杉石
杉石(すぎせき)[3]は、欧米諸国でスギライト (Sugilite)、ルブライト (Lavulite)、ローヤルアゼール (Royal Azel)と呼ばれ、鉱物(ケイ酸塩鉱物)の一種。化学組成は (K,Na)(Na,H2O)2(Fe3+,Ca,Na,Ti,Fe,Mn)2(Al,Fe3+)Li2Si12O30、結晶系は六方晶系。大隅石グループの鉱物。
杉石 | |
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杉石 | |
分類 | ケイ酸塩鉱物 |
シュツルンツ分類 | 9.CM.05 |
Dana Classification | 63.2.1a.9 |
化学式 | K(Na,□)2Li3(Fe,Mn,Al,Zr)2Si12O30 |
結晶系 | 六方晶系 |
単位格子 | a = 10Å、c = 14Å |
モル質量 | 1,041.66 |
へき開 | なし |
モース硬度 | 5.5 - 6.5 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | 桃色、紫色、鶯色 |
比重 | 2.74 - 2.79 |
光学性 | 一軸性負 |
屈折率 | nω = 1.610、nε = 1.607 |
複屈折 | δ = 0.003 |
文献 | [1][2] |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
日本の愛媛県岩城島で杉健一らにより1944年に調査・採取され、1974年[1]に国際鉱物学連合(国際新鉱物命名委員会IMA#1974-060)が新鉱物として認定。最初に発見し、新鉱物として申請した岩石学者村上允英の師でもあった杉に因み命名された。
産出地
編集産出量が多いのは南アフリカ共和国 ケープ州のウェッセルズ鉱山(現在の北ケープ州)で、他に日本(愛媛県・岩城島と砥部町・古宮鉱山[3])、イタリア リグーリア州・トスカーナ州、オーストラリア ニューサウスウェールズ州、インド マディヤ・プラデーシュ州、中央アジア 天山山脈などでも産出される。
性質・特徴
編集最初に発見された日本産はうぐいす色だったが、宝石として用いられるのはピンク、紫系の色。紫色の彩色はマンガンに起因する。南アフリカ産の一部はマンガンよりアルミニウムが卓越しており[4]、新鉱物の可能性が指摘されていたが[5]、2019年にイタリア産の分析から、アルミノ杉石(Aluminosugilite, KNa2Al2Li3Si12O30)が新種記載された[6]。
用途・加工法
編集ルースとしての需要があり、杉石を使った装飾品が作られている。チャロアイト、ラリマーとともに世界三大ヒーリングストーンの一つとされ、パワーストーン愛好家に人気がある。
ギャラリー
編集サイド・ストーリー
編集村上允英らと共に岩城島産の杉石を報告した広渡文利は、1965年に古宮鉱山で黒色のブラウン鉱の隙間を埋める鮮やかな紫色鉱物を発見していた[7][8]。その時は成分を特定できなかったが、杉石が新種記載された後の1981年になって、ようやく杉石と判明した。
記載者の村上允英は1983年に櫻井賞を受賞し、1994年に地質学貢献と杉石の命名により、勲三等旭日中綬章受章・正四位に叙せられる。
南アフリカ・ウェッセルズ鉱山の紫色の杉石は1978年に発見され、当初はソグド石と誤認され[9]、後に杉石と判明した[10]。その後、杉石の最初の発見地である岩城島でもソグド石は発見されている[11]。
脚注
編集- ^ a b Sugilite (英語), MinDat.org, 2011年11月9日閲覧。
- ^ Sugilite (英語), WebMineral.com, 2011年11月9日閲覧。
- ^ a b 松原聰、宮脇律郎『日本産鉱物型録』東海大学出版会〈国立科学博物館叢書〉、2006年、121頁。ISBN 978-4-486-03157-4。
- ^ Armbruster T., Oberänsli R. (1988) Crystal chemistry of double-ring silicates: Structures of sugilite and brannockite. American Mineralogist, 73, 595-600.
- ^ 杉石 / Sugilite (1974-060)、浜根大輔、東京大学物性研究室
- ^ 新鉱物「アルミノ杉石」を発見!、山口大学、2019年6月7日
- ^ 広渡文利, 福岡正人, 近藤裕而 (1981) 愛媛県古宮鉱山の含マンガン杉石. 日本鉱物学会1981年会講演要旨集, 113.
- ^ 広渡文利, 福岡正人 (1988) 日本のマンガン鉱物に関する2,3の問題. 鉱物学雑誌, 18, 347-365.
- ^ Bank H., Banerjee A., Pense J., Schneider W., Schrader W. (1978) Sogdianit-ein neues Edelsteinmineral?. Z. Deut. Gemmol. Ges., 27, 104-105.
- ^ Dunn P.J., Brummer J.J., Belsky H. (1980) Sugilite, a second occurrence; Wessels Mine, Kalahari manganese field, Republic of South Africa. Canadian Mineralogist, 18, 37-39.
- ^ 古本里菜, 福本辰巳, 皆川鉄雄, 浜根大輔 (2012) 岩城島エジリン閃長岩中のekanite, sogdianite. 日本鉱物科学会2012年年会, R1-P15.
参考文献
編集- Nobuhide MURAKAMI; Toshio KATO, Yasunori MIÚRA and Fumitoshi HIROWATARI (1975). “Sugilite, a new silicate mineral from Iwagi Islet, Southwest Japan”. Mineralogical Journal (The Mineralogical Society of Japan) 8 (2): 110-121. doi:10.2465/minerj.8.110. ISSN 0544-2540 .
- Toshio KATO; Yasunori MIÚRA and Nobuhide MURAKAMI (1975). “Crystal structure of sugilite”. Mineralogical Journal (The Mineralogical Society of Japan) 8 (3): 184-192. doi:10.2465/minerj.8.184. ISSN 0544-2540 .
- Pete J. Dunn; J. J. Brummer, and H. Belsky (1980). “Sugilite, a second occurrence; Wessels Mine, Kalahari manganese field, Republic of South Africa”. The Canadian Mineralogist (Mineralogical Association of Canada) 18 (1): 37-39. ISSN 0008-4476 .
- 砂川一郎「南部石と杉石 : 日本で新鉱物として発見され, その後宝石質の結晶がみつかった珍しい鉱物2種」『宝石学会誌』第9巻第2-3号、宝石学会(日本)、1982年、55-60頁、ISSN 0385-5090、NAID 110003324076。
- 青木正博『鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社、2011年、146頁。ISBN 978-4-416-21104-5。