笑劇
笑劇(しょうげき、farce: 英語よみ:ファース、フランス語よみ:ファルス、道化芝居とも訳される)とは、観客を楽しませることを目的とした、演劇または映画のために書かれた喜劇の1形態。
概略
編集笑劇の特徴としては、以下のことが挙げられる。
- 現実には起こりそうもない突飛なシチュエーション。
- 変装と人間違い。
- 様々な程度に洗練された言葉によるユーモア。それは性的なほのめかしや言葉遊びを含むかも知れない[要曖昧さ回避]。
- 早い展開の筋。普通、物語が進むにすれ、どんどん早くなり、エンディング(凝りに凝った追跡シーンを含むことが多い)でその頂点を極める。
多くの笑劇はクライマックスに向けて慌ただしいペースで動く。その中で、最初にあった問題は最後には解決されるが、デウス・エクス・マキナはひねりが加えられている。一般にはハッピーエンドで幕を閉じる。勧善懲悪のしきたりは普通見られない。主人公は、たとえそれが犯罪になろうとも、必死に隠そうとしたものを持って逃げることがある。
たいていの笑劇は逸脱したふるまいに非常に寛大で、「人間」をつまらない・不合理・金に弱い・幼稚・無意識の行動(automatic behavior)に走りがちの存在として描写する傾向がある。この点で笑劇は自然と風刺と較べられる。実際、笑劇は単なる1ジャンルではなく、たとえばロマンティック・コメディといった他の形式と組み合わせて起こる、フレキシブルなドラマ様式である。笑劇は演劇の伝統と見なされている。
ばかげてありえないシチュエーション、当意即妙の応答、幅の広い即物的なユーモアに関係する限りでは、笑劇は広くテレビのシチュエーション・コメディ、サイレント映画、スクリューボール・コメディの中で使われてきた。(Bedroom farceも参照)
笑劇の例
編集とくにコメントしていないものは舞台作品。
イギリス
編集- 作者不詳『The Second Shepherds' Play』(14世紀)
- クリストファー・マーロウ『マルタ島のユダヤ人』(The Jew of Malta, 1589年頃)
- ウィリアム・シェイクスピア『間違いの喜劇』(1594年以前)
- アーサー・ウィング・ピネロ(Arthur Wing Pinero)『The Magistrate』(1885年)
- ブランドン・トーマス(Brandon Thomas)『Charley's Aunt』(1892年)
- オスカー・ワイルド『真面目が肝心』(1895年)
- ベン・トラヴァース(Ben Travers)『Thark』(1927年)
- ノエル・カワード『枯草熱』(Hay Fever, 1925年)、『Present Laughter』(1939年)
- フィリップ・キング(Philip King)『See How They Run』(1945年)、『Big Bad Mouse』(1957年)
- ジョー・オートン(Joe Orton)『Loot』(1967年)、『What the Butler Saw』(1969年)
- マイケル・パートウィー(Michael Pertwee)『Don't Just Lie There, Say Something!』(1971年。1973年映画化)
- Anthony Marriott & Alistair Foot『No Sex Please, We're British』(1971年。1973年映画化)
- ジョン・クリーズ『フォルティ・タワーズ』(1975年 - 1979年。テレビ番組)
- John Chapman & Anthony Marriott『Shut Your Eyes and Think of England』(1977年)
- デレク・ベンフィールド(Derek Benfield)『Touch and Go』(1982年)
- マイケル・フレイン『Noises Off』(1982年)
- ナイジェル・ウィリアムズ(Nigel Williams (author))『W.C.P.C.』(1982年)
- Miles Tredinnick『Laugh? I Nearly Went to Miami!』(1986年)、『It's Now or Never!』(1991年)
- アラン・エイクボーン(Alan Ayckbourn)『A Small Family Business』(1987年)
- トム・ケピンスキー『Sex Please, We're Italian!』(1991年)
- レイ・クーニー(Ray Cooney)『ファニー・マネー』(Funny Money, 1994年)
フランス
編集- 作者不詳『少年と盲人』(13世紀) - 現存するフランス文学最古のファルス。
- ジョルジュ・フェドー『Le Dindon』(1896年)、『La Puce à l'oreille』(1907年)
- オクターヴ・ミルボー『Farces et moralités』(1904年)
- マルク・カモレッティ『ボーイング・ボーイング』(1960年)、『Pyjamas Pour Six』(1985年)[1]
- ジャン・ポワレ(Jean Poiret)『La Cage aux Folles』(1973年)
ドイツ
編集- Carl Laufs & Wilhelm Jacoby『Pension Schöller』(1890年)
- Franz Arnold & Ernst Bach『Weekend im Paradies』(1928年)[2]
イタリア
編集- ダリオ・フォ『アナーキストの事故死』(Morte accidentale di un anarchico,1970年)
ロシア
編集- ニコライ・ゴーゴリ『検察官』(Ревизор, 1836年)
- アントン・チェーホフ『結婚申込』(1888年 - 1889年)
アメリカ合衆国
編集- エイヴァリー・ホップウッド(Avery Hopwood)&ウィルソン・コリソン『Getting Gertie's Garter』(1927年)[3]
- 映画『赤ちゃん教育』(1938年)
- 映画『ママのご帰還』(1940年)
- ジョセフ・ケッセルリング(Joseph Kesselring)『Arsenic and Old Lace』(1941年)
- プレストン・スタージェス『結婚五年目』(The Palm Beach Story, 1942年。映画)
- 映画『ダニー・ケイの牛乳屋』(The Kid from Brooklyn, 1946年)
- 映画『ウチの亭主と夢の宿』(Mr. Blandings Builds His Dream House, 1948年)
- 映画『腰抜け千両役者』(Fancy Pants, 1950年)
- 映画『モンキー・ビジネス』(1952年)
- テレビドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』(1951年 - 1957年)
- 映画『お熱いのがお好き』(1959年)
- 映画『おかしなおかしなおかしな世界』(1963年)
- 映画『プロデューサーズ』(1968年)
日本
編集脚注
編集関連項目
編集外部リンク
編集- IMDB list of film and television farces
- Farce films at All Movie Guide
- 笑劇 - コトバンク