衛武営国家芸術文化中心
衛武営国家芸術文化中心(えいぶえいこっかげいじゅつぶんかちゅうしん、繁体字中国語: 衛武營國家藝術文化中心、英語: National Kaohsiung Center for the Arts)、または衛武営国家芸術文化センターは台湾高雄市鳳山区の衛武営都会公園北東角にある舞台芸術用大型コンサートホールとその運営主体となる行政法人の名称。15年の歳月と107.5億ニュー台湾ドルを投じた[1][2]、台湾最大規模の文化インフラ事業であり[3]、台北市の国家両庁院(1987年)、台中市の台中国家歌劇院(2016年)に次いで3つ目の、台湾南部では初の国立ホールとなる。このホールは中華民国文化部衛武営芸術中心準備処が整備を進め、開館直前に同部傘下の行政法人国家表演芸術中心の運営へ移管された。
衛武営国家芸術文化中心 National Kaohsiung Center of the Arts | |
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衛武営国家芸術文化中心外観 | |
役職 | |
芸術総監 | 簡文彬 |
組織 | |
上部組織 | 行政法人国家表演芸術中心 |
概要 | |
設置 | 2007年9月1日 |
改称 | 2018年9月10日 |
前身 |
衛武営芸術文化中心準備処 台湾 高雄市鳳山区南京路449之1号 (https://www.wac.gov.tw/) |
ウェブサイト | |
http://www.npac-weiwuying.org/ | |
下記#組織機構を参照。 |
衛武営国家芸術文化中心 | |
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各種表記 | |
繁体字: | 衛武營國家藝術文化中心 |
簡体字: | 卫武营国家艺术文化中心 |
拼音: | Wèiwǔyíng Guójiā Yìshù Wénhuà Zhōngxīn |
通用拼音: | Wèiwǔyíng Guójiā Yìshù Wunhuà jhōngsīn |
注音符号: | ㄨㄟˋ ㄨˇ ㄧㄥˊ ㄍㄨㄛˊ ㄐㄧㄚㄧˋ ㄕㄨˋㄨㄣˊ ㄏㄨㄚˋㄓㄨㄥ ㄒㄧㄣ |
ラテン字: | Wei wu ying Kuo chia I shu Wen hua Chung hsin |
発音: | ウェイウーイン グゥオジャー イーシュ ウェンファ ヂョンシン |
台湾語白話字: | Ōe-bú-iâⁿ Kok-ka Gē-su̍t Bûn-hoà Tiong-sim |
日本語漢音読み: | えいぶえい こっか げいじゅつ ぶんか ちゅうしん |
日本語慣用読み: | えいぶえい こっか げいじゅつ ぶんか センター |
英文: | National Kaohsiung Center for the Arts |
概要
編集衛武営は元々は1950年代に中華民国陸軍が台湾南部高雄県鳳山市内(現・高雄市鳳山区)で使用していた軍営地であり、日本統治時代は軍用倉庫だった[4]。1979年以降は軍事用途での使用を終えて運営組織も移転していた[5]。
2002年に高雄県政府により公園用地としての転用が計画され[6]、翌年に正式決定される。都市公園、アートセンターと商業施設を三位一体で再開発するプロジェクトで、アートセンターは陳水扁政権下で行政院の公共事業政策「新十大建設」の一つに組み込まれた[7]。総面積66.6ヘクタールのうちアートセンターと商業施設で各10ヘクタール、残りが衛武営都会公園となる。
設計はオランダのデルフトを拠点とする建築事務所メカノー(Mecanoo architecten)に所属するオランダ人建築家のフランシーン・フーベン(Francine Houben)が手がけ[8]、デザインは外観(断面)、内部ともガジュマルをモチーフにしている[9]。
施工は台湾の建国工程公司、中興電工公司、世益機電公司が担当した[10]。
沿革
編集- 2005年11月24日 - 行政院が事業計画を承認、2009年までに建設着手を予定していた。
- 2007年
- 2010年4月7日 - 衛武営芸術文化中心正式起工[12]。
- 2012年2月1日 - 行政院、2014年12月までの延期に同意。
- 2013年5月22日 - 林佳龍ら複数の立法委員が「国家表演芸術中心設置条例」法案を提出、北部、中部、南部にそれぞれ国立ホール整備を要求[14]。
- 2014年1月13日 - 行政院、竣工を2015年5月、開業を10月に延期することを承認。
- 2015年
- 5月4日 - 行政院、2016年4月プレ開業への延期承認。(ただし完工に至らず)
- 2017年
- 2018年
建設中の文化中心(2012年) | 建設現場を視察する 行政院長の張善政(2016年3月) |
衛武営都会公園の案内図 | 開幕式典 |
