聖マタイの召命』(せいマタイのしょうめい)は、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョによって1599年から1600年にかけて製作された絵画。ローマのフランス人管轄教会サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会内のコントレー聖堂に掲げられている。カラヴァッジョにとっては公的な場でのデビュー作、且つ出世作であり、美術史上ではバロック美術への扉を開いた記念碑的作品である。

『聖マタイの召命』
Vocazione di san Matteo
作者ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
製作年1599年 - 1600年
種類油彩カンヴァス
寸法322 cm × 340 cm (127 in × 130 in)
所蔵サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会[1]ローマ

概要

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カラヴァッジョに製作を依頼したのはフランス人のマテュー・コンテレー(Matteu Contreil)枢機卿であり、依頼者の名前の聖人である使徒マタイの故事を題材にした絵画が描かれることになった。当初カラヴァッジョ以外の別の画家が製作を行う予定になっていたが、当人が多忙を理由に断ったためカラヴァッジョが引き受けることになった。本作品は『聖マタイの殉教』および『聖マタイの霊感』との連作であり、『聖マタイの殉教』とは対をなす作品になっている。公開された両作品は大評判となり、一目見ようと人々が教会に殺到した。

誰がマタイか

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本作は『マタイによる福音書』9章9節にある、イエスが収税所で働いていたマタイに声をかけ、マタイがイエスの呼びかけに応じて付いて行ったというマタイの召命の記事をもとに描かれている[2]

長らく中央の自らを指差す髭の男がマタイであると思われていた。しかし、画面左端で俯く若者がマタイではないか、という意見が1980年代から出始め、主にドイツで論争になった。未だにイタリアでは真ん中の髭の男がマタイであるとする認識が一般的である。

しかし、マタイが徴税人であることを表現するのであれば、金を触っているのがマタイであると考えるのが自然であり、左端の若者は顔を金に近づけて右手でその金を数えている。他方、髭の男は人差し指を水平にして画面左を指差しており、カラヴァッジョ作品では人差し指は第三者を指す場合に用いる事、更に言えばイエスの人差し指は先が下がっており、その延長線には若者がいる事、イエスの手前にいるペテロと思われる男の人差し指も下がっている事、以上の事から左端の若者こそが聖マタイであると考えられる。

他の人物が普段の表情をしている中で、若者だけは光があたらずに悲嘆に沈んでいる。画面の中では、マタイはキリストと目を合わせないようにしているが、次の瞬間使命に目覚めて立ち上がり、あっけに取られた周囲の人を背に颯爽と立ち去る、そのクライマックス直前の緊迫した様子を捉えているのである。

構図

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本作のもっとも大きな特徴は光と影の大きなコントラストである。窓から射し込む光に照らし出された人物が立体的に描かれるとともに、画面に奥行きがでて、劇的なシーンを描くことに成功している。光で浮かび上がった窓枠には十字があり、神の計らいを象徴している。

本作もカラヴァッジョの他の作品と同様に、登場人物がキリストの時代の風俗ではなく製作された時代の装束を着て、一見風俗画に見えることにも特徴がある。

脚注

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  1. ^ 『一枚の繪』2017年10月号、一枚の繪株式会社、 8頁。
  2. ^ 『一個人』 2018, p. 64.

参考文献

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外部リンク

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