西船橋駅ホーム転落死事件

西船橋駅ホーム転落死事件(にしふなばしえきホームてんらくしじけん)は、1986年昭和61年)1月千葉県船橋市の国鉄西船橋駅で酒に酔って絡んできた男性の身体を女性が突いたところ、男性がホーム下に転落し、そこに進入してきた電車に巻き込まれて死亡した事件である。女性は傷害致死罪で起訴されたが、翌年9月の千葉地裁判決において正当防衛が認められ、無罪が確定した。西船橋駅事件とも呼ばれる[1]

概要

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1986年昭和61年)1月14日23時頃、日本国有鉄道(現在のJR東日本総武線西船橋駅の4番線プラットホームで女性(当時41歳)と酒に酔って執拗に絡む男性(当時47歳)が口論となり[2]、その最中に男性が両手で女性のコートの襟のあたりを掴んで離そうとしないことからもみ合いとなった[3]。もみ合いの中で女性は男性を突き飛ばし、突かれてよろけた男性は線路上に転落した[4]。その場にいた他の客数人がホーム上に引き上げようとしたが[5]、男性は入線してきた上り電車にかれ死亡した[6]。女性は傷害致死罪で逮捕・起訴されたが[7]、裁判で正当防衛が認められ無罪となった[8]

当事件については当時、男性(都立高校体育科教諭)と女性(ストリッパー)の職業の対比から、興味本位に報道するマスコミが多かった[9][10][11]。しかし、このことが結果として、当事件のような女性に対する男性の暴力の問題を浮き彫りにし、被告女性に対する有志の女性たちの応援団が結成されるなど支援の輪を広げることとなった[12][13]。無罪判決を求める署名運動が1987年1月から始まり、4千筆あまりが集まった[14][13]

裁判

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千葉地方裁判所において女性に対し、検察傷害致死罪懲役2年を求刑した[10]。一方、弁護側は、正当防衛の成立を主張した[13]

日本の刑法は、「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為」は、正当防衛として処罰の対象にならないと定めている(刑法36条1項)。権利を脅かす侵害行為(本件では男性による「執拗な絡み」)に対して行われた防衛行為(本件では女性による「突き飛ばし」)が正当な行為として扱われるためにはいくつかの条件があるが、本件事案では、防衛行為が招来した相手の死という結果が防衛行為によって守られた利益と比して不均衡であるから、いわゆる過剰防衛の可能性が問題となる[15][16][17][18][19]

もっとも、本件のように、反撃行為によって侵された利益が守ろうとした利益よりも大きいケースについては、すでに1969年(昭和44年)に最高裁が判断しており[20]、この判例によれば、刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」とは、「反撃行為が急迫不正の侵害に対する防衛手段として相当性を有することを意味し、右行為によって生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても、正当防衛行為でなくなるものではない」[20]とされている。

千葉地裁は1987年(昭和62年)9月17日、上記判例に従い、女性が男性から逃れるために身体を突き飛ばしたことは、手段としては妥当なものであり、結果的に男性がプラットホーム下に転落し、ホームと到着した電車に身体を挟まれるという想定外の事情により死亡したとしても、男性による急迫不正な侵害行為から逃れる正当なる防衛行為にあたるとし、被告人に正当防衛を認め無罪とした[8]。検察は控訴せず、無罪が確定した。

セクシュアルハラスメント概念と当事件

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当事件の裁判を、性的嫌がらせの概念として「セクシュアル・ハラスメント」が日本社会に浸透した最初の事例、“日本初のセクハラ裁判”とする主張も見られるが[21][22][23]、実情にそぐわない誤解だとする批判がある[24]。たしかに当事件は男性から女性に対する執拗な嫌がらせの様相を呈しているが[25]、「偶発的な事件と言うこともあってセクハラという概念も言葉もあまり拡がらなかったようです」と評され[26]、研究者も当事件の判決が出た翌年の1988年(昭和63年)を指して「この時点でもセクシュアル・ハラスメントに関する認識は、まだ女性問題や労働問題に詳しい一部の人々の間にとどまっていた」としている[27]。また別の研究ではマスコミがセクシュアル・ハラスメントという言葉を取り上げ始めた時期が1989年(平成元年)4月以降と特定されている[28]