受賞
編集建築仕様
編集衛武営国家芸術文化中心 National Kaohsiung Center for the Arts, Weiwuying | |
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情報 | |
通称 | 衛武営芸術文化中心、衛武営文化センター、衛武営アートセンター |
正式名称 | 衛武營國家藝術文化中心 |
完成 | 2017年10月31日 |
開館 | 2018年10月13日 |
開館公演 | (音楽会)揭幕-璀璨閃耀[28] |
客席数 |
[1]5,860席 歌劇院:2,236席 戯劇院:1,209席 音楽庁:1,981席 表演庁:434席 (+野外劇場:約1,000人) |
延床面積 |
([29]46,102坪) 152,400m² |
用途 | 劇場 |
設計 | フランシーン・フーベン |
運営 | 行政法人 衛武営国家芸術文化中心 |
所在地 | 台湾高雄市鳳山区三多一路1号 |
位置 | 北緯22度37分24秒 東経120度20分34秒 / 北緯22.62333度 東経120.34278度座標: 北緯22度37分24秒 東経120度20分34秒 / 北緯22.62333度 東経120.34278度 |
アクセス | 高雄捷運衛武営駅 |
2,236席のオペラハウス、1,981席のコンサートホール、1,209席の劇場、434席の舞台芸術場の4つの室内ホールと南側の衛武営都会公園の中央草坪と呼ばれる芝生エリアと繋がっている3万人収容可能な野外ホールで構成されている。建設には100万工数を要し、杭基礎は長さ30-40メートルで台北101の倍以上となる789本、コンクリート使用量は13万立方メートル、土砂の開削量はオリンピックサイズ・プール230個分、そのうち地下室は52万立方メートルとなる。鉄骨はパリ・エッフェル塔の3本分に相当する21,000トンが使用され、独特の設計により鉄骨の組立難度は中国・北京の鳥の巣を超えるとされている[30][29]。 歌劇院と戯劇院の舞台設備はオーストリアの舞台設備業ワーグナー・ビロ(Waagner Biro AG)が担当した[31]。
建造中の屋根(2012年) | |
建設中の文化中心(2016年) | メカノーのデザイン図面 |
北側は三多一路、東側は国泰路二段、西側と南側は衛武営都会公園に面している。
屋根
編集総表面積31,000平方メートルで、衛武営専用に設計され10キロパスパルの耐風圧性能で4.4キロパスカル、17級(日本で『猛烈な台風』とされる風速54メートル[32])の大型台風の2.5倍の安全係数を確保している。屋根は4,600枚のパーツで構成され、個別にシリアルナンバーが割り振られている。防音性能は空気音で40デシベル、降雨時の雨滴衝撃は37デシベルに抑制。一体成型された3D屋根板は工場で製造後に台湾へ空輸され現地で換装された。
断面はガジュマルの森林をモチーフに、内部も木々に内包された空間をイメージしている。屋根は不規則な曲面で大海原[33][34]、あるいはシロエイ[35]をイメージしている。
榕樹廣場
編集各ホールを連結する廊下の役割も果たし、総面積23,000平方メートルに達するガジュマル広場(榕樹廣場)は世界最大級の一枚構造空間で不規則な曲面を描いている。地場産業でもあった造船技術を活用し、大型船の航海を表現している。ユニットごとに1.2-2.4トンにもなる21区画、1,117本のパーツが搬入された。照明などの備品を吊り下げるハンガーは屋根板と直結され、地震エネルギー、熱変形、強風を吸収する設計[29]。天板はあえて溶接箇所を残すことで、造船、甲板をイメージさせている[35]。
音響設計
編集遮音ドアの防火性能は台湾で唯一国内の安全基準であるCNS規格を通過している。戯劇院の遮音ドアは高さ11メートル、幅4メートルで劇場向けとしては世界最大級[29]。
歌劇院
編集建屋中央に位置する。2,260席の一般席のほか、オーケストラピット(楽池席)と呼ばれる舞台にもなる可動式座席が1階に110席、バリアフリー席が28席(障害者と同伴人用が14席ずつ)の計2,236席(1階698席、2階542席、3階534席、4階462席)[36]。オペラなどに適した暗紅色系の装飾となっている[29]。
戯劇院
編集建屋西側に位置する。一般席952席、オーケストラピット(楽池席)164席、文武場席[註 1]48席、バリアフリー席26席などの計1,210席(1階382席、2階557席、3階271席)[37](※施工事業者の表記では1254席[29])。
音楽庁
