発酵(はっこう、醱酵とも表記、英: fermentation)は、生物が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に(酸素を使わずに)代謝してエネルギーを得る過程である。より科学的には、栄養素から放出された電子が、最終的に同じ栄養素の分解から得られる分子に移動する代謝プロセスと定義される。
発酵とは、次のことを指す場合もある。
- 微生物が発酵食品など人間に有益な有機物を生成する過程全般を指す
- 好気発酵(英語版) - 酸素が存在する条件下で細胞が発酵によって糖を代謝する代謝プロセス。通常の呼吸代謝の抑制によって起こる。好気性解糖とも呼ばれる。
- 嫌気消化(英語版) - 酸素がない状態で微生物が生分解性物質を分解する一連のプロセス。食品や飲料を生産するために工業的に使用される発酵や、家庭での発酵の多くは、嫌気性消化を利用している。
- エタノール発酵 - 食品、アルコール飲料、燃料、工業用エタノールの製造
- 乳酸発酵 - グルコース、フルクトース、スクロースなどの糖が細胞エネルギーと代謝副産物である乳酸に変換される生物学的プロセス
- 工業的発酵(英語版) - 多くの場合、好気性の増殖条件下で行われる、工業用の生化学物質の分解と再合成
- 発酵水素生産(英語版) - 多様な細菌群によって発現される、有機基質からバイオ水素への発酵変換
- 発酵食品 - 食材を微生物などの作用で発酵させることによって加工した食品
- 醸造 - 酒、調味料、味噌などの食品加工の過程
- 製茶 - 茶葉を好気的に処理し、特定の不要な化学物質を分解し、他の化学物質を改変して茶葉の風味を生み出すこと。特に、茶葉から烏龍茶や紅茶を作る際の酸化酵素の働きによる酸化作用のことを歴史的経緯により「発酵」と呼ぶ[1]。ただしプーアル茶などの後発酵茶を作る際の「発酵」はカビやバクテリアに上述(生物学)の意味の発酵を行わせる過程である[1]。