期限
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期限(きげん)とは期間の限界すなわち期間の最終日時[1]。法律上は法律行為の効力を何らかの形で将来発生することの確実な事実にかからせるための付款をいい、同じく付款の一種である条件とは発生することが確実である点で異なる。
民法上の期限
編集- 民法は、以下で条数のみ記載する。
期限の種類
編集始期と終期
編集期限は到来時の効力の発生あるいは消滅の観点から始期と終期とに分けられる(135条)。
- 始期
- 終期
- 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する(135条第2項)。
確定期限と不確定期限
編集期限は到来の時期が確定しているか否かによって確定期限と不確定期限とに分けられる。
- 確定期限
- 将来来ることが確実であり、いつ来るかが確定している期限。
- 不確定期限
履行期限と停止期限
編集期限の有効性
編集期限を付すことができない法律行為を「期限に親しまない行為」という(条件における「条件に親しまない行為」に相当する)。
婚姻や養子縁組など効果が直ちに発生することが必要とされる法律行為には期限を付すことができない[4]。また、相続など遡及効のある行為(効力が時間を遡って生じる場合)に期限を付すことは無意味である[4]
なお、条件の場合とは異なり、手形行為には期限を付すことができる(例として先日付手形がある)[4][5]
期限の利益
編集期限の利益の意義
編集期限の到来するまで間があることで当事者が受ける利益のことを期限の利益という。例えば返還時期の定めのある利息付消費貸借(借金等)の場合、債務者(借主)には期限が到来するまでの間、金銭を自由に使用することができ貸主からの返還請求を拒むことができるという期限の利益があることになる[6][7]。
期限の利益がいずれの当事者に存するかは契約内容によって異なる。例えば無償寄託のようにもっぱら債権者側に期限の利益がある場合、定期預金や金銭信託のように当事者双方に期限の利益がある場合もあるが、通常、期限について定めが置かれる場合には債務者のためである場合が多い[8]。そこで、民法は期限の利益は債務者のために定められているものと推定する規定を置いている(136条1項)。
期限の利益を持つ当事者は、自由にこれを放棄しうる(136条2項本文)。ただし、相手方の利益を害することはできない(136条2項但書)。例えば返還時期の定めのある利息付消費貸借(借金等)の場合、借主側からは136条2項本文の規定により期限の利益を放棄することでいつでも返還しうるが、そのときは136条2項但書により期限までの利息を支払う必要があることになる[9][10](591条2項は無利息消費貸借に適用され、消費貸借が利息付の場合には一般原則によるとされる[11])。
期限の利益の喪失
編集次の場合には、債務者は期限の利益を主張することができない(137条)。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき(1号)
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
- 債務者の故意・過失を問わない[12]。
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
行政法上の期限
編集行政法上の期限は、行政法上の条件などとともに行政行為の附款とされている。
期限付の使用許可などがこれにあたる。
脚注
編集- ^ 「期間」と「期限」を混同している人は多いが「期間の限界(期間の最終日時)=期限」である
- ^ a b 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、301頁
- ^ a b 山本敬三著 『民法講義Ⅰ 総則』 有斐閣、2001年4月、285頁
- ^ a b c 遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法1 民法総則 第4版増補改訂2版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2002年5月、237頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、304頁
- ^ 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、305頁
- ^ 山本敬三著 『民法講義Ⅰ 総則』 有斐閣、2001年4月、290頁
- ^ 我妻栄・清水誠・有泉亨・田山輝明著 『我妻・有泉コンメンタール民法-総則・物権・債権 第2版』 日本評論社、2008年、279頁
- ^ a b 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、306頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、305頁
- ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、202-203頁
- ^ a b c 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、307頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、308頁