こうした誤解の成立には、当事件および翌1987年(昭和62年)の池袋買春男性死亡事件の裁判で被告女性を支援した女性団体「働くことと性差別を考える三多摩の会[29]が1988年にセクシュアル・ハラスメントに関する日本初の書籍となる『日本語版 性的嫌がらせをやめさせるためのハンドブック』[30]を翻訳刊行して反響を呼んだこと[27]や、1989年(平成元年)の新語・流行語大賞で「セクシャル・ハラスメント」が新語部門・金賞を受賞した際、当事件の被告弁護団の河本和子弁護士が授賞式で表彰されたこと[22]などが影響したと指摘されている[24]

いずれにせよ、セクシュアル・ハラスメントは河本弁護士が提唱した言葉ではなく、当裁判の弁論でも用いられていない[31]。また裁判から新語・流行語大賞を受賞する1989年12月[22]までに2年以上の時間のずれがある。それにも関わらず当事件の弁護士に新語・流行語大賞が授賞したのは、単語「セクハラ」が大きな話題となる決定的な要因となった[32][33]、出版社を不当解雇された女性(晴野まゆみ)が1989年8月に福岡地方裁判所で起こした一般に日本初のセクハラ民事訴訟とされる福岡セクシュアルハラスメント事件[34][35][36]の裁判が終了しておらず、係争中であったためと言われている[26][37][注 1]

その他

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脚注

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注釈

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  1. ^ 福岡セクシュアルハラスメント事件(福岡事件)はその後1992年(平成4年)4月16日に福岡地裁が原告の全面勝訴判決を言渡し[38][39]、被告である元上司と会社は控訴せず、判決が確定した[40]。裁判は弁護団および裁判を支援する会の方針により原告匿名でおこなわれ、判決から四年後の1996年(平成8年)に原告は実名を公表した[41]

