水郡線三部作(すいぐんせんさんぶさく)は、茨城県那珂市に活動拠点を置く、カミスガフィルムコミッション(略称:KFC。後、"カミスガフィルムクリエイト"に名称変更。本記事では以後、"KFC"と呼ぶ。)制作、大内靖の脚本監督・編集による『走れ』、『シガノココロ』、『そなたへ』の3作の映画である。

概要

編集

2011年よりJR水郡線上菅谷駅を中心に地域おこしに取り組んでいた「カミスガプロジェクト」のメンバーの一人、大内靖が映画制作の為に2012年に立ち上げた派生チームがKFCであり、その第1作が『走れ』である。脚本監督・編集を大内が務め、茨城県内で撮影が行われた。2012年10月18日の『走れ』の公開に続き、第2作『シガノココロ』、第3作『そなたへ』が大内による脚本・監督・編集で制作され、公開された。この3作では共通する登場人物の現在過去未来の姿が描かれており、三部作とされている。また3作品は"水郡線沿線地域活性化支援作品"として制作され、作品には水郡線沿線市町村の風景が描かれている[1][2][3]

3作品の上映では延べ1万人以上の観客を呼び込んでおり、自主制作映画の上映では異例の多さであると報じられている[4]

3作品は『水郡線三部作』の名で3枚組のDVD商品として、2014年10月から販売されている[5]

『走れ』

編集
走れ
監督 大内靖
脚本 大内靖
製作総指揮 菊池一俊
編集 大内靖
製作会社 KFC・大内組
公開   2012年10月18日
上映時間 50分[6]
製作国   日本
言語 日本語
次作 シガノココロ
テンプレートを表示

概要

編集

走れ』(はしれ)は『水郡線三部作』の第1作目であり、KFCの初制作、大内靖の初監督作品である。内容は主人公の少年(圭輔)が離れて暮らす母(幸恵)を訪ねて行く話がメインで、『水郡線三部作』のストーリーの時系列の中では中間に位置する。常陸太田市が主な舞台となっている[2]

監督の大内はかって映像編集関連業務に携わっており、KFCの中では映像関連のコンテンツ制作を行っていた。かねてから映画に関心を持っていた大内は映画制作の希望をプロジェクトの菊池一俊代表に持ちかけ、そこからKFCの2012年1月からの始動に繋がり、第1作『走れ』が2012年7月22日に撮影が開始された。当初、大内は水郡線沿線の複数の市町村を舞台に3つの話が繋がってゆくストーリー構成を考えていたが、初作品では難しいだろうと考えて、短編映画として製作した[1][7]撮影音声照明プロの業者に委任したが、他はキャストも含め素人が携わった[8]

完成した映画は2012年10月18日渋谷UPLINKシネマにて初公開され、以降、県内各地で上映された。県外では下北沢トリウッドでも上映された[9]。この最初の上映期間では約3000人の鑑賞があった[10]

主な登場人物

編集
  • 大林圭輔

常陸太田市の中学三年生。12年前に母が家を出ていってしまい、も既に亡くなっていて、今は祖父母と暮らす。家の事情から高校進学は諦め気味になっている。学校に行くふりをして、顔も知らない母に逢いに行こうとする。

  • 大野桜

圭輔の幼なじみの中学三年の女子。圭輔の計画を知り、セーラー服姿のまま付いて行く。

  • 小野義明

圭輔と同学年の友人。圭輔とのバス停での待ち合わせに遅れて来てしったので、圭輔達は歩いて駅まで行くはめになる。坊主頭のタンクトップ姿で、コーヒーが苦手。

  • 滝沢彩

圭輔の従姉。圭輔に幸恵の住所や勤務先を書いた紙をバス停で渡す。

  • 園田理香

道を歩いていた圭輔と自動車事故を起こしそうになった女性。圭輔達を常陸太田駅まで車で送ることになる。離婚して子供は自分が引き取って育てている。途中立ち寄った喫茶店で圭輔に、「子供は親に会いたいと思っている」と言われて感情的に言い返してしまう。

  • 田村幸恵

圭輔の母。12年前、圭輔を置いて家を出た。今は那珂市に住み、スーパーマーケットで働いているらしい。

  • 大野明子

桜の母。

  • 菊池ハジメ

圭輔達が常陸太田市の鯨ヶ岡商店会で出会った移動販売の男。

ロケ地

編集

圭輔と桜が進路のことなどを話していた場面。

圭輔が移動販売の男と話していた場面。

圭輔達が水郡線に乗った場面。

ラストシーン前の圭輔が叫んだ公園。

圭輔達が水郡線を降りた場面と、ラストの場面。

劇中曲

編集
  • 主題歌「ライジングサン」

編曲・歌 - モコブランコ / 作詞・作曲 - イノウエヒデキ

『シガノココロ』

編集
シガノココロ
監督 大内靖
脚本 大内靖
製作総指揮 菊池一俊
編集 大内靖
製作会社 KFC・大内組
公開   2013年4月27日
上映時間 58分[6]
製作国   日本
言語 日本語
前作 走れ
次作 そなたへ
テンプレートを表示

