欽一石(きんいちせき[3]kinichilite)は、テルル酸塩鉱物の一種。化学組成は Mg0.5[(Mn,Zn)Fe3+(TeO3)3]·4.5H2O[3]、またはMg0.5Mn2+Fe3+(Te4+O3)3·4.5H2O[4]結晶系六方晶系

kinichilite
分類 テルル酸塩鉱物
シュツルンツ分類 4.JM.05
Dana Classification 34.3.2.2
化学式 (Fe,Mg,Zn)2(TeO3)3(NaxH2-x)・3H2O
結晶系 六方晶系
モル質量 730.80 gm
粘靱性 もろい
モース硬度 2
光沢金剛光沢
暗褐色
条痕 褐色
密度 4.11 g/cm3
光学性 一軸性
屈折率 nω = 1.800、nε = 1.800
複屈折 δ = 0.000
文献 [1][2]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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産出地

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静岡県下田市河津鉱山で、堀秀道鉱物科学研究所)により発見された日本産新鉱物

サイド・ストーリー

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鉱物名は鉱物学者櫻井欽一にちなむ。

発見時は亜鉛を主成分とするゼーマン石英語版(当時は(Zn,Fe)2(TeO3)3NaxH2-x・yH2O)の二価鉄置換体として報告された。ところが、1995年にゼーマン石と欽一石の構造が再検討され[4]、新たに判明したゼーマン石(Mg0.5ZnFe3+[TeO3]3·4.5H2O)の主成分は三価鉄と亜鉛であると判明したため欽一石はゼーマン石と同等とされ、消滅すると思われた。しかし、同論文では新たに日本の産地から提供されたタイプ標本ではない「欽一石」を分析した結果、マンガンが亜鉛に優越するとしてゼーマン石のマンガン置換体を欽一石と位置付け、この化学式が国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名委員会により承認された。このため、堀らの記載論文は名称のみが認められる形となり、タイプ標本がすり替わってしまったまま現在に至っている[5]

脚注

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  1. ^ Kinichilite (英語), MinDat.org, 2012年5月18日閲覧 (英語)
  2. ^ Kinichilite (英語), WebMineral.com, 2012年5月18日閲覧 (英語)
  3. ^ a b 松原聰宮脇律郎『日本産鉱物型録』東海大学出版会国立科学博物館叢書〉、2006年。ISBN 978-4-486-03157-4 
  4. ^ a b Miletich R (1995) Crystal chemistry of the microporous tellurite minerals zemannite and kinichilite, Mg0.5[Me2+Fe3+(TeO3)3]-4.5H2O,(Me2+=Zn;Mn)
  5. ^ 欽一石 / Kinichilite東京大学物性研究所浜根大輔

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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