浜石岳(はまいしだけ)は、静岡県静岡市清水区[注釈 1][3] の北東部に位置する標高707 m[2][4]。東山麓の旧由比町での別名が西山[2]

浜石岳
南麓から望む浜石岳
標高 706.81[1] m
所在地 日本の旗 日本 静岡県静岡市清水区
位置 北緯35度07分0秒 東経138度32分0秒 / 北緯35.11667度 東経138.53333度 / 35.11667; 138.53333座標: 北緯35度07分0秒 東経138度32分0秒 / 北緯35.11667度 東経138.53333度 / 35.11667; 138.53333
山系 赤石山脈(南アルプス)中央連嶺の大井川左岸山系[2]
浜石岳の位置(静岡県内)
浜石岳
浜石岳 (静岡県)
浜石岳の位置(日本内)
浜石岳
浜石岳 (日本)
プロジェクト 山
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概要

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南北に連なる稜線は薩埵山と薩埵峠を経て駿河湾に達する[4]1351年観応2年)12月にこの南側の山域では、足利尊氏と弟足利直義との1ヶ月に及ぶ薩埵峠の戦い(南北朝時代)の舞台となり[2]戦国時代1568年永禄11年)12月から翌月にかけて武田信玄の軍勢と今川氏真北条氏政の軍勢との間で2度にわたって薩埵峠の戦い(戦国時代)が行われた。山麓の緩斜面はミカンなどの果樹園として利用され、中腹から上部はスギヒノキ植林地として利用されている[2]。山頂部は低木林で、アセビの群落や草地となっている[2]

山頂からの眺めは360度開けている[5]。山頂部の北側に無断中継塔が設置されている[6]。山頂の東約400 mの清水区由比阿僧934-6に、静岡市の体験宿泊施設「浜石野外センター」が設置されている[7][8]。山麓の由比海岸からは、ゆったりとした野原の山並が望める[7]。静岡市シティプロモーションにより、「オクシズ100選」の一つに選定されている[9]

地質

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山頂に円礫(浜石)があることが山名の由来とみられている[2]。山域は新第三紀鮮新世の浜石岳層群からなり、上部は砂岩礫岩などからなり、下部は火山砕屑岩泥岩などからなる[2]。山域は河川浸食駿河湾沿いの波浪浸食が激しく、大規模な地すべり[10](南山域の由比地すべり[11])が繰り返されている[2]。坂本東方から薩埵峠にかけての浜石岳主稜線の尾根伝いに南北に連続する浜石岳断層が確認されている[12]

登山

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富士山が展望できる山として知られていて、登山ハイキングの対象となる山である[2][7][13]。静岡百山研究会により、「静岡の百山」のひとつに選定されている[14]花の百名山の一つに選定されていて、ヤマユリなどが見られる[15]。南の薩埵峠方面からほぼ稜線伝いに山頂に至る登山道が、東海自然歩道のバイパスコースとして整備されている[16]。山頂には二等三角点(点名「浜石岳」、標高706.81 m)[1] と、展望図の石盤が設置されている。主な登頂コースを以下に示す[17]。代表的な薩埵峠からのコースは静岡県版「山のグレーディング」検討会により、無雪期・天候良好時の技術的難易度が「ランクA/(A-E)」(低い-中程度)、体力度が「3/1-10」(低程度、日帰りが可能)とされている[18]

薩埵峠からのコース
由比駅(または興津駅[13]) - 由比駅を背に県道396号を東京方面へ向かい、開花亭という飲食店を過ぎらすぐに左折する。新幹線を跨ぐ曙大橋を渡り、浜石野外センター方面へ道なりに進めば山頂へアプローチできる。由比駅から浜石岳山頂までは約4.8km、コースタイムは2時間30分程度である。その後、来た道を戻らずに、但沼への分岐(標高442m)、立花への分岐(標高490m)を経て薩埵峠(標高244m)へと樹林帯を下り、興津駅へ帰ることもできる。山頂から沖津駅までは9.2km、コースタイムは2時間40分となっている[19]
西山寺からのコース
由比駅 - 西山寺 - 浜石芝広場(駐車場) - 浜石岳
野外センターからのコース
浜石野外センター - 浜石岳

地理

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広義で赤石山脈(南アルプス)中央連嶺の大井川左岸山系に属する山である[2]。富士山の南南西32 kmに位置する[4]。山域の南端にある薩埵山との鞍部となる薩埵峠の北5.4 kmに位置する[4]。山頂の2.3 km 南の稜線上に小ピークの立花山(標高約460 m)がある[17]

周辺の山

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北西の派生する尾根上、北西0.8 kmには陣場山(標高654 m)があり、その北側にのろし台跡がある[20]