出典

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  1. ^ 坂下陽輔(刑事判例研究会)「[刑事判例研究14]自動車運転過失致死罪につき正当防衛の成立が認められた事例(大阪地裁平成24年3月16日判決判例タイムズ1404号352頁)」『立命館法学』第359巻(2015年第1号)、立命館大学法学会、2015年、326頁、doi:10.34382/00007019。「いわゆる西船橋駅事件として著名な千葉地裁昭和62年9月17日判決は、」 
  2. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, pp. 14–15.
  3. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 16.
  4. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 13.
  5. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 15.
  6. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 1.
  7. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 17, 「本件の訴因も殺人ではなく傷害致死であり」.
  8. ^ a b 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, p. 17, 「然らば、被告人が〇〇を突いた所為は、刑法36条1項にいう急迫不正の侵害に対して自らの身の安全に守るためやむことを得ずに出た所為と認められ、それ故に右所為は処罰されず、本件は罪とならないものである。」.
  9. ^ 小林直美『テレビニュースに表象される女性被害者 : 内容分析による男性被害者との比較研究』(博士(社会学)論文)武蔵大学、2014年3月、43頁。32677乙第14号https://hdl.handle.net/11149/1639。「はじめに加害者とされ、後に被害者であるとされたこの女性の職業がストリップショーのダンサーであったため、その報道の見出しには「ダンサー」とつけられた。一方、酔って絡んで死亡した男性の職業は高校教師であった。この2つの職業の社会的信用度、地位の差からこの事件報道には常に、女性が男性をそそるような態度や服装をしていたのではないかという先入観があった。また、ちょっとした嫌がらせぐらい女は我慢すべき、あるいは逃げればよかったのだというような書き方をするものもあった。この事件報道では、女性被害者の名誉・プライバシーを侵害しただけでなく、被害者の家族に関する報道もなされた(小玉〔美意子〕1991:39-42)。」 
  10. ^ a b 増田れい子女性の性にかかわる報道の諸問題 ゆがみはどうして生じるか : 西船橋駅転落死亡事件をめぐって」『日本婦人問題懇話会会報』第48巻、日本婦人問題懇話会、1989年6月、54-59頁。 
  11. ^ 川合伸江「女性の性的自立を求めて : 西船橋駅事件そして池袋事件」『日本婦人問題懇話会会報』第48巻、日本婦人問題懇話会、1989年6月、60-62頁。 
  12. ^ “セクシュアルハラスメント”を流行語にした女たち インタビュー「働くことと性差別を考える 三多摩の会」丹羽雅代さん・野村羊子さん:前編”. LOVE PIECE CLUB (2018年3月15日). 2023年5月31日閲覧。 “丹羽〔雅代〕:〔被告の〕女性にとって不利な状況でしたね。それで、これは大変な事件だと思ってみんなで声をあげたり、集会をやったり、学習会をやったり、いろんなことをやったんです。(..) その頃から女性の新聞記者が活躍しはじめていたのですが、彼女たちがこの事件を理解してくれたことで、報道姿勢も次第に変わりましたね。”
  13. ^ a b c 松繁逸夫 (1988年). “野宿者排除の事例報告(1988・7・3福岡集会のために) : 被害者が加害者となった事例”. 釜ヶ崎資料センター. 2023年5月31日閲覧。 “三つ目は、同じように被害者が加害者となった事件であるが、起訴あるいは裁判の過程で、加害者の被害者性が争われたことで、やや性格を異にしているものである。” ※『朝日ジャーナル』1987年10月2日号からの引用あり。
  14. ^ 川合伸江「女性の性的自立を求めて : 西船橋駅事件そして池袋事件」『日本婦人問題懇話会会報』第48巻、日本婦人問題懇話会、1989年6月、61頁。「彼女の無罪を求める署名運動を始めたのは、1987年1月、事件から一年がたっていました。/ 署名運動を始めてみると、多くの女性達が、この事件を自分自身の問題、女にかけられる性的いやがらせの問題とうけとめて、発言したり行動したりしていたことがわかりました。署名も短期間に四千名あまりが全国から寄せられました。」 
