角の二等分線の定理
初等幾何学における角の二等分線の定理(かくの にとうぶんせんのていり、英: Angle bisector theorem)は、三角形の内角および外角の二等分線と線分の長さの比について述べた定理である。
分野 | ユークリッド幾何学 |
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命題 | 三角形の1つの内角のニ等分線と、その角と向かい合う辺(対辺)との交点が、対辺をその角をはさむ2つの辺の長さの比と等しい比に内分する。 |
内角における角の二等分線の定理
編集△ABC を考える。∠ A (内角)の二等分線が、辺BC上の点Dで交わるとする。このとき、線分BDの長さと、線分CDの長さとの比は、辺ABの長さと辺ACの長さの比に等しい。すなわち
である。この定理の逆、すなわち「△ABC の辺BC上の点Dについて、線分BDの長さと、線分CDの長さとの比が、辺ABの長さと辺ACの長さの比に等しいならば、直線ADは∠ A の二等分線である」も成り立つ。
この定理の一般化として、Dが辺BC上の点ならば
が成り立つ。
角の二等分線の定理は日本の数学教育では高等学校の数学Aの「図形の性質」で扱われるが、中学校の「図形の相似」単元の応用でも扱われる場合がある[1]。
証明
編集内角における角の二等分線の定理の証明にはさまざまな方法が存在する。そのうちのいくつかを以下に示す。 以下、特に断りのない限り △ABCで∠ A (内角)の二等分線と辺 BC の交点を点 D とする。
相似な三角形を利用した証明 1
編集点 C を通り、辺ADに平行な直線と辺ABの延長の交点を E とする。 このとき、平行線の同位角から 、共通の角より である。これらのうち2つから、 となる。このことから、
(このことは平行線と線分の比の定理からも証明できる)
また、 かつ より だから、 である。よって
相似な三角形を利用した証明 2
編集図で、点 B から直線 AD に下ろした垂線の足を B1 とし、点 C から直線 AD におろした垂線の足をC1 とする。
△ABB1と△ACC1において、
、 であるから
である。
したがって、 である。
さらに、 であるから
前の式と合わせて、
点 D を、点 B や点 C と一致しない辺 BC 上の点とすると
- (一般化)
△ABD と △ACDに正弦定理を用いることで、
∠ ADB と ∠ ADCは補角(大きさの和が180度)だから、
辺BC上に点Dがあるとき、その位置に関係なく、式(1)と(2)は次のように変形できる。
∠ ADB と ∠ ADCは補角だから、式(1)と(2)の右辺が等しいので
- 、
すなわち (この定理の一般化)を得る。
三角形の面積を利用した証明
編集図で、△BADと △CADの面積比を調べる。
- および
から
外角における角の二等分線の定理
編集△ABC で、 AB ≠ AC であるとき、 外角A の二等分線と辺 BC との交点を E とすると
が成り立つ(外角における角の二等分線定理)。これについても、逆が成り立つ。
証明
編集図のように、 AB ≠ AC である △ABC で、とき、 外角Aと辺 BC との交点を D、点 C を通り平行な直線と辺ABの延長の交点を E とし、辺 BA の延長上に点 F をとる。 このとき、 から であり
平行線の同位角から 、平行線の錯角から が成り立つ。したがって、 であるから、 となり、 が成り立つ。このことから、
歴史
編集内角における角の二等分線の定理は、『ユークリッド原論』の第6巻の命題3として登場する。 Heath (1956, p. 197 (vol. 2))によると、外角の二等分線についてのこれに対応する記述はロバート・シムソンによって与えられ、パップスは証明なしにこの結果を仮定したと指摘した。Heathは続けて、オーガスタス・ド・モルガンは2つの定理を次のように組み合わせる必要があると提案したと述べた[2]。
- If an angle of a triangle is bisected internally or externally by a straight line which cuts the opposite side or the opposite side produced, the segments of that side will have the same ratio as the other sides of the triangle; and, if a side of a triangle be divided internally or externally so that its segments have the same ratio as the other sides of the triangle, the straight line drawn from the point of section to the angular point which is opposite to the first mentioned side will bisect the interior or exterior angle at that angular point.
応用
編集この定理は、次のようなことがらの議論で使用される。
脚注
編集- ^ 教科書より詳しい中学数学 (2022年8月29日). “角の二等分線と比”. 教科書より詳しい中学数学. 2023年12月25日閲覧。
- ^ Heath, Thomas L. (1956). The Thirteen Books of Euclid's Elements (2nd ed. [Facsimile. Original publication: Cambridge University Press, 1925] ed.). New York: Dover Publications
- (3 vols.): ISBN 0-486-60088-2 (vol. 1), ISBN 0-486-60089-0 (vol. 2), ISBN 0-486-60090-4 (vol. 3). Heath's authoritative translation plus extensive historical research and detailed commentary throughout the text.
参考文献
編集- G.W.I.S Amarasinghe: On the Standard Lengths of Angle Bisectors and the Angle Bisector Theorem, Global Journal of Advanced Research on Classical and Modern Geometries, Vol 01(01), pp. 15 – 27, 2012