 『丸裸の男』(シムノン、読売新聞社、名探偵エミールの冒険3) 1998
- 『O探偵事務所の恐喝』(シムノン、読売新聞社、名探偵エミールの冒険4) 1998
- 『ちびの聖者』(シムノン、河出書房新社、シムノン本格小説選) 2008
- 『闇のオディッセー』(シムノン、河出書房新社、シムノン本格小説選) 2008
ボリス・ヴィアン
編集- 『死の色はみな同じ』(ボリス・ヴィアン、早川書房、ボリス・ヴィアン全集11) 1978
- 『人狼』(ボリス・ヴィアン、早川書房、ボリス・ヴィアン全集7) 1979
- 『醜いやつらは皆殺し』(ボリス・ヴィアン、早川書房、ボリス・ヴィアン全集12) 1980
- 『彼女たちには判らない』(ボリス・ヴィアン、早川書房、ボリス・ヴィアン全集13) 1981
フレデリック・ダール
編集- 『甦える旋律』(フレデリック・ダール、文春文庫) 1980
- 『生きていたおまえ…』(フレデリック・ダール、文春文庫) 1980
- 『並木通りの男』(フレデリック・ダール、読売新聞社、フランス長編ミステリー傑作集) 1986
- 『恐怖工作班』(フレデリック・ダール、河出文庫) 1988
「名画の秘密をさぐる」
編集- 「名画の秘密をさぐる」(岩崎書店)
- 『ピカソ 立体派の巨匠』(ヴェロニク・アントワーヌ) 1993
- 『ファン・ゴッホ 火の玉の太陽にこがれて』(ジャクリーヌ・ルメイ) 1993
- 『マチス 線と形の画家』(ヨランド・バイエ) 1993
- 『ルソー 夢のなかの旅』(ディディエ・グロスジャン,クロディーヌ・ロラン) 1993
- 『レオナルド・ダ・ヴィンチ 鳥に話しかけた画家』(イヴ・パンギーリ) 1993
- 『印象派 きたえられた眼』(ヨランド・バイエ) 1997
- 『ドガ 瞬間を描いた画家』(ジャクリーヌ・ルメイ) 1997
- 『ミロ 大地と空』(クレール・エレーヌ・ブランケ) 1997
- 『ロベールとソニア・ドロネー 色は四本の手をもつ』(イヴ・パンギーリ) 1997
コナン・ドイル
編集- 『アルミニウムの杖 シャーロック・ホームズ』(コナン・ドイル、偕成社) 1994
- 『バスカビル家の犬 シャーロック・ホームズ』(コナン・ドイル、偕成社) 1994
- 『赤いひる シャーロック・ホームズ』(コナン・ドイル、偕成社) 1994
- 『切り裂きジャック シャーロック・ホームズ』(コナン・ドイル、偕成社) 1995
脚注
編集- ^ 小森収『はじめて話すけど…』(フリースタイル 2002年)収録の各務三郎へのインタビューより
- ^ 2007年現在。
- ^ 長島良三氏死去=「エマニエル夫人」などの翻訳家 時事通信 2013年10月17日 - archive.today(2013年10月17日アーカイブ分)
参考文献
編集- 日外アソシエーツ人物情報