施設論
『施設論』(せせつろん、梵: Prajñapti[1], Prajñaptibhāṣya[1], Prajñaptiśāstra[1])とは、部派仏教の説一切有部による初期論書(アビダルマ)群、いわゆる「六足論」の内の一論[2]。『(阿毘達磨)施設足論』(あびだつま せせつそくろん)とも[3]。
構成
編集本論は、以下の三部構成から成っている[2]。
2013年の段階では、『世間施設』については3種類のサンスクリット断簡、すなわち、ギルギット本と高貴寺・玉泉寺・四天王寺・知恩寺本、トゥルファン本の存在が認められている[4]。漢訳は北宋代の惟浄による『因施設』の大部分に相当する部分訳のみが現存し[5][2](大正蔵No1538[6])、三つが残っているのはチベット語訳のみである[2]。また、2018年には、西チベット・ガリ地区にあるトリン寺の仏塔址で発見された、ブラフミー文字で書写された樺皮写本の2葉のうち1葉が『世間施設』の一部であることが、佛教大学の松田和信の研究によって判明した[7][注釈 1]。なお、この写本では、月輪と日輪、星形といった宇宙観についての記述が残されている[8]。
施設論はこの三つに留まらず、木村泰賢によって、さらなる書として『煩悩施設』、『智施設』、『定施設』、『雑施設』の存在が想定されていたが[9]、シャマタデーヴァの『倶舎論註ウパーイカー』において『随眠施設』(梵: Anuśayaprajñapti, 蔵: phra-rgyas-btags-pa)と『名色施設』(梵: Nāmarūpaprajñapti, 蔵: ming-dang-gzugs-btags-pa)が言及されていることが、本庄良文によって指摘されている[10]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集参考文献
編集- 青原令知 (2010). “『業施設論』の業論と表・無表分別”. 佛教學研究 (龍谷仏教学会) 66: 1-30 .
- 木村誠司 (2019). “いわゆる六足発智についての報告”. 駒沢大学仏教学部研究紀要 (駒澤大学) 77: 110-101 .
- 福田琢 (2013). “『世間施設』の背景”. 同朋仏教 49: 136-120. ISSN 02898403 .
- 本庄良文 (1998). “『随眠施設』『名色施設』-有部『施設論』の未知なる構成要素-”. 印度學佛教學研究 (日本印度学仏教学会) 47 (1): 370-365 .
- 松田和信 (2019). “トリン寺仏塔より出土した世間施設論の梵文写本”. 佛教大学 仏教学部論集 103: 29-39. ISSN 2185419X .