菱鉄鉱(りょうてっこう、siderite[4])は、鉱物炭酸塩鉱物)の一種。化学組成は FeCO3炭酸鉄(II))、結晶系三方晶系方解石グループの鉱物。

菱鉄鉱
石英を伴う菱鉄鉱
石英を伴う菱鉄鉱(ブラジル産)
分類 炭酸塩鉱物
シュツルンツ分類 5.AB.05
Dana Classification 14.1.1.3
化学式 FeCO3
結晶系 三方晶系
単位格子 a = 4.6916Å、
c = 15.3796Å
へき開 三方向に完全
モース硬度 4
光沢 ガラス光沢
黄褐色
条痕 白色
比重 4.0
光学性 一軸性
屈折率 nω = 1.875、
nε = 1.633
複屈折 δ = 0.242
蛍光 なし
文献 [1][2][3]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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Siderite は、ギリシャ語で「」を意味する σίδηρος( sídēros) に由来する。

産出地

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金属鉱床酸化帯火山岩の隙間、堆積鉄鉱床などに見られる。

熱水鉱脈で続成作用により形成されやすい[5]。泥鉄鉱は、石炭層と共に産する菱鉄鉱を主成分として団塊などの形で産する[6]

熱水鉱床で生成されると露天掘りには不向きな形成のされ方となり[7]、他の堆積によって形成された鉄鉱石(縞状鉄鉱床)や赤鉄鉱に比べて連続的に形成されるわけではないため採算が良くない。石炭と一緒に産する場合は、コークス高炉の技術が確立されると、石炭と一緒に原料として放り込めるため使用されるようになった[8]

性質・特徴

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菱面体英語版結晶状集合、皮膜状などの形態で産する。結晶は方解石などと同様に菱面体だが、結晶面湾曲するのが特徴。

菱マンガン鉱菱苦土鉱と連続して固溶体を形成する。

冷時希塩酸には少しずつ、温時容易に溶ける。

用途・加工法

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多く産出するドイツなどでは鉄資源として用いられることもあり、精錬も容易であることから、人類が初めて精錬した鉄鉱石は菱鉄鉱だったのではないかという説がある[9]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ 国立天文台編『理科年表 平成20年』丸善、2007年、641頁。ISBN 978-4-621-07902-7 
  2. ^ Siderite (英語), MinDat.org, 2011年11月10日閲覧 (英語)
  3. ^ Siderite (英語), WebMineral.com, 2011年11月10日閲覧 (英語)
  4. ^ 文部省編『学術用語集 地学編日本学術振興会、1984年、114頁。ISBN 4-8181-8401-2http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 
  5. ^ Garwood, Russell; Dunlop, Jason A.; Sutton, Mark D. (2009-12-23). “High-fidelity X-ray micro-tomography reconstruction of siderite-hosted Carboniferous arachnids” (英語). Biology Letters 5 (6): 841–844. doi:10.1098/rsbl.2009.0464. ISSN 1744-9561. PMC 2828000. PMID 19656861. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2009.0464. 
  6. ^ 泥鉄鉱https://kotobank.jp/word/%E6%B3%A5%E9%89%84%E9%89%B1 
  7. ^ Jones, M. H. (2011). The Brendon Hills Iron Mines and the West Somerset Mineral Railway. Lightmoor Press. pp. 17–22. ISBN 9781899889-5-3-2. p.34‐37
  8. ^ 鉄づくりのDNA 季刊 新日鉄住金Vol.18 サイト:日本製鉄
  9. ^ 山川倫央. “菱鉄鉱  Siderite”. 鉱物たちの庭. 2011年11月10日閲覧。[リンク切れ]

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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