概要

編集

シガノココロ』は『水郡線三部作』の第2作目で、KFC制作、大内靖監督作の第2作目。内容は幸恵の若い頃の恋愛を描いたもので、『水郡線三部作』のストーリーの時系列の中では最初に位置する。大子町を主な舞台にしている[2]。大子町を流れる久慈川では厳期に面に発生した無数のシャーベット状のが川を流れる現象が起きる。タイトルに含まれる"シガ"とはこの現象の呼び名である[11]

主役の女性とその恋人とも演技経験が無い者がオーディションで選ばれた[10][12]

2013年2月に撮影が開始され、同年4月27日に大子町文化福祉会館まいんで初公開された。以後、県内各地を巡回し、県外では下北沢トリウッドで6月15日に上映された[10][13][14]

主な 登場人物

編集
  • 吉成幸恵

貴明の彼女。建築会社の事務員とした働いて、独り暮らしをしている。貴明とは3年の付き合いであるが、「好きなだけでは、駄目なんだろうか」と、結婚には消極的なことを言う。その心理には自身の親の姿が影響していることを友人に語っている。

  • 益子貴明

幸恵の彼氏。大子町に両親と共に住む。大子町には実家のリンゴ園を継ぐ為に戻ってきており、父から栽培の手解きを受けている最中である。町のYOSAKOI祭りのイベント実行メンバーに入っている。幸恵とは結婚を考えており、既に両親にも紹介している。幸恵と"シガ"を見に行くことを約束した。

  • 大高朋美

貴明と一緒のイベント実行メンバーの女性。造酒屋で働いている。貴明に好意を持っている。

  • 大林一成

幸恵の勤務先の同僚。幸恵を駅まで送るなどの行動を見せ、好意が有ることをうかがわせる。

  • 益子政宗

貴明の父。貴明にリンゴ栽培の手解きを施している。息子の恋愛には干渉しない態度を見せる。

  • 益子静江

貴明の母。息子が結婚や子作りにしっかり考えていないと思い、口出しをしてしまう。

  • 今井純子

幸恵の友人で子持ちの母。幸恵との喫茶店でのティータイムで、子供の可愛さを語る。

  • 菊池ハジメ

幸恵の勤務先に弁当を届ける男。

ロケ地

編集

幸恵が上りの水郡線を待っている場面他。

貴明がお参りした巨大な地蔵

貴明ら、YOSAKOI祭りの実行メンバーが会場を視察する場面。

貴明が幸恵に今後の事について問うた場面。

貴明と幸恵が最後に歩いた場面。

  • 上菅谷駅

大林が幸恵を送っていった駅の場面。水郡線を降りる幸恵と、乗ってくる貴明がすれ違うラストシーン。

劇中曲

編集
  • 主題歌「おひさまのこもりうた」

歌 - Daizysuck / 作詞・作曲 - sato shoko

『そなたへ』

編集
そなたへ
監督 大内靖
脚本 大内靖
製作総指揮 菊池一俊
編集 大内靖
製作会社 KFC・大内組
公開   2013年11月17日
上映時間 65分[6]
製作国   日本
言語 日本語
前作 シガノココロ
テンプレートを表示

概要

編集

そなたへ』は『水郡線三部作』の完結作であり、KFC制作、大内靖の監督作の第3作目である。内容は大人になった圭輔とその家族の物語で、『水郡線三部作』のストーリーの時系列の中では最後に位置する。水戸市が主な舞台となっている[2]

2013年7月から撮影を開始し、10月に完成、11月17日の下北沢トリウッドでの公開を皮切りに各地を巡回上映された。KFC制作映画としては初のシネコンシネプレックス水戸)での上映も実現した[2][15]

主な登場人物

編集
  • 大林圭輔

水戸市に居を構える大林家の父。自動車販売会社で課長を勤める。家族にも部下にも厳しい態度をとる。移動販売の男からは、「何でも自分の思うとおりになると思ってるんじゃない」と評される。幼い頃、家を出ていったきり会っていなかった母の幸恵が死んだ事を知り、葬儀に家族と共に出かける。

