糸をつむぐグレートヒェン
『糸を紡ぐグレートヒェン』(いとをつむぐグレートヒェン、独語:Gretchen am Spinnrade)D118は、1814年10月19日に作曲されたフランツ・シューベルトのリート。詩はゲーテの『ファウスト 第一部』を出典とする。この詩には、他にカール・レーヴェ、ルイ・シュポーア、リヒャルト・ワーグナー、ミハイル・グリンカ、ジュゼッペ・ヴェルディなどが曲を付けている。
シューベルトにとって初めてのゲーテ歌曲であるとともに、この曲を以てドイツリートが誕生した、と評される。
グレートヒェンは紡ぎ車を回しつつ、ファウストとその口車を思い浮かべて口ずさんでいる。ピアノ伴奏の反復リズムは、歌詞に応じて紡ぎ車が速まったり遅くなったりするさまや、グレートヒェンの気も狂わんばかりの昂奮を描写し、恋する娘の動揺や、悪魔の誘惑を効果的に暗示している。グレートヒェンの台詞がそのまま歌詞とされているので、明らかに女声のための歌曲であり、上記のような特色から、ソプラノとピアニストにとって意欲を求められるレパートリーとなっている。代表的な歌手として、エリーザベト・シュヴァルツコップやジェシー・ノーマン、グンドゥラ・ヤノヴィッツらが挙げられる。
なお、シューベルトは1817年に同じく第一部より、ファウストとの愛欲の末に罪の意識に苛まれるグレートヒェンの独白(D.564、「外壁の内側に沿った小路にいるグレートヒェン "Gretchen im Zwinger"」または「グレートヒェンの祈り "Gretchens Bitte"」)への作曲を試みたが未完に終わった(20世紀になってベンジャミン・ブリテンが補筆完成させた)。
原詩全文および和訳
編集Gretchen am Spinnrade
Johann Wolfgang von Goethe
Meine Ruh ist hin, |
私の安らぎは去り、 |
参考文献
編集- 渡辺美奈子 「グレートヒェン」―ゲーテ「ファウスト 第1部」より 、2012年9月28日閲覧