羊乳(ようにゅう、Sheep's milk、または、ewe's milk)とは、ヒツジが分泌する乳汁のことである。

採取

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フランスのアヴェロン県の回転式搾乳機。
 
ニュージーランド南島の羊の機械式搾乳機。

羊乳は、主に飼育されている家畜化されたヒツジから搾乳して得ている。搾乳を目的として飼育されているヒツジは少ないが、人為選択によって一般的なヒツジよりも多くの乳汁を出す品種が見い出されてきた。例えば、アワシ種英語版イーストフリーシアン種英語版サルダ種英語版ラコーヌ種英語版などが知られている。なお、羊乳を搾乳するための機械も各地で開発されてきた。

用途

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本来、羊乳はヒツジが子供を育てるために使用するものだが、ヒトは食糧の1つとして利用している。ヒトによる羊乳の用途としては、そのままヒトによって飲用されるより、むしろ主に乳製品の原料として用いられる。特に羊乳を用いたチーズは各地で製造されており、例えば、ギリシャのフェタチーズ、フランスのロックフォール、スペインのケソ・マンチェゴ、イタリアのペコリーノ・ロマーノペコリーノ・サルドリコッタ[注釈 1]、マルタのジュベイナなどがある。ヒツジから得られる羊乳は、ウシから得られる牛乳と比べると、1頭当たりから搾乳できる乳汁の量は少ないものの、一般に牛乳よりも乳脂肪乳固形分ミネラル分が豊富であり、チーズの製造に適しているためである。この他に羊乳を用いた乳製品としては、ギリシャヨーグルトなどもある。

栄養価の比較

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乳汁の栄養価は個体差(品種差)や摂取している食物や体調などによる変動もあって一定ではない。したがって、あくまで参考値であるものの、以下に牛乳山羊乳水牛乳、羊乳の、それぞれ100 ml当たりの栄養価を示す[1][リンク切れ]

成分 単位 牛乳 山羊乳 水牛乳 羊乳
g 87.8 88.9 81.1 83.0
タンパク質 g 3.2 3.1 4.5 5.4
脂肪 g 3.9 3.5 8.0 6.0
炭水化物 g 4.8 4.4 4.9 5.1
エネルギー kcal 66 60 110 95
kJ 275 253 463 396
糖 (ラクトース) g 4.8 4.4 5.1 4.9
飽和 g 2.4 2.3 4.2 3.8
一価不飽和 g 1.1 0.8 1.7 1.5
多価不飽和 g 0.1 0.1 0.2 0.3
コレステロール mg 14 10 8 11
カルシウム IU 120 100 195 170
脂肪酸:

利用

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チーズ

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ヨーグルト・発酵乳

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シリアでは羊乳を加工し、飲むヨーグルトの「ラバン」や濃縮された「ラブネー」が[2]イスラエルでは発酵乳の「レベン」や濃縮発酵乳の「レベニー」が作られている[3]

注釈

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  1. ^ ただし、リコッタは必ずしも羊乳が原料とされるとは限らない。他の動物の乳汁が原料とされることもある。

出典

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  1. ^ McCane, Widdowson, Scherz, Kloos
  2. ^ 柏崎住人「家畜衛生にまつわる国事情 -食と栄養と国際協力と-」『国際農林業協力』Vol.47 No.2 p.41 2024年9月30日 国際農林業労働協会
  3. ^ 中近東のヨーグルト”. 明治. 2024年11月13日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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