編集建屋南東角に位置する。一般席1,763席(1階272席、2階915席、バリアフリー28席)、合唱席(6席)が舞台を取り囲むように配されている[38]。 コンサートホールには台湾のみならずアジア最大となるパイプ数9,085本のシンフォニック・オルガン(パイプオルガン)が設置されていて、パイプの造形も竹林をイメージさせたものに仕上がっている[39]。パイプオルガンの製作はドイツのヨハネス・クライス・オルガン工房(Johannes Klais Orgelbau GmbH & Co. KG)が担当している[40][41][9]。天井の可動式反響板は高さ17.8、14、9メートルの3段階で調整が可能で、クラシックコンサート以外の様々な演目にも対応可能[35]。
表演庁
編集建屋北東角に位置する。一般席405席、ボックス席(包廂席、2階左手)15席、バリアフリー席12席の計434席(1階221席、2階213席)[42](※施工事業者の表記では470席[29])。
野外劇場
編集正式名称は「露天階梯舞台」。曲面屋根から連続した勾配をそのまま利用し、野外ホールの客席に仕上げている。1,000人規模の集客に対応[35]。
榕樹廣場 | モチーフとなったガジュマルの木々 | 樹冠ホールのサービスセンター |
音楽庁の竹林風パイプオルガン | 野外劇場 | 駐車場と入口 |
組織機構
編集組織沿革
編集- 2006年3月15日 - 行政院文化建設委員会が「衛武営芸術文化中心準備処(タスクチーム)設立[12]。
- 2007年9月1日 - 「衛武営芸術文化中心準備処暫行組織規程」(8月30日公布)に基づき、文建会傘下に正式な部署「衛武営芸術文化中心準備処(繁体字中国語: 衛武營藝術文化中心籌備處)」発足。
- 2012年5月 - 文建会が「文化部」に昇格、準備処は文化部の四級機構となる。
- 2014年
- 2015年
- 1月1日 - 国家表演芸術中心傘下に衛武営運営推進小組(作業部会)が発足、簡文彬が議長に就任。
- 2018年
歴代首長
編集- 文化部衛武営芸術文化中心準備処主任
代 | 姓名 | 就任時期 | 退任時期 | 備考 |
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1 | 林朝號 | 2007年9月 | 2011年12月 | |
朱俊德 | 2011年12月 | 2012年4月 | 副主任代理 | |
2 | 陳善報 | 2012年4月 | 2014年1月 | |
3 | 盧本善 | 2014年1月 | 2018年9月10日 | 正式移交 |
- 国家表演芸術中心衛武営運営推進作業部会議長(國家表演藝術中心衛武營營運推動小組召集人)
代 | 姓名 | 就任時期 | 退任時期 | 備考 |
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1 | 簡文彬 | 2015年1月 | 現任 | 国家芸術文化中心正式成立前の運営計画策定など。芸術総監に任命されていた簡が召集人を兼任。 |
- 衛武営国家芸術文化中心芸術総監(アートディレクター)
代 | 姓名 | 就任時期 | 退任時期 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 簡文彬 | 2018年9月10日 |
交通
編集脚注
編集註釈
編集出典
編集- ^ a b 衛武營國家藝術文化中心興建計畫推動情形2018-06-28,行政院
- ^ 衛武営国家芸術文化センターが10月グランドオープン、アジアの文化的拠点へ2018-09-06,Taiwan Today
- ^ 衛武營藝文中心 共創南台灣雙贏2016-09-11,中時電子報
- ^ 旧軍用地に芸術施設誕生 蔡総統「空間の民主化」/台湾・高雄2018-10-13,フォーカス台湾
- ^ 衛武營都會公園 - 營區基地
- ^ 變更鳳山市主要計畫(部分公園用地為社教機構用地)(配合衛武營藝術文化中心興建計畫)”. 高雄市政府都市發展局. 2018年9月2日閲覧。 高雄縣政府 (2009年10月). “
- ^ 港都向前行之二 気をつけ、敬礼 軍営から芸術文化センターに―衛武営 2012年10月,高雄市政府経済発展局
- ^ 《當紅流派》行銷地景,荷建築首來台2007-03-24,樂多日誌
- ^ a b c 衛武営国家芸術文化センターにアジア最大級のパイプオルガン2018-03-16,Taiwan Today
- ^ 衛武營藝文中心工程延宕 馬英九:值得檢討2016-04-17,風傳媒
- ^ National Kaohsiung Performing Arts Center International Competition Council for Cultural Affairs2008-09,competitions.org
- ^ a b c 衛武營藝術文化中心籌備處 > 關於衛武營 > 衛武營大事紀
- ^ 經建會:衛武營藝術文化中心估2012年完工2007-02-05,大紀元
