辻惟雄
日本の美術史家 (1932-)
辻 惟雄（つじ のぶお、1932年6月22日 - ）は、日本の美術史学者。博士（文学）（東京大学・論文博士・1995年）。専門は日本美術史。東京大学名誉教授、多摩美術大学名誉教授。2016年文化功労者に選出、2018年瑞宝重光章受章。
 文化功労者顕彰に際して公表された肖像写真 | |
| 人物情報 | |
|---|---|
| 生誕 |
1932年6月22日（92歳） 日本・愛知県名古屋市 |
| 国籍 |
日本 |
| 出身校 | 東京大学文学部美術史学科 |
| 学問 | |
| 研究分野 | 日本美術史 |
| 学位 | 博士（文学） |
来歴
編集愛知県名古屋市生まれ[1]。父は産婦人科医・都筑千秋。次男で、母方の叔父・辻欽四郎の養子となる[2]。東京都立日比谷高等学校、東京大学文学部美術史学科卒業、1961年同大学院博士課程中退[3]。
東京国立文化財研究所美術部技官、東北大学教授、1985年東京大学文学部教授、1992年国際日本文化研究センター教授（東京大学併任教授）、1993年東京大学定年退官、名誉教授、1996年千葉市美術館館長、1998年多摩美術大学学長、MIHO MUSEUM館長を務めた（現在顧問）。2010年京都市文化功労者[4]。2016年文化功労者に選出[5]、2017年朝日賞受賞[6]、2018年瑞宝重光章受章[7]。
人物
編集- 著書『奇想の系譜』などで、従来の美術史ではあまり評価されていなかった岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳などを「奇想の画家たち」として取り上げたことで江戸絵画の再評価を促し[3]、日本の美術史に大きな影響を与え[3]、特に1990年代以降の若冲ブームの立役者となった[9]。
- 美術史家の山下裕二は東大での教え子であり、山下が監修した2019年の東京都美術館での展覧会「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」では、辻が特別顧問として協力した[10]。2021年1月に『日本経済新聞』「私の履歴書」が連載された。
付記
編集1949年秋に美術史家・源豊宗が発見し、岩佐又兵衛作と断定した「洛中洛外図 舟木本」について、1960年以来「又兵衛前派」の作と否定していたが[11]、2008年刊の『岩佐又兵衛』において自説を改めている[11]。
著作一覧
編集- 単著
- 『奇想の系譜 又兵衛‐国芳』美術出版社 1970年／ぺりかん社（改訂版）1988年
- 『若冲』東京美術出版社 1974年／講談社学術文庫（増訂版） 2015年
- 『日本美術の表情 「をこ絵」から北斎まで』角川書店 1986年
- 『風俗画入門』小学館創造選書 1986年／講談社学術文庫 2024年
- 『奇想の図譜 からくり・若冲・かざり』平凡社 1989年／ちくま学芸文庫 2005年 - 池内紀 解説
- 『17・18世紀の美術 浮世の慰め 岩波日本美術の流れ5』岩波書店 1991年
- 『日本美術の見方 岩波日本美術の流れ7』岩波書店 1992年
- 『戦国時代狩野派の研究 狩野元信を中心として』吉川弘文館 1994年、新装版2011年
- 『遊戯する神仏たち 近世の宗教美術とアニミズム』角川書店 2000年
- 『あそぶ神仏 江戸の宗教美術とアニミズム』ちくま学芸文庫 2015年 - 矢島新 解説
- 『日本美術の歴史』東京大学出版会 2005年、補訂版2021年
- 『奇想の江戸挿絵』集英社新書 ヴィジュアル版 2008年
- 『岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎』文春新書 ヴィジュアル版 2008年
- 『ギョッとする江戸絵画』羽鳥書店 2010年[注釈 1]
- 『辻惟雄集』岩波書店（全6巻）[注釈 2] 2013年-2014年
- 第1巻 「かざり」の美術
- 第2巻 「あそび」とアニミズムの美術
- 第3巻 障屏画と狩野派
- 第4巻 風俗画の展開
- 第5巻 又兵衛と山雪
- 第6巻 若冲と蕭白
- 『奇想の発見 ある美術史家の回想』[注釈 3]新潮社 2014年
- 『十八世紀京都画壇 蕭白、若冲、応挙たちの世界』 講談社選書メチエ 2019年
