笑う月』(わらうつき)は、安部公房随筆集。17編の断片的な随筆・小品が収録されている。1971年(昭和46年)3・4月号から1975年(昭和50年)6月号にわたり、新潮社発行の雑誌『波』に44回連載の「周辺飛行」から、自身の見たの内容を語った16編を安部自らが選び編集して、新稿「笑う月」を加え、1975年(昭和50年)11月25日に新潮社より刊行された[1]。文庫版は新潮文庫で刊行されている。

笑う月
作者 安部公房
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 随筆・小品
発表形態 作品集
刊本情報
出版元 新潮社
出版年月日 1975年11月25日
装幀 安部真知
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内容

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表題作「笑う月」は、安部公房が小学生の頃から何度も見るの話である。花王石鹸(後の花王)の商標を正面から見たような顔で、大きく裂けた非情な薄い唇で笑っているオレンジ色満月に追いかけられる夢の話から、睡眠意識について考え、以下のような一節が綴られている。

夢は意識されない補助エンジンなのかもしれない。すくなくとも意識化で書きつづっている創作ノートなのだろう。ただし夢というやつは、白昼のにさらされたとたん、見るみる色あせ、変質しはじめる。もし有効に利用するつもりなら、新鮮なうちに料理しておくべきだ。そこでここ数年来、ぼくは枕元にテープ・レコーダーを常備して待つことにした。見た夢をその場で生け捕りにするためである。つまり肝心なのは、笑う月の身元や正体などではなく、笑う月そのものなのである。 — 安部公房「笑う月」

おもな刊行本

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  • 掌編集『笑う月』(新潮社、1975年11月25日)
    • 装幀・挿絵:安部真知。布装。函入。
    • 収録作品:「睡眠誘導術」、「笑う月」、「たとえば、タブの研究」、「発想の種子」、「藤野君のこと」、「蓄音器」、「ワラゲン考」、「アリスのカメラ」、「シャボン玉の皮」、「ある芸術家の肖像」、「阿波環状線の夢」、「案内人」、「自己犠牲」、「空飛ぶ男」、「鞄」、「公然の秘密」、「密会」
  • 文庫版『笑う月』(新潮文庫、1984年7月25日)
    • 装幀・挿絵:安部真知。
    • 収録作品は初版と同じ。
    • 装幀を刷新し2014年9月に改版。

脚注

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  1. ^ 「作品ノート25」(『安部公房全集 25 1974.03-1977.11』)(新潮社、1999年)

参考文献

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