  15. ^ 松宮孝明正当防衛における「急迫性」について」『立命館法学』第377巻(2018年第1号)、立命館大学法学会、2018年、115-119頁、doi:10.34382/00007165。「5.「相当性」の定義/ (1)「正は不正に譲歩しない」という法格言の意味」 
  16. ^ 生田勝義正当防衛に関する一考察」『立命館法学』第271・272号〈上巻〉(2000年第3・4号〈上巻〉創立百周年記念論文集)、立命館大学法学会、2001年2月、44-46頁。「四 行為原理と「防衛行為」/ 2 防衛行為の相当性」 
  17. ^ 臼木 豊正当防衛について (1)」『駒澤法曹』第15巻、駒澤大学法科大学院(駒澤大学法曹研究会)、2019年3月、164-166頁、ISSN 1880-0246。「三 「やむを得ずにした」行為 (相当性)」 
  18. ^ 坂下陽輔(刑事判例研究会)「[刑事判例研究14]自動車運転過失致死罪につき正当防衛の成立が認められた事例(大阪地裁平成24年3月16日判決判例タイムズ1404号352頁)」『立命館法学』第359巻(2015年第1号)、立命館大学法学会、2015年、325-326頁、doi:10.34382/00007019。「(三) 検討」 
  19. ^ 襲った男からナイフ奪って太もも刺し、死亡させる/被害女性は強姦の正当防衛になるのかで論議”. J-CASTニュース. 株式会社ジェイ・キャスト (2013年10月4日). 2023年5月31日閲覧。
  20. ^ a b 最高裁判所第一小法廷判決 1969年12月4日 刑集第23巻12号1573頁、昭和44(あ)第1165号、『傷害』「刑法36条1項にいう「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」の意義」。
  21. ^ 「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞 第6回 1989年 授賞語”. 自由国民社. 2010年1月3日閲覧。 “新語部門・金賞「セクシャル・ハラスメント」河本和子さん(弁護士)/ 欧米ではすでに社会問題化していた「セクシャルハラスメント」だが、日本では“西船橋駅転落事件”の判決が出たこの年、一気にスポットライトを浴びた。(..) 日本で初のセクシャルハラスメント裁判と言われ、河本は弁護人として活躍した。” ※実際には西船橋駅ホーム転落死事件の判決が出たのは1987年9月である。
  22. ^ a b c 新語・流行語大賞|第6回新語・流行語大賞(1989年)”. 写真素材・動画素材のアフロ. 株式会社アフロ (1989年12月1日). 2023年5月31日閲覧。 “「'89日本新語・流行語大賞」(自由国民社主催)の表彰式が1日に開かれ、新語部門で「セクシャル・ハラスメント」、流行語部門で「オバタリアン」と、女性に関係する2つの言葉が金賞に輝いた。職場などに話題を投げかけた「セクシャル-」の火付け役は弁護士の河本和子さん。扇谷正造審査委員長から記念品を贈られた。(..) 東京・丸の内の東京会館で。1989年12月1日撮影。”
  23. ^ セクシュアル・ハラスメント防止委員会から|ニュース専修ウェブ版2007年09月号” (pdf). 専修大学. 専修大学 (2007年9月). 2023年5月31日閲覧。 “1986年に発生した「西船橋駅ホーム転落死事件」(..) が大きなきっかけとなって、「セクハラ」という概念が日本でも一般的に知られるようになったと言われています。”
  24. ^ a b 佐々木恵理「「セクハラ」をめぐる言説を再考する : ことばの歪みの源泉をたどる」『ことば』第39巻、現代日本語研究会、2018年12月、26-32頁、doi:10.20741/kotoba.39.0_17ISSN 0389-4878NAID 1300075415852020年9月9日閲覧。「5. どのようにことばは歪み、そして拡散したのか」 
    佐々木恵理「増殖するハラスメント : 「ハラスメント語」を考える」『ことば』第40巻、現代日本語研究会、2019年12月、36-53頁、doi:10.20741/kotoba.40.0_36。「2.「セクシュアルハラスメント」から「セクハラ」へ」 
  25. ^ 千葉地裁昭和61年(わ)第68号判決, pp. 13, 15–16.
  26. ^ a b 【企業からみたセクハラ対策】”. 安蒜会計事務所. 公認会計士・税理士安蒜俊雄事務所. 2016年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月3日閲覧。
