自動惑星検出望遠鏡[1] (じどうわくせいけんしゅつぼうえんきょう、: Automated Planet Finder Telescope, APF) は、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼの東にあるリック天文台に設置された、2.4 m 口径の全自動光学望遠鏡である[2]。別名は Rocky Planet Finder[3]

自動惑星検出望遠鏡
APF のドーム。背後にあるのはカーネギー 0.5 m 双眼屈折望遠鏡。 地図
設置場所 アメリカ合衆国カリフォルニア州
座標 北緯37度20分33秒 西経121度38分17秒 / 北緯37.34250度 西経121.63806度 / 37.34250; -121.63806
標高 1,280 m
観測波長 可視光
観測開始年 2013年
形式 リモートテレスコープ, 光学望遠鏡 ウィキデータを編集
口径 2.4 m
ウェブサイト Automated Planet Finder Telescope
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概要

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APF は、地球の5倍から20倍の質量を持つ太陽系外惑星の検出を目的として設計された。この装置を用いて、1晩におよそ10個の恒星を観測する。10年間かけて、系外惑星探査のために 1,000 個の太陽系近傍の恒星を観測することが予定されている[4]。推定費用は1000万ドルであり[5]、APF のプロジェクトの総費用は1237万ドルである[2]ファーストライトは当初は2006年を予定していたが、望遠鏡の主要部分の建設が遅れたため2013年8月にずれ込んだ[3][6]

APF は高精度の視線速度の測定を行い、惑星が恒星の周りを公転することによる恒星のふらつきをドップラー分光法で検出する。設計目標は最小で秒速 1 m の恒星の動きを検出することであり、これはゆっくりと歩く程度の速度に相当する。主要な観測対象は地球からおよそ100光年以内にある恒星である[3]

初期の試験では、Ken and Gloria Levy Doppler Spectrometer の性能が設計目標を満たしていることが示された。この分光計は高い処理能力を持ち、秒速 1 m の設計感度を満たしている[3]。この視線速度の測定精度は、HARPSHIRESのものと近い。

レビー分光器

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レビー分光器 (Levy spectrometer)はAPF2.4m望遠鏡のナスミス焦点に設置されている専用のエシェル分光器である。観測波長は374-970ナノメートルの可視光域で、波長分解能は最大R=150,000を発揮する。高精度視線速度測定に最適化して設計されており、3か月間にわたる標準星の試験観測では視線速度の二乗平均平方根で1m/sより優れた精度を実証した[2]

レビー分光器の設計はマゼラン望遠鏡で使用されているPFS分光器 (Planet Finder Spectrometer) をベースとしている。PFSの設計はPFS以前にマゼラン望遠鏡で使用されていたMIKE (Magellan Inamori Kyocera Echelle) 分光器にまで遡ることができる[2]


APFが発見した惑星

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APF を用いた観測で発見された初めての系外惑星は、HD 141399 の周りに2014年に発見された4つの惑星 (HD 141399 bcde) である[7]。この発見には APF での観測の他に HIRES での観測データも用いられている。また、リック=カーネギー系外惑星サーベイ英語版の一環として行われた観測でも APF による観測データが用いられ、グリーゼ687を公転するグリーゼ687bが発見されている[8]

ブレイクスルー・リッスンとの協力

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この望遠鏡は、地球外文明からのレーザー伝送による光信号を探査するためにも使用される。これは地球外知的生命体探査 (SETI) の一環である。この研究は、カリフォルニア大学バークレー校にある SETI 研究センターに対するブレイクスルー・リッスンの多額の資金援助による事業である[9][1]

出典

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  1. ^ a b 1億ドルのBreakthrough Listen Initiative、宇宙の知的生命体に対する史上空前の探査のデータを公開 - CNET Japan”. CNET Japan (2016年4月13日). 2019年2月22日閲覧。
  2. ^ a b c d Vogt, Steven S.; Radovan, Matthew; Kibrick, Robert; Butler, R. Paul; Alcott, Barry; Allen, Steve; Arriagada, Pamela; Bolte, Mike et al. (2014). “APF—The Lick Observatory Automated Planet Finder”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 126 (938): 359–379. arXiv:1402.6684. Bibcode2014PASP..126..359V. doi:10.1086/676120. ISSN 00046280. 
  3. ^ a b c d Rocky Planet Search at Lick Observatory”. California Planet Search. 2019年2月22日閲覧。
  4. ^ Major gift supports crucial piece of Automated Planet Finder”. University of California, Santa Cruz. 2008年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月13日閲覧。
  5. ^ David Perlman (2010年8月21日). “Automated Planet Finder telescope seeks life - SFGate”. SFGate. 2019年2月22日閲覧。
  6. ^ Mt. Hamilton Telescopes: Carnegie Double Astrograph”. Telescopes of the Lick Observatory. University of California Observatories. 2019年2月22日閲覧。
  7. ^ Vogt, Steven S.; Butler, R. Paul; Rivera, Eugenio J.; Kibrick, Robert; Burt, Jennifer; Hanson, Russell; Meschiari, Stefano; Henry, Gregory W. et al. (2014). “A FOUR-PLANET SYSTEM ORBITING THE K0V STAR HD 141399”. The Astrophysical Journal 787 (2): 97. arXiv:1404.7462. Bibcode2014ApJ...787...97V. doi:10.1088/0004-637X/787/2/97. ISSN 0004-637X. 
  8. ^ Burt, Jennifer; Vogt, Steven S.; Butler, R. Paul; Hanson, Russell; Meschiari, Stefano; Rivera, Eugenio J.; Henry, Gregory W.; Laughlin, Gregory (2014). “THE LICK-CARNEGIE EXOPLANET SURVEY: GLIESE 687 b—A NEPTUNE-MASS PLANET ORBITING A NEARBY RED DWARF”. The Astrophysical Journal 789 (2): 114. arXiv:1405.2929. Bibcode2014ApJ...789..114B. doi:10.1088/0004-637X/789/2/114. ISSN 0004-637X. 
  9. ^ Sarah Zhang (2015年7月20日). “A Russian Tycoon Is Spending $100 Million to Hunt for Aliens | WIRED”. WIRED. 2019年2月22日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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