豊川市一家5人殺傷事件(とよかわしいっかごにんさっしょうじけん)とは、2010年4月17日愛知県豊川市で、無職の男が自分の両親など一家5人を殺傷した事件である。

概要

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2010年4月16日午前2時40分頃、豊川市伊奈町前山に住む58歳の男性宅で、長男(当時30歳)が父親(当時58歳)と三男夫婦の長女(当時1歳)を殺害し、また母親(当時58歳)と三男(当時22歳)と三男の内縁の妻(当時27歳)に怪我を負わせ、自室の布団に火をつけて家を半焼させた。長男はその後、近所の葬儀場の敷地で現行犯逮捕された[1]

背景

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長男は中学校を卒業後、製菓工場に勤めるも1年ほどで退職。以後は職に就かず、十数年の間引きこもりの状態で、インターネットオークションで200万 - 300万円の借金を抱えていた。借金が原因でインターネットを解約されたことに激怒し一家を殺傷したのち、自宅の布団に火をつけた。事件前には借金に関する通報や相談が計9回も及んでいた[2]

2010年5月7日、長男は自宅への現住建造物等放火の容疑で再逮捕された[3]。また、名古屋地検は長男の精神鑑定を実施した。

裁判

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2011年11月24日名古屋地裁岡崎支部裁判員裁判の初公判が開かれ、弁護側は「責任能力は限定的で、心神耗弱状態だった」と傷害致死罪にとどまると主張、責任能力と殺意の有無を争う姿勢を示した[4]

精神鑑定では長男に中程度の知的障害自閉症があるという鑑定結果が出された。

2011年11月30日名古屋地裁での第5回公判で検察側は無期懲役を求刑[5]。論告では動機を「欲求を満たす唯一のインターネットが切断され怒りが爆発した」とし、犯行状況から全員に対する殺意が認められ、刑事責任能力もあったとしたうえで、「極めて凶暴で残忍な犯行」と指摘。その上で反省の言葉を口にしていることや知的障害があることを理由に「死刑までは求められない」とし、無期懲役が相当と説明した。 弁護側は最終弁論で、被告が自閉性障害と知的障害を抱えていたことを強調。「心神耗弱状態で、責任能力は限定的。殺意はなかった」と傷害致死罪を主張した。12月7日に懲役30年の実刑判決が言い渡された[6]。判決では争点だった殺意と責任能力に関して、殺意については、長男が家族の通報や逃走を阻止した点に触れ、「相手の行動を把握して状況判断ができていた」と判断。その上で5人の首などを多数回刺したのは「死亡させる危険性が高いと分かって犯行に及んでいた」と殺意を認定した。責任能力については、借金の発覚など家族とのトラブルが積み重なり、インターネットの切断をきっかけに激しい怒りを覚えたという経緯を挙げ「障害の間接的な影響は認められるものの、動機自体は理解できる」と判断。犯行後に凶器を捨てたり、血が付いた上着を裏返して着たりした行動は「犯行の意味を理解しており、責任能力があった」と責任能力を認めた。

その上で「凶暴で残虐な犯行で結果は重大」とした上で、自閉性障害の影響や反省の態度を示していることを理由に「有期刑の上限である懲役30年が適切」と判断した。

2012年8月6日名古屋高裁は被告側の控訴を棄却、懲役30年とした一審判決を支持した[7]。被告側は殺意はなく、一審の量刑は重すぎるとして懲役20年を下回る判決を求めていたが、名古屋高裁は「裁判員や裁判官が評議した一審判決に不合理な点はない」として一審の判断を追認した。

2012年11月19日最高裁判所第二小法廷(小貫芳信裁判長)は被告側の上告を棄却した[8]。懲役30年とした一、二審判決が確定した。

脚注

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  1. ^ 愛知で家族5人刺され、2人死亡”. 日本経済新聞社 (2010年4月17日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  2. ^ 家族、警察に度々通報 愛知・豊川の一家殺傷”. 日本経済新聞社 (2010年4月18日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  3. ^ 長男を放火容疑で再逮捕へ 豊川一家5人殺傷”. 日本経済新聞社 (2010年5月7日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  4. ^ 長男の責任能力争う姿勢 愛知一家殺傷事件初公判”. 日本経済新聞社 (2011年11月24日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  5. ^ 愛知一家5人殺傷、無期懲役を求刑”. 日本経済新聞社 (2011年11月30日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  6. ^ 一家5人殺傷、被告に懲役30年 名古屋地裁支部判決”. 日本経済新聞社 (2011年12月7日). 2021年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月23日閲覧。
  7. ^ 愛知一家殺傷、二審も懲役30年 名古屋高裁”. 日本経済新聞社 (2012年8月6日). 2024年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月18日閲覧。
  8. ^ 愛知家族5人殺傷、懲役30年確定へ…上告棄却”. 読売新聞 (2012年11月21日). 2012年11月27日閲覧。
出典リンク切れのため参考