  27. ^ a b 牟田和恵「セクハラ問題から見るジェンダー平等への道 : 問題化の歴史を振りかえって」『法社会学』第82号〈ジェンダーと法の理論〉、日本法社会学会、2016年3月、113頁、doi:10.11387/jsl.2016.82_111。「日本では, アメリカでのこうした情報が雑誌等で短い紹介外信として伝えられることはあったが, 学界の限定されたレベルを除くと一般にはほとんど知られていなかった.そのなかでセクシュアル・ハラスメント問題についてまとまった情報を発信したのが, 東京の草の根の女性運動グループである「働くことと性差別を考える三多摩の会」(以下,「三多摩の会」)が, アメリカの女性団体が1980年に刊行した小冊子 ‘Stopping Sexual Harassment: A Handbook’ を1988年に翻訳刊行した『性的いやがらせをやめさせるためのハンドブック』と題した, 70ページほどの小冊子だった.(..) 600部印刷していた冊子は, 2000部増刷するほどの評判を呼んだが(宮〔淑子〕1989:162-163), しかしこの時点でもセクシュアル・ハラスメントに関する認識は,まだ女性問題や労働問題に詳しい一部の人々の間にとどまっていた.」 
  28. ^ 森川友子「現代日本における被害者像の変遷に関する一考察」『九州産業大学国際文化学部紀要』第35巻、九州産業大学国際文化学会、2006年12月、4頁。「中下ら(1991)〔有斐閣選書『セクシュアル・ハラスメント : 「性」はどう裁かれているか』〕は, 「セクシュアル・ハラスメントという言葉がマスコミをかけめぐり始めたのは1989年4月頃」「女性誌『モア』が6月号で取り上げたのを皮切りに週刊誌が次々に取り上げ、テレビ等もこれに続いた」としている。」 
  29. ^ “セクシュアルハラスメント”を流行語にした女たち インタビュー「働くことと性差別を考える 三多摩の会」丹羽雅代さん・野村羊子さん:前編”. LOVE PIECE CLUB (2018年3月15日). 2023年5月31日閲覧。
  30. ^ 森川友子「現代日本における被害者像の変遷に関する一考察」『九州産業大学国際文化学部紀要』第35巻、九州産業大学国際文化学会、2006年12月、4頁。「セクシュアル・ハラスメントに関する日本初の書籍は,1988年発刊の「日本語版 性的いやがらせをやめさせるためのハンドブック」(働くことと性差別を考える三多摩の会訳)である。」 
  31. ^ 市川清文(千葉第一法律事務所) (1989年). “アク「セク・ハラ」ハラ道中記”. Lawyer Ichikiyo's Home Page(弁護士市川清文のHOME BASE). 2023年5月31日閲覧。 “もっともな質問である。xx弁護団が「セクシャル・ハラスメント」なる言葉を作った訳ではないし、宣伝したこともない。もちろん弁論で引用した訳でもない。セクハラの言葉は既に事件の十年位前から米国で使われ出したらしいし、日本でもセクハラについて書いた本がxx事件以前に出版されている。二弁(第二東京弁護士会)ではセクハラの法律相談までやっている。賞をもらうべき人は、たんといらっしゃる。よりによってなんで〔河本弁護士が受賞するのか〕。(..) たしかにセクハラの言葉は前からあったし、これを問題にした本も出ていた。しかし、この問題が本格的に社会の前面に飛び出したのは、あのxx事件がきっかけだった。《ヌードダンサーと高校教師》という取り合わせに飛び付いたマスコミだったが、いざ審理がはじまってみると、そこには女性一般に対する男性の性的いやがらせの問題があることがわかった。” ※千葉県弁護士会会報『槇』平成元年度第2号初出。xx部分は引用者による伏字。
  32. ^ 日本ではセクハラが法律で禁止されていない?!【特集セクハラ(2)】 - 記事”. NHK ハートネット. NHK (2018年11月14日). 2023年5月31日閲覧。 “実は「セクハラ」が日本で初めて注目されたのは30年も前のことでした。平成元年〔1989年〕、福岡で初めてセクハラを争点にした裁判が起こされ、「セクシャル・ハラスメント」はこの年の流行語大賞新語部門の金賞を受賞。これを機に、セクハラという言葉は広く社会に浸透しました。”
  33. ^ 牟田和恵「セクハラ問題から見るジェンダー平等への道 : 問題化の歴史を振りかえって」『法社会学』第82号〈ジェンダーと法の理論〉、日本法社会学会、2016年3月、113-114頁、doi:10.11387/jsl.2016.82_111。「〔1989年の福岡セクシュアルハラスメント事件の〕裁判は, 社会問題として広く取り上げられ, マスコミの注目を集めることになった.一方では, バラエティ番組で「色物」として扱われたり, アダルトビデオに「セクハラもの」が制作されたりするなど, 風俗的でセンセーショナル, 冗談・おふざけとして扱われるなどの事態も少なからず見られた.しかしそうした興味本位の扱われ方があったからこそと言わねばならないだろうが, あっという間に「セクハラ」という新奇ではあるが言いやすい短い略語が登場, いちやく流行語となって年末には流行語賞〔新語・流行語大賞〕を取ることとなった.これは, 裁判に関わった者も, もともとアメリカからの情報を得てセクシュアル・ハラスメント問題に関心を持っていた者も, 誰も予測できなかった事態だった.」 
  34. ^ 大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)情報ライブラリー (2018年11月27日). “日本初のセクハラ裁判である、福岡セクハラ裁判について書かれた資料が見たい。”. レファレンス協同データベース. 国立国会図書館. 2023年5月31日閲覧。
