サーバ型放送
サーバ型放送(サーバがたほうそう)とは、デジタル放送において放送・通信回線で配信された番組と連動コンテンツ・メタデータを 受信端末(ホームサーバ)の記録装置に蓄積し、それらを用いて実現することができる高度な視聴サービス。 蓄積型放送とも呼ばれる。
概要
編集次世代デジタル放送システムの国際標準仕様の策定を目的としたTV Anytime Forumに、日本も参加するために行われた総務省の答申『「大容量蓄積機能を活用するデジタル放送方式に関する技術条件」に対する答申』(総務省情報通信審議会諮問第2003号 2002年9月30日)によって発案され、NHK・民放・家電メーカーによって組織された任意団体「サーバー型放送運用規定作成プロジェクト」によって2006年に日本国内で規格が策定された。
日本国内では、「ARIB STD-B38 サーバー型放送における符号化、伝送及び蓄積制御方式」(2003年2月6日策定 社団法人電波産業会)・「ARIB TR-B27 サーバー型放送技術資料」(2006年9月28日策定 社団法人電波産業会)が標準規格として定められている。
主な機能
編集- ダイジェスト視聴
- メタデータを使い、端末に蓄積された番組の中から見たいシーンのみを再生する。例えば、スポーツ中継ではハイライトシーンのみを再生することができる。
- マルチシナリオ視聴
- 端末に蓄積された放送番組と、連動コンテンツを組み合わせるもの。例えば、学校教育番組で化学実験を放送し、番組テキストや実験器具の使用法をデータ放送・通信回線で配信するなどができる。
- 番組リクエスト視聴
- 通信回線を使って過去に放送・配信した番組や、見逃した番組を視聴することができる。いわゆるビデオ・オン・デマンド。
- 番組自動録画
- 番組名・出演者・視聴履歴などのメタデータを使って、視聴者の嗜好にあった番組を自動録画する。
- 課金機能
- 視聴時に課金するペイ・パー・ビューや、DVDに記録する際に課金することができる。
- 視聴制御
世界での展開
編集日本
編集2002年7月に世界で初めて、通信衛星を使用したCS放送プラットワンの055・056chにて、蓄積型双方向放送サービス「ep」の名称で放送開始。しかし魅力のあるコンテンツが少なく、また受信端末「epステーション」が高価で使い勝手が悪く、パソコン・ブロードバンド回線・ハードディスクレコーダーが急速に普及したことによって利用者が伸び悩み、2004年4月にサービス終了。 epはサービス終了後の2007年10月に、CSデジタルテレビジョン放送「ショップチャンネル」(スカパー!220ch)に転換した。
2004年8月から9月にかけて、サーバ型放送の本格的な実用化に向けて、サンテレビの地上デジタルテレビジョン放送にて視聴制御・課金の実証実験が実施された[1]。
日本放送協会(NHK)・WOWOWは、2005年度中に放送衛星を使ったサーバ型放送サービスを開始する予定であった[2]が、周波数の割り当てを受けられる可能性が低くなったため、両社ともにブロードバンド回線を利用したビデオ・オン・デマンドサービス(NHKオンデマンド、WOWOW動画・WOWOWプレミアム オンデマンド)に転換した[3]。
また2012年4月にサービスを開始したNOTTVではマルチメディア放送の規格ISDB-Tmmを使用し、「プッシュキャスト」と呼ばれる蓄積型放送機能を搭載していたものの、こちらも伸び悩み2016年6月でサービスを終了している。
アメリカ
編集マルチメディア放送規格MediaFLOにおいて、2007年より「Clipcasting」の名称で一部地域でサービスが開始された。
脚注
編集- ^ 全国独立UHF放送協議会・KDDI株式会社・三菱商事株式会社・株式会社デジタル インタラクテイブ ダイナミクス・近畿総合通信局 (2004年9月6日). “ニュースリリース「サーバー型 (受信機蓄積型) 放送の実証」”. KDDI 会社情報. KDDI株式会社. 2009年7月10日閲覧。
- ^ 「WOWOW・NHK、『蓄積型放送』来年度にも開始」日本経済新聞 2004年6月5日
- ^ 吉野次郎(日経ニューメディア編集部) (2006年5月25日). “WOWOWがブロードバンドで2007年度にサーバー型放送,BS放送では断念”. ITpro. 株式会社日経BP社. 2009年7月10日閲覧。
参考文献
編集- 今井淳一・岩瀬玲次・伊東毅 (2003年). “サーバー型放送の最新動向” (PDF). PIONEER R&D VOL.13 NO.1. パイオニア株式会社. pp. 24-33ページ. 2009年7月10日閲覧。
- 西正 (2004年10月8日). “サーバ型放送~異なるNHKと地上波民放の思惑(前編)”. ITmediaアンカーデスク. アイティメディア株式会社. 2009年7月10日閲覧。
- 田中 正晴(日経エレクトロニクス編集部) (2006年2月9日). “放送と通信の融合ってこんなこと”. Tech-On! - 日経エレクトロニクス雑誌ブログ. 株式会社日経BP社. 2009年7月10日閲覧。
- 金子寛人(日経WinPC編集部) (2008年12月11日). “サーバー型放送、二次利用許諾――関本好則氏が語る「NHKオンデマンド」の内幕”. ITpro. 株式会社日経BP社. 2009年7月10日閲覧。