木造住宅密集地域
木造住宅密集地域(もくぞうじゅうたくみっしゅうちいき)は、日本の都市部で木造の建築物が密集しているエリアを指し、防災上危険な市街地として対策が行われている。しばしば略され、木密地域(もくみつちいき)とも呼ぶ。
経緯
編集太平洋戦争後焼け野原となった東京都や大阪府の市街地では、復興の際都市計画道路の計画が策定されたが、それらの多くは実現せず、無秩序に復興が進み住宅地が密集して広がっていった。その後1995年に発生した阪神・淡路大震災において、木造密集地で大規模火災が発生し、甚大な被害が生じたことから木造密集地域の危険性が認識されはじめるようになった。首都直下型地震が予想される東京都では、特に木造密集地域が山手線外周部に多く、震災が発生すると壊滅的な被害になることから、対策事業に取り組むきっかけとなった。
2011年の東日本大震災によってさらに防災意識が高まり、東京都では2012年から一層の木密地域解消を目標に「不燃化10年プロジェクト」が始まった。
東京都の木造地域対策
編集国土交通省がまとめた「地震時等に著しく危険な密集市街地」では2012年時点で全国197地区中113地区が東京都内に危険な密集市街地があるとされ、 東京都が公表した被害想定では木密地域の火災により4000人以上が死亡すると想定されている。
2012年から木密地域不燃化10年プロジェクトと称し、不燃化を強力に推進している。
木密解消にむけて、対策エリアに不燃化特区を指定し、市街地整備を促進している。道路の拡幅や不燃化建て替えの協力者への固定資産税・都市計画税の減免などを行っている。
また、東京都では戦後都市計画決定されていながらも、人口増加による市街地拡大で整備されていない都市計画道路が多数あり、延焼防止など防災上効果の高い主要な未整備の計画道路を「特定整備路線」に指定し、2020年度までの完成を目標に整備を進めた。
事業推進により、2016年には1万3000ヘクタールあったとされる木密地域が2019年には8600ヘクタールに減少している。整備地域の不燃化率は2006年時点で56.2%だったが、2018年時点では63%に上昇している。
プロジェクトは2021年に終了したが[1]引き続き取り組む必要があるため取り組みは5年間の延長となった[2]。
実施地区
編集2021年に地区を見直し52地区が指定されている[3]。
- 補助81号線沿道地区
- 豊島区・北区にまたがる。特定整備路線の補助81号線道路整備にあわせ両側の市街地整備を図っている。
- 十条駅周辺地区
- 北区十条駅周辺。十条駅西口では再開発事業が開始され、特定整備路線の補助83号と補助73号の沿道で整備が行われている。
- 志茂地区
- 北区志茂周辺。特定整備路線の補助86号線の整備と主要生活道路の整備が行われている。志茂三丁目9番地区防災街区整備事業では住宅集約化が行われている。
- 赤羽西補助86号線沿道地区
- 北区赤羽西地域。特定整備路線の補助86号線の整備にあわせ沿道住宅地の建て替えを行う。
- 足立区中南部一帯地区
- 足立区南部の別事業の西新井駅西口周辺地区を除いたエリア、北千住周辺も含む。特定整備路線は補助136号線が東西に整備予定。
- 東四つ木地区
- 葛飾区東四つ木地区。生活道路の拡幅整備と建て替え促進事業を行っている。
- 東立石四丁目地区
- 葛飾区東立石4丁目地区。主要生活道路4路線の拡幅整備と家屋建て替えを行っている。
- 堀切二丁目周辺及び四丁目地区
- 葛飾区堀切地区。主要生活道路5路線の整備と建て替え事業を行っている。
- 松島三丁目地区
- 江戸川区松島地区。密集地域の道路拡幅と不燃化促進を行っている。
- 平井二丁目付近地区
- 江戸川区平井地区。特定整備路線の補助144号線の整備と建て替え支援を行っている。
- 南小岩南部・東松本付近地区
- 江戸川区南小岩地区。特定整備路線の補助285号線の整備を中心に行っている。
- 押上二丁目地区
- 墨田区押上二丁目地区。密集地の不燃化推進と、桜橋通り街路事業を行っている。
- 東中延一・二丁目、中延二・三丁目地区
- 豊町四・五・六丁目、二葉三・四丁目及び西大井六丁目地区
- 品川区豊町4~6丁目、二葉3・4丁目、西大井6丁目地区。なお中央を貫く、補助29号線沿線は除く。二葉4丁目では共同建て替えを予定している。主に建物の不燃化を促進している。
- 戸越二・四・五・六丁目地区
- 品川区戸越地区。老朽建物の建て替え促進を行っている。なお中央を貫く、補助29号線沿線は除く。地区防災道路の整備も計画している。
- 西品川二・三丁目地区
- 品川区西品川地区。主に不燃化建て替えの促進を行っている。
- 大井五・七丁目、西大井二・三・四丁目地区
- 品川区大井、西大井地区。不燃化促進や公園整備が予定されている。滝王子通りにおいて都市防災不燃化促進事業も行われている。なお中央を貫く、補助29号線沿線は除く。
- 補助28号線沿道地区
- 品川区大井地区。特定整備路線の補助28号線の両側30mの不燃化を行っている。
- 目黒本町五丁目地区
- 目黒区目黒本町地区。特定整備路線の補助46号線の整備と沿道の不燃化に取り組んでいる。
- 羽田二・三・六丁目地区
- 大田区羽田地区。生活道路の拡幅整備と、老朽建物の不燃化の促進を行っている。
- 補助29号線沿道地区(大田区)
- 大田区東馬込地区。特定整備路線の補助29号線の整備(大田区内のみ)と沿道の不燃化事業を行っている。
- 区役所周辺地区
- 北沢三・四丁目地区
- 世田谷区北沢地区。特定整備路線の補助26号線の整備を行っている。茶沢通りの拡幅整備、老朽建物の不燃化を推進している。
- 太子堂・若林地区
- 世田谷区太子堂・若林地区。生活道路の整備、老朽建物の不燃化推進を行っている。
- 北沢五丁目・大原一丁目地区
- 世田谷区北沢五丁目、大原一丁目地区。密集市街地の不燃化、生活道路整備を行っている。
- 本町二~六丁目地区
- 渋谷区本町地区。生活道路の拡幅整備と住宅地の不燃化を実施している。
- 弥生町三丁目周辺地区
- 中野区弥生町地区。避難道路を8本整備している。また都営川島町アパート跡地を代替地として活用し、住宅地の不燃化も推進している。
- 大和町地区
- 中野区大和町地区。特定整備路線の補助227号線の整備を行っている。また、避難道路の整備と不燃化を実施している。
- 方南一丁目地区
- 杉並区方南地区。不燃化建て替えの促進を行っている。
埼玉県の木造地域対策
編集埼玉県川口市では、危険な密集市街地に挙げられている芝富士地区と芝樋ノ爪地区において、災害時に緊急車両が走行できるよう狭隘道路の拡幅と、住宅建て替えの支援を行っている。
外部リンク
編集脚注
編集- ^ 都、2021~30年度の防災都市づくり基本方針
- ^ “不燃化特区制度と特定整備路線の取組”. 東京都. 2022年4月12日閲覧。
- ^ 木密地域不燃化10年プロジェクト