  35. ^ セクシュアルハラスメントに関する主な裁判例(第43回労働政策審議会雇用均等分科会資料)”. 厚生労働省ウェブサイト. 厚生労働省 (2005年4月8日). 2023年5月31日閲覧。 “1 福岡セクシュアルハラスメント事件(平成4年4月16日 福岡地裁判決/確定)” ※筆頭に福岡事件判決を挙げる。「第37回〔労働政策審議会〕雇用均等分科会提出資料抜粋及びその改訂」と註記あり。
  36. ^ 日本初のセクハラ裁判が教えてくれること≪後編≫ - 性暴力を考える”. NHK みんなでプラス. NHK (2022年3月25日). 2023年5月31日閲覧。 “判決文には、日本で初めてセクシュアルハラスメントの概念が明記され、重要な判例となりました。さらに…。(..) 会社にもセクハラに対応する責任がある。後の男女雇用機会均等法改正につながる画期的な判決でした。”
  37. ^ 市川清文(千葉第一法律事務所) (1989年). “アク「セク・ハラ」ハラ道中記”. Lawyer Ichikiyo's Home Page(弁護士市川清文のHOME BASE). 2023年5月31日閲覧。 “要はこういうことらしい。〔「セクハラ」で新語・流行語大賞〕金賞をあげてもおかしくない人はあちこちにいた。あの人でも良かったし、この人でもおかしくない。しかし、誰にあげてもカドがたつ。かならず不平不満が飛び出すだろう。それなら、いっそ…。/ かくして、何が何やら合点の行かぬまま、夢の中へとばかり、気がついたら表彰式会場がそこにあった。のである。” ※千葉県弁護士会会報『槇』平成元年度第2号初出。
  38. ^ 日本初の“セクハラ"裁判を振り返る【特集セクハラ(1)】 - 記事”. NHK ハートネット. NHK (2018年11月14日). 2023年5月31日閲覧。
  39. ^ 雇用の分野におけるセクシュアル・ハラスメント(3) セクハラ裁判事例紹介”. 京都府公式ホームページ. 京都府. 2023年5月31日閲覧。 “福岡Q企画出版社事件(福岡地判 1992年4月16日)/ わが国初のセクハラ裁判事件として有名であるが、89年8月5日に福岡地裁に提訴されて、2年8カ月後に原告全面勝訴の判決が出ている。”
  40. ^ 山本ぽてと(Yahoo!ニュース 特集編集部) (2018年2月28日). “「対等に働こうとしたからこそ疎まれた」 : 日本初のセクハラ裁判が変えたもの”. Yahoo!ニュース オリジナル 特集. Yahoo!ニュース. 2023年5月31日閲覧。 “1992年4月、福岡地裁で判決主文が読み上げられた。裁判所は判決理由の中で、編集長のほか、会社にも「適切な職場環境づくりが十分でなかった」と不法行為責任を認め、連帯して165万円を支払うように命じた。被告側は控訴を断念、一審で判決が確定した。”
  41. ^ 出口絢 (2018年6月17日). “日本初のセクハラ訴訟「原告A子」と呼ばれて…「声をあげる女性は間違っていない、そう伝えたい」”. 弁護士ドットコムニュース. 弁護士ドットコム株式会社. 2023年5月31日閲覧。
  42. ^ テレビ朝日〈土曜ワイド劇場〉『事件 2 : OLが見たホーム転落死の真相! もし貴女が男にからまれたら…』、1994年6月11日放送。「事件」シリーズの第2話にあたる。法廷ミステリー形式で、北大路欣也(弁護士役)、奈美悦子(被告人役)、伊武雅刀(検事役)、佐野量子(目撃した証人役)らが出演した。
  43. ^ 河本 泰政弁護士(こうもと法律事務所) - 岡山県岡山市”. 弁護士ドットコム. 弁護士ドットコム株式会社. 2023年5月31日閲覧。 “中学生の時、正当防衛を争う弁護士をモデルにした「事件」というドラマで(これは、西船橋駅ホーム転落死事件・千葉地判昭和62年9月17日をモデルにしていることは大学にいるときに知りました)、弁護士役をした北大路欣也がかっこよくて、” ※「河本泰政弁護士インタビュー」項参照。
  44. ^ [活動報告(2018)]麹町中学校3年生による模擬裁判員裁判「主体性育成裁判」”. 日本法育学会ウェブサイト. 日本法育学会 (2018年). 2023年5月31日閲覧。 “今年の題材は、『西町駅ホーム転落死事件』です。酔って被告人につきまとった被害者が、被告人に突き飛ばされ線路に転落し死亡したという、実際に西船橋駅で起きた事件をもとに脚本を作成しています。”
  45. ^ 大久保 輝「法律上の争いのある論点についての模擬裁判」『中央学院大学人間・自然論叢』第50巻、中央学院大学商学部・法学部・現代教養学部、2021年3月、75頁。「(10)2019年度あびこ祭「西町駅ホーム転落死事件」 

参考文献

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関連項目

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