紅茶キノコ

発酵飲料の一種

紅茶キノコ(こうちゃキノコ、: Чайный гриб)は東モンゴル原産で、後にシベリアでよく飲まれるようになった発酵飲料[1]紅茶砂糖を加えて溶かし、微生物群を合わせて発酵を待つ。

紅茶キノコ

昭和50年に発行された『紅茶キノコ健康法』[注 1]によって日本では健康食品として流行。家庭で培養可能であることから口コミ的にも急激に株分けされて広まったが、管理方法などは知られておらず、流行は一年であっけなく終焉を迎えた。

欧米オーストラリアではコンブチャ英語: Kombucha)と呼び、健康飲料として売られている[2][3][4]マンゴー味、ストロベリー味、ローズヒップ味といった、欧米向けに加工されているものもある。日本でもSNSなどを通じて関心を集め、「逆輸入」の形で2014年から2016年頃にかけて販売が拡大した[5] 。「コンブチャ」の名称は、その後も日本国内で製造されている紅茶キノコ飲料にも使われている[6]

名称

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紅茶キノコは「コンブチャ」とも呼ばれる。これは日本語の「昆布茶」と似た名前だが、紅茶キノコと昆布茶は全く別のものである[7]The American Heritage Dictionary of the English Language英語版は、英語話者がゼラチン状の培地を海草(昆布)と誤解し、「昆布茶」と混同したものと推測している[8]。英語ではKombucha[9]

性質

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日本では1975年初頭からブームとなったが、漢方薬的効果を期待して飲んだ人の間で様々な生理的異常が生じたとされ、安全性が心配され、有効性に疑念が持たれた[10]1977年東京都立衛生研究所の研究者らが都内の愛飲家から分けてもらった紅茶キノコについての調査では、紅茶キノコを構成する微生物に病原性は認められなかった[10]

共生細菌英語版を多く含んだ発酵飲料として位置付けられる[7]。適正に培養できない場合に糖度や酸性度が高くなりすぎることがあり、飲んだ人が死亡に到る危険性もありうるとして一部の専門家は注意を呼びかけている[11]

紅茶キノコの「きのこ」

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紅茶キノコの菌塊

実際は、産膜性酢酸菌が形成したセルロースゲル(不溶性食物繊維)であり、真のキノコのような真菌子実体ではない。酵母Zygosaccharomyces sp.酢酸菌Acetobacter xylinum が主菌相であったことが報告されている[12]製品評価技術基盤機構は紅茶キノコから分離した細菌 Komagataeibacter hansenii のセルロース膜産生性能がどの程度かを調べ他の Gluconacetobacter 属細菌と比較した[13]

脚注

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注釈

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  1. ^ 中満須磨子『紅茶キノコ健康法』地産出版〈Chisan books〉、1974年。全国書誌番号:75081964 

出典

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  1. ^ 伊藤輝子、鈴木和子、大石いと美「紅茶きのこについて(第1報) : 紅茶きのこの生育及び糖・酸・ビタミンCについて」『紀要』第8巻、聖徳大学、1975年、129-138頁、CRID 1572543026693201920 
  2. ^ WOONIN (2015年6月24日). “次に来るのは日本発アメリカ式“Kombucha(コンブチャ)” 1/2 コンブチャの正体は「紅茶キノコ」!”. エル・オンライン (ハースト婦人画報社). http://www.elle.co.jp/beauty/pick/theme/Kombucha_15_0624 2018年4月14日閲覧。 
  3. ^ 江森梓 (2017年9月16日). “【近ごろ巷に流行るもの】 コンブは使ってないけど「コンブチャ」…ハリウッドセレブに人気で日本に“逆輸入””. 産経WEST (産経デジタル): p. 1. https://www.sankei.com/article/20170916-GC2QXG5C7NIPDDHK45TRPT3VRY/ 2018年4月14日閲覧。 
  4. ^ 【ASIAトレンド】豪で「コンブチャ」ブーム 健康志向つかむ日本経済新聞』朝刊2019年1月23日(国際・アジアBiz面)2019年1月27日閲覧。
  5. ^ 江森梓 (2017年9月16日). “【近ごろ巷に流行るもの】 コンブは使ってないけど「コンブチャ」…ハリウッドセレブに人気で日本に“逆輸入””. 産経WEST (産経デジタル): p. 2. https://www.sankei.com/article/20170916-GC2QXG5C7NIPDDHK45TRPT3VRY/2/ 2018年4月14日閲覧。 
  6. ^ 「紅茶キノコ、カスピ海ヨーグルト/発酵食品リバイバル/海外人気や市販品登場で」『読売新聞』朝刊2018年12月7日(くらし面)。
  7. ^ a b ロッシェル・カップ 第65回 'Kombucha: Fermented tea touted as tonic by some, as joke by others'(紅茶キノコ:滋養強壮の発酵茶か、それとも単なるうそっぱちか) Published: February 2, 2014 The Asahi Shimbun Globe / Anna Lockhart Kombucha: Fermented tea touted as tonic by some, as joke by others チャタヌーガタイムズ・フリープレス英語版
  8. ^ "kombucha". American Heritage Dictionary of the English Language (Fifth ed.). Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company. 2015. 2016年1月15日閲覧
  9. ^ ラッド順子「紅茶キノコをワインの代わりに飲む若者も 英国で人気の背景に健康志向 - 日本食糧新聞・電子版」『日本食糧新聞』2020年3月16日。2024年10月23日閲覧。
  10. ^ a b 一言 広, 諸角 聖, 和宇慶 朝昭, 坂井 千三, 牛尾 房雄, 道口 正雄, 辺野 喜正夫 いわゆる「紅茶キノコ」の微生物と有機酸 『食品衛生学雑誌』Vol. 19 (1978) No. 3 P 273-281
  11. ^ Kombucha: Fermented tea touted as tonic by some, as joke by others December 25th, 2013 by Anna Lockhart
  12. ^ Microbiology and fermentation balance in a kombucha beverage obtained from a tea fungus fermentation. SIEVERS M, LANINI C, WEBER A, SCHULER-SCHMID U, TEUBER M(ETH-Zuerich, Zuerich, CHE) W0168A System, Appl Microbiol (DEU) VOL.18,NO.4, PAGE.590-594 (1996)
  13. ^ Gluconacetobacter 属細菌のセルロース膜産生能 2014年10月

関連項目

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