- ^ 臺中大都會歌劇院躍升為國家表演藝術中心2013-05-22,臺中市政府新聞局
- ^ “衛武營國家藝術文化中心 明年起點亮園區 - 生活 - 自由時報電子報” 2016年12月22日閲覧。
- ^ “〈南部〉衛武營景觀區 元旦起全面開放 - 地方 - 自由時報電子報” 2016年12月22日閲覧。
- ^ 衛武營捷運站6號出入口今啟用 直通園區2017-11-11,自由時報
- ^ 亞洲最大劇院3D光雕秀 衛武營震撼登場2017-11-21,聯合報
- ^ 高雄市立國樂團首登衛武營 兩千人搶先體驗音樂饗宴2018-09-08,自由時報
- ^ 衛武営国家芸術文化センター、ついにグランドオープン2018-10-15,台北駐日経済文化代表処
- ^ “遠看像太空船、近看像魟魚!高雄豪華歌劇院明10月啟用” 2017年6月20日閲覧。
- ^ National Kaohsiung Center for the Arts2017-07,a963.com
- ^ The 8th Idea-Tops Competition Announces Winners For 20172018-01-15,World Architecture Community
- ^ 衛武營建築榮獲Taiwan Design Best 100年度建築及空間規劃獎”. 自由時報 (2018年12月20日). 2019年7月14日閲覧。 “
- ^ Winners”. Architizer A+ Awards. 2019年7月14日閲覧。 “
- ^ 7th Annual Architizer A+Awards Honorees”. Architizer A+ Awards. 2019年7月14日閲覧。 “
- ^ 高雄得三獎:衛武營國家藝術文化中心榮獲A+Awards建築獎”. 典蔵 ARTouch (2019年7月12日). 2019年7月14日閲覧。 “
- ^ 衛武營10/13開幕 音樂會+戶外藝術派對雙開幕迎賓2018-06-04,自由時報
- ^ a b c d e f g 集團事業>工程事業>卓越實績>公共工程>衛武營藝術文化中心新建工程-2016 建國工程股份有限公司
- ^ CK Group > Construction > Business Achievements > Wei wu ying center for the arts, new construction-2016建國工程股份有限公司
- ^ National Kaohsiung Performing Arts Center - Reference - Stage Systems - Divisions Waagner-Biro AG
- ^ 颱風分級標準2013-09-25,台灣颱風資訊中心
- ^ 衛武營公共藝術設置 蔚龍藝術有限公司
- ^ 臺灣衛武營藝術文化中心 BIM工程規劃運用及深化”. 臺灣建築學會. 2018年9月23日閲覧。 臺灣建築學會會刊雜誌第74期 李孟崇 (2014年4月20日). “
- ^ a b c d 衛武營藝文中心 下月迎客2018-09-11,人間福報
- ^ 歌劇院 衛武営国家芸術文化中心公式
- ^ 戯劇院 衛武営国家芸術文化中心公式
- ^ 音樂廳 衛武営国家芸術文化中心公式
- ^ Kaohsiung/TWN, National Kaohsiung Center for the Arts Asia's largest Cultural Center houses largest Klais organ to date Orgelbau Klais Bonn
- ^ 衛武營買管風琴 文化部砸1.2億/立委轟錢太多2012-10-19,自由時報
- ^ Wei-Wu-Ying Center for the Arts in southern Taiwan shows off grandest pipe organ in Asia2018-03-14,Taiwan News 台灣英字新聞
- ^ 表演廳 衛武営国家芸術文化中心公式
- ^ 「国家舞台芸術センター」が7日に発足2014-04-08,Taiwan Today
- ^ “衛武營藝文中心籌備處今卸牌 國表藝接手營運十月開幕” 非池中藝術網 (2018年8月31日).
- 衛武營藝術文化中心新建工程環境影響說明書,2009年7月
関連項目
編集外部リンク
編集- 中華民国文化部
- 衛武營國家藝術文化中心
- 衛武營ing紀錄片部落格影片 - YouTubeチャンネル
- 衛武營藝術文化中心籌備處 - ウェイバックマシン(2017年7月25日アーカイブ分)
- 他
- National Kaohsiung Center for the Arts mecanoo architecten
- 衛武営文化芸術センター 高雄市政府観光局
- 衛武営国家芸術文化センター(高雄市)2018-07-30,台北ナビ