液体窒素
液体窒素(えきたいちっそ、英: liquid nitrogen)は、冷却された窒素の液体である。液化窒素とも呼ばれ液化空気の分留により工業的に大量に製造される。純粋な窒素が液相状態になったものである(液体の密度は三重点で0.807 g/mL)。
解説
編集液体窒素は冷却剤として使用される液体で、生体組織に付着すると容易に凍傷を引き起こし、また密閉空間で急激に気化させると酸素欠乏症に陥るので慎重な取り扱いが必要である。周囲の熱を断熱することで、液体窒素は目に見えるような蒸発による損失をともなうことなく貯蔵あるいは輸送ができる。
1883年4月15日に、ポーランドの物理学者、ジグムント・ヴルブレフスキとカロル・オルシェフスキらによって、ヤギェウォ大学で初めて液化された。
日本では取り扱いに際し、酸素欠乏危険作業主任者資格が必要な場合がある。
触れると一瞬で凍り付いたり凍傷になるようなイメージがあるが、実際には1 - 2秒くらい触れる程度であれば凍傷になることはない。
製造方法
編集空気(大気)中の窒素ガスを原料とし、空気を冷凍サイクルにより液化する。なお、ホコリ、水分、二酸化炭素(CO2)は冷却中に除去し、温度差を利用し窒素以外(主に酸素)の成分を分離し液体窒素を得る。
応用
編集液体窒素はコンパクトで、高圧装置なしで輸送可能な窒素ガスの供給源である。その上、水の凝固点を遙かに下回る低温を維持することができ(1気圧下での液体窒素の沸点は77 K, −196 ℃, −320 °F)、おもに使い切りの冷却剤として様々な用途に利用されている。次に示す。
比較的容易に低温が得られるため多くの産業で利用されている。
低温工学分野
食品
医療分野
- 血液の凍結保存や、生殖細胞(精子や卵子)、生物学的サンプルや素材の保存。
- 将来のよみがえりを期待した、人間やペットの凍結保存。
- 皮膚医療において、いぼや光線性角化症など見苦しかったり癌化の可能性がある新生物を除去するのに利用[注 1]。
電子機器
- 高感度のセンサー[注 2]、ローノイズ増幅器[注 3]やMCT検出器の冷却剤。
- 走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡といった電子顕微鏡の素子冷却や冷却トラップに用いられる。
- スーパーコンピュータの中央演算装置や他のコンピューターハードウェア類のオーバークロッキング用(記事 ETAシステムズに詳しい)
土木工事
(77—276)
事故例
編集ガス漏れによる酸欠、低温による凍傷、低温脆化(特に炭素鋼)、空気(酸素)の液化、液体窒素の急激な膨張による爆発などが報告されている。
関連法規
編集脚注
編集注釈
出典
- ^ 液体窒素充填装置 東洋製罐
- ^ “皮膚科・形成外科”. 大分大学付属病院診療科. 2007年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年10月4日閲覧。
- ^ 150cm望遠鏡の液体窒素冷却CCDカメラ
- ^ 近赤外域微弱光検出装置
- ^ 液体窒素で周辺空気の酸素が液化しベンゼンが爆発 失敗知識データベース
- ^ 液体窒素飲用による胃破裂の1例 日本消化器外科学会雑誌 Vol.33 (2000) No.9 P1648-1651
出典
編集- “高圧ガスと液体窒素の取り扱い”. 金沢大学工学部物質化学工学科. 2015年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月13日閲覧。
関連書籍
編集- 中央労働災害防止協会編 『酸素欠乏危険作業主任者テキスト』 ISBN 978-4-8059-1590-5 C3060
- 沈黙のパレード
関連項目
編集外部リンク
編集- 液化窒素 LN2 化学物質等安全データシート (PDF, 100 KiB)
- 春日井昇. “液化ガスの物性基礎論 初めての液体窒素”. 京都大学. 2015年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月13日閲覧。
- 液体窒素の使用にあたって (PDF, 156 KiB) - 京都大学低温物質科学研究センター