- 『伊藤若冲』ちくまプリマー新書 2020年 シリーズよみがえる天才
- 『若冲が待っていた 辻惟雄自伝』小学館 2022年[注釈 4]
- 『最後に、絵を語る。 奇想の美術史家の特別講義』集英社 2024年
主な編著・共編
編集- 『日本の美術121 洛中洛外図』至文堂 1976年
- 『日本美術全集23 江戸の宗教美術』学研 1979年、新版1994年
- 『日本美術絵画全集13 岩佐又兵衛』集英社 1980年
- 『日本の美術259 岩佐又兵衛』至文堂 1987年
- 『図説日本の仏教 第五巻 庶民仏教』 新潮社 1990年
- 『日本の美術300 絵巻 鳥獣人物戯画と嗚呼絵』至文堂 1991年
- 『幕末・明治の画家たち 文明開化のはざまに』ぺりかん社 1992年、新版2008年
- 『水墨画の巨匠 第九巻 若冲』 梅原猛と分担解説 講談社 1994年
- 『花の変奏 花と日本文化』 中西進共編 ぺりかん社 1997年
- 『「かざり」の日本文化』角川書店 1998年
- 『日本美術の発見者たち』 矢島新・山下裕二との共著 東大出版会 2003年
- 『日本絵画名作101選』 小林忠・河野元昭との共著 小学館 2005年
- 『ザ・プライスコレクション』小学館 2006年。監修
- 『続 幕末・明治の画家たち 激動期の美術』ぺりかん社 2008年
- 『日本美術史ハンドブック』 泉武夫共編 新書館 2009年
- 『幽霊名画集 全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション』 ぺりかん社 1995年、普及版1999年／ちくま学芸文庫 2008年。監修
- 『日本美術全集』小学館、2012年-2016年。編集委員（全20巻・索引）
- 『熱闘！ 日本美術史』 村上隆との共著 新潮社〈とんぼの本〉2014年
- 『若冲 ワンダフルワールド』 5名との共著 新潮社〈とんぼの本〉2016年
- 『若冲の「花」』朝日新聞出版 2016年
- 『若冲原寸美術館』 太田彩編 小学館 2016年。監修
- 『名画への招待』朝日新聞出版 2017年。編集委員（全9巻）
- 『血と笑いとエロスの絵師 岩佐又兵衛』山下裕二共編 新潮社〈とんぼの本〉2019年
- 記念論集
- 『日本美術史の水脈』 辻惟雄先生還暦記念会編 ぺりかん社 1993年
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “独創の目で絵を評価 若冲ら紹介『奇想の系譜』出版５０年 辻惟雄（つじ・のぶお）さん（美術史家）：東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2022年7月14日閲覧。
- ^ 自伝『奇想の発見 ある美術史家の回想』
- ^ a b c d “辻惟雄 | 著者プロフィール”. www.shinchosha.co.jp. 新潮社. 2022年7月14日閲覧。
- ^ “京都市文化功労者”. 京都市. 2022年8月26日閲覧。
- ^ “平成28年度文化功労者顕彰”. 東京大学. 2022年8月26日閲覧。
- ^ “朝日賞 2001－2018年度”. 朝日新聞社. 2023年1月3日閲覧。
- ^ “秋の叙勲4079人 桐花大綬章に今井敬氏 五木ひろしさんらも”. 日本経済新聞 (2018年11月3日). 2023年1月23日閲覧。
- ^ 博士論文書誌データベース
- ^ 伊藤若冲／若冲ブーム イミダス
- ^ 美術史家の辻惟雄さん、「奇想の系譜」展を語る 美術展ナビ 2018年11月2日
- ^ a b 大塚活美『舟木本洛中洛外図屏風の構想について / 「当関白」の牛車を手掛かりに』立命館大学アート・リサーチセンター、2014年3月。doi:10.34382/00007746。2022年7月14日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- デジタル版 日本人名大辞典+Plus『辻惟雄』 - コトバンク
- 若冲ブームの立役者・辻惟雄さん自伝「奇想の発見」（1/4ページ）（2014年7月24日） - 産経ニュース
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