山容 山名 標高(m)
[注釈 2][1]
三角点等級
基準点名[1]
浜石岳からの
方角距離(km)
備考
  富士山 3776.12 二等
「富士山」
 北北東 32.0 日本最高峰
日本百名山
  大丸山 567.56 四等
「大丸山」
 東北東 5.0
  浜石岳 706.81 二等
「浜石岳」
  0 静岡の百山[14]
  高根山 503.39 三等
「小島村」
 南西 4.1
  薩埵山 243.96 三等
「八木間村」
 南 5.1

源流の河川

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南山腹にある立花池

西に流れる興津川と東に流れる由比川との分水界となる山[2]。それぞれの支流と和瀬川[10]源流となる山で太平洋側に駿河湾へ流れる[4]。山頂の南2.6 kmの稜線の直下西側に立花池がある[6][13][17]

交通・アクセス

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山域の西側に国道52号が通る[4]。山域の南部を東海道新幹線の由比トンネルが貫通している[4]。南東山麓に静岡県道396号富士由比線東海道本線国道1号東名高速道路が通る[4]。山域の東側に静岡県道76号富士富士宮由比線が通る。山頂直下まで林道が敷設されていて、ハイキングコースにも利用されている[6]

浜石岳から眺望

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遮るものがない山頂の広場からは、富士山、愛鷹山塊伊豆半島田子ノ浦、駿河湾、三保の松原、赤石山脈(南アルプス)、天子山地など360度の展望が広がる[6][7]  ウィキメディア・コモンズには、浜石岳から眺望に関するカテゴリがあります。

脚注

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注釈

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  1. ^ 浜石岳は清水市庵原郡由比町とにまたがる山であったが、その後編入により静岡市清水区の山となった。
  2. ^ 基準点の標高は、2014年3月13日の国土地理院による標高改算値。

出典

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  1. ^ a b c d 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2016年11月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 日本山岳会 (2005)、1038-1039頁
  3. ^ a b 徳久 (1992)、423頁
  4. ^ a b c d e f g h i j 地理院地図(電子国土Web)・「浜石岳」”. 国土地理院. 2016年11月20日閲覧。
  5. ^ 浜石岳・日本平エリア”. 公益社団法人 静岡県観光協会. 2024年11月19日閲覧。
  6. ^ a b c d 加田 (2010)、116-117頁
  7. ^ a b c d 山と溪谷社 (1992)、471頁
  8. ^ 浜石野外センター”. 静岡市. 2016年11月20日閲覧。
  9. ^ 浜石岳”. 静岡市経済局農林水産部中山間地振興課. 2016年11月21日閲覧。
  10. ^ a b 和瀬川水系河川整備基本方針” (PDF). 静岡県. pp. 1 (2013年4月). 2016年11月23日閲覧。
  11. ^ 由比地すべり対策事業”. 国土交通省砂防部富士砂防事務所. 2016年11月20日閲覧。
  12. ^ 駿河湾団体研究グループ (1981)、155頁
  13. ^ a b c 佐古 (2011)、74-75頁
  14. ^ a b 静岡百山研究会 (1991)
  15. ^ 田中 (1997)、316-319頁
  16. ^ 東海自然歩道” (PDF). 公益社団法人静岡県観光協会. 2016年11月20日閲覧。
  17. ^ a b c 浜石岳・薩った峠ハイキングコースマップ”. 静岡市 (2015年4月21日). 2016年11月21日閲覧。
  18. ^ 静岡県版「山のグレーディング」検討会 (2015年5月15日). “静岡県 山のグレーディング~無雪期・天候良好の「登山ルート別 難易度評価」~” (PDF). 静岡県. pp. 1. 2016年11月21日閲覧。
  19. ^ 佐古清隆『富士の見える山 ベストコース』山と渓谷社、2003年3月10日、68,69頁。 
  20. ^ 加田 (1996)、42-43頁

参考文献

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  • 加田勝利『静岡県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド21 改訂版〉、2010年1月11日。ISBN 978-4635023719 
  • 加田勝利『静岡県の山』山と溪谷社〈分県登山ガイド〉、1996年8月1日。ISBN 4635021815 
  • 徳久球雄 編『コンサイス日本山名辞典』(修訂版)三省堂、1992年10月。ISBN 4-385-15403-1 
  • 佐古清隆『富士山の見える山 ベストコース45』山と溪谷社〈ヤマケイアルペンガイドNEXT〉、2011年10月5日。ISBN 978-4635014427 
  • 静岡百山研究会 編『静岡の百山』明文出版社、1991年11月。ISBN 4943976174 
  • 日本山岳会 編『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月。ISBN 4-779-50000-1 
  • 駿河湾団体研究グループ「静岡県浜石岳周辺の地質」『地球科學』第35巻第3号、地学団体研究会、1981年5月、doi:10.15080/agcjchikyukagaku.35.3_145NCID AN00141269 
  • 山と溪谷社 編『日本の山1000』山と溪谷社、1992年8月。ISBN 4635090256 
  • 田中澄江花の百名山文春文庫、1997年6月。ISBN 4-16-352790-7 

関連項目

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外部リンク

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