近藤文二
近藤 文二(こんどう ぶんじ、1901年10月24日 - 1976年11月25日)は、日本の経済学者。大阪市立大学名誉教授。保険学、社会保障論を研究。
略歴
編集業績
編集戦前から保険の歴史や民間保険を研究。1942年の共著『労働者年金保険法論』では「戦費調達説」を提起し、同書刊行[1]または1948年の『社会保険』刊行の頃[2]から社会保険の研究に関心を移した。社会保険を重視する社会保障論を展開し、社会保険の社会事業化・公的扶助化を批判した[3]。1963年の『社会保険』は「社会保険に関する理論・歴史・政策が三位一体となったこの分野の名著」「近藤自身のこれまでの研究の総仕上げ」[4]だと評価されている。第6回日経・経済図書文化賞を受賞した[5]。
1946年2月に末高信・園乾治・平田冨太郎・大河内一男と民間の「社会保障研究会」を組織し、7月にベヴァリッジ報告の影響が強い「社会保障案」を発表した。同年厚生省に設置された「社会保険制度調査会」やその後身である「社会保障制度審議会」に参加し、政策提言者として生活保護法、国民皆年金・皆保険など日本の社会保障制度の形成に影響を与えた[6][7]。
著書
編集単著
- 『保険経済学 第1巻 保険学の本質と保険の歴史』甲文堂書店、1935年
- 『保険経済学 第2巻 保険学の本質』甲文堂書店、1939年
- 『保険学全集 第1巻 保険学総論』有光社、1940年
- 『社会保険入門』東洋書館、1943年
- 『社会保険』東洋書館、1948年
- 『保険論』東洋書館、1948年
- 『社会政策概説』碓氷書房、1949年
- 『社会保障』中央労働学園、1949年
- 『社会保障えの勧告』社会保険法規研究会、1950年
- 『社会保障――自由社会における生活保障』東洋書館、1952年、改訂増補1955年
- 『日本社会保障基本文献集 第20巻 社会保障―自由社会における生活保障―』菅沼隆監修 日本図書センター、2007年
- 『社会保障の歴史』全社連広報出版部、1963年
- 『社会保障の歴史』厚生出版社、1963年、改訂増補1966年、新版1969年
- 『社会保険』岩波書店、1963年
- 『社会保障と労働福祉』日本労働協会、1965年、改訂増補版1967年
- 『社会保障入門』有斐閣双書、1968年、新版1977年
- 『社会保険』日本労働協会、1971年
- 『どうなる健保組合――危機に直面する医療保険』社会保険法規研究会、1969年
- 『日本の社会保障の歴史』厚生出版社、1974年
共著
- 『労働者年金保険法論』後藤清共著 東洋書館、1942年
- 『日本社会保障基本文献集 第6巻 労働者年金保険法論1』菅沼隆監修 日本図書センター、2006年
- 『日本社会保障基本文献集 第7巻 労働者年金保険法論2』菅沼隆監修 日本図書センター、2007年
- 『社会保障勧告の成立と解説』吉田秀夫共著 比良書房、1950年
- 『日本社会保障基本文献集 第18巻 社会保障勧告の成立と解説』菅沼隆監修 日本図書センター、2007年
編著
- 『現代の労働問題――賃金・労働時間・婦人労働・社会保障』内海義夫共編 法律文化社、1964年
- 『医療費問題』厚生出版社、1966年
- 『保険の基礎理論』千倉書房、1970年
- 『保険学シリーズ 2 保険の現代的課題』千倉書房、1974年
その他
- 『Readings in social economics』星野周一郎・磯野喜一共編纂 甲文堂、1935年
- 『Select chapters and passages from an inquiry into the nature and causes of the wealth of nations』Adam Smith著、星野周一郎共訳 平野書店、1939年
- 『講座社会保障 第3巻 日本における社会保障制度の歴史』丸山博ほか編 至誠堂、1959年
- 『戦後における社会保障の展開』大内兵衛編 至誠堂、1961年
- 『日本社会保障基本文献集 第30巻 戦後における社会保障の展開』菅沼隆監修 日本図書センター、2008年
- 『生活保障の経済理論――近藤文二博士還暦記念論文集』近藤文二教授還暦記念事業委員会編 日本評論新社、1963年
脚注
編集参考文献
編集- 高藤昭「社会保障の研究史」 (PDF) 『大原社会問題研究所雑誌』501号、2000年、p.30-45
- 玉井金五「リベラリスト・近藤文二と日本社会保険制度史」 (PDF) 『甲南経済学論集』第55巻第3・4号、2015年、p.23-46
- 平凡社編『日本人名大事典 [補巻] 現代』平凡社、1979年、p.334-335