  • 大林京子

大林家の母。ホテルで清掃の仕事をしている。良い母であるが、見知らぬ人の車から降りてくるのを子供たちは見てしまう。

  • 大林翔太

大林家の長男で予備校生。だが、予備校をさぼり彼女と遊んだり、コンビニアルバイトをしている。アルバイトしているのを父に咎められると、不快感あらわに反発する。だが、チンピラに暴行されようとしていた父を助けたりもする。

  • 大林明日香

大林家の長女。勉強が良くできる16歳の高校生だが、学校で仲間はずれにされる扱いを受けている。不登校のにはつらく当たってしまう。

  • 大林七海

大林家の二女。中学校不登校中。幼児だった頃の父がその母に抱かれている写真を見つけ、物語の最後、父に渡す。

  • 佐藤結衣

翔太の彼女。

  • ストリートミュージシャン

演:磯山純

水戸駅前で路上ライブをやっていたミュージシャン。翔太の「何の為にこんなことをやっているのか?」との問いに答える。

  • 滝沢彩

圭輔の従姉。電話で圭輔に幸恵の死を伝える。

  • 滝沢房子

圭輔の叔母で、彩の母。幸恵の葬儀を行っている寺で圭輔に話しかける。

  • 菊池ハジメ

移動販売の男。

ロケ地

編集

ストリートライブのシーンなど。

翔太と結衣が歩く場面。

母の死を知り、酔いつぶれていた圭輔がチンピラに絡まれる場面。

幸恵の葬儀をしている寺。

  • 宮の池公園

寺から出た圭輔らが歩いた公園。

  • 上菅谷駅

ラストシーン。

劇中曲

編集

歌 - KENZO / アレンジ・演奏 - 横倉政弘・CrazyJoe

出典

編集
  1. ^ a b “上菅谷駅前の魅力発信 短編青春映画制作へ”. 茨城新聞: p. 19. (2012年6月13日) 
  2. ^ a b c d e “まちの風景、魅力発信 水戸舞台に家族描く「KFC」3部作完結 映画「そなたへ」来月公開”. 茨城新聞: p. 19. (2013年10月30日) 
  3. ^ “那珂、大子、水戸をつなぐカミスガ映画 水郡線3部作の最終章「そなたへ」が完成”. 茨城朝日: p. 1. (2013年10月23日) 
  4. ^ “震災忘れぬ 映画に思い KFC第4弾5日から上映”. 朝日新聞(茨城版): p. 28. (2014年5月3日) 
  5. ^ 水郡線三部作DVD販売決定!10月5日カミスガから”. カミスガフィルムクリエイトホームページ (2014年9月1日). 2017年9月26日閲覧。
  6. ^ a b c “上映:家族の絆やつながりを感じて KFCの最終章「そなたへ」、来月から県内各地で”. 朝日新聞(茨城版): p. 23. (2013年10月10日) 
  7. ^ “那珂"カミスガ初"映画 第1弾「走れ」撮影開始”. 茨城新聞: p. 19. (2012年7月25日) 
  8. ^ “常陸太田や那珂舞台 中3の夏描く 市民手作り青春映画”. 読売新聞(茨城版): p. 33. (2012年10月16日) 
  9. ^ “揺れる少年の心描く 映画「走れ」18日から公開”. 茨城新聞: p. 19. (2012年10月13日) 
  10. ^ a b c “舞台は大子、映画完成「シガノココロ」、きょうから順次上映”. 朝日新聞(茨城版): p. 28. (2013年4月27日) 
  11. ^ 関根一夫、出村尚英、牛尾収輝「久慈川の水温測定によるシガ(晶氷)発生予測」『雪氷研究大会(2016 名古屋) 講演要旨集』、日本雪氷学会、2016年、300頁、doi:10.14851/jcsir.2016.0_300NAID 130005243964 
  12. ^ “水郡線舞台 恋の物語 カミスガ映画第2弾撮影開始”. 茨城新聞: p. 19. (2013年2月15日) 
  13. ^ 下北沢にもたくさんの方に・・・アンコール上映決定!”. KFC カミスガフィルムクリエイトホームページ (2016年4月28日). 2017年9月27日閲覧。
  14. ^ 封切 大子町 大盛況!”. KFC カミスガフィルムクリエイトホームページ (2016年6月16日). 2017年9月27日閲覧。
  15. ^ “茨城に映画文化を 「水郡線3部作」が完結”. 東京新聞(茨城版): p. 24. (2013年11月9日) 

関連項目

編集

外部リンク

編集
全ての座標を示した地図 - OSM
全座標を出力 - KML

  • リダイレクトカテゴリ