放馬
放馬(ほうば)とは、競走馬が騎手などの乗り手を振り落とすなどして、逃げることである。
なお、この項目では競走馬が競馬場外へ逃げる脱走(だっそう)についても記述する。
概要
編集競馬場内で何らかの事態が発生し、馬が逃走状態になることがある。このことを放馬という。競馬場の馬場内、特に返し馬やスタート準備中に騎乗している騎手を振り落し(落馬)、放馬することが多く、この場合場内でアナウンスされ、捕獲後に馬体検査を行い、出走可否を決定する。ゲート入り中に放馬が発生した場合はゲート入りは中断となり、すべての馬が一度、ゲートから出される。疲労が著しい、跛行などの故障発生などの場合は競走除外となり、除外馬関連の馬券は返還される。また、競馬場外への放馬(脱走)やパドックでの放馬などもあり、夜間放馬など特殊な放馬ケースがある。
放馬・脱走の例
編集GIレースでの放馬
- 1990年 有馬記念 - ヤエノムテキ
- 1枠2番の同馬は天皇賞(秋)をレコード勝ち、ジャパンカップ6着のあと引退レースとして臨んだ有馬記念で、本馬場入場時に岡部幸雄が落馬し放馬した。ヤエノムテキは馬場を一周したところで捕獲されたが、馬体検査の結果異常なしとしてそのまま出走し、7着に敗れた。
- 2009年 優駿牝馬(オークス) - ワイドサファイア
- 2011年 スプリンターズステークス - ビービーガルダン
- 2018年 天皇賞(秋) ダンビュライト
- 2022年 優駿牝馬 - サウンドビバーチェ
深夜の放馬
- 2002年7月28日の夜に新潟競馬場でピアースアローが放馬。出走取消となった。
- 2012年7月14日の午後11時ごろ、翌日のレースに出走を予定していたヨシカワクンが新潟競馬場の馬房から脱走。厩舎地区を放馬しているところを警備員が発見し、厩務員が捕獲した。放馬中の行動が不明のため、出走を取り消した。なお、管理する調教師・矢野英一は注意義務を怠ったとして過怠金3万円が科された[8]。
競馬場外へ脱走
- 1964年の皐月賞は中山競馬場の改修工事により、東京競馬場での開催になった。しかし、出走を予定していたサッポロホマレが競馬場外へ脱走。競走除外となった。馬は府中市車返あたりまで逃げた(レースを勝ったのはのちの三冠馬・シンザン)[9]。
- 1996年の1月25日、大井競馬場の馬洗い場から物音に驚いたスーパーオトメが脱走。平和島出入口から首都高速1号羽田線に入り、空港西出入口までの2.2キロメートル、一般道を含め3.5キロメートルを走行した。馬体に異常はなく、2月3日にデビュー。高速道路を無事に走ったことから交通安全のお守りにと馬券で人気になり、単勝1番人気に推された(結果は5着)。
- 2007年2月24日に阪神競馬場で障害オープン戦の競走中に、ノボリハウツー騎乗の船曳文士と他馬に騎乗した石山繁が落馬。緊急搬送するために柵が外された箇所からノボリハウツーがコース外へ放馬。そのまま業務用通用門から県道へ逃げ出した。たまたま通りかかった調教師の松元省一らが捕獲した。通行人や馬に怪我はなかった[9][10]。
- 2011年6月1日の午前8時ごろ、川崎市幸区の川崎競馬場小向厩舎から2歳の牝馬が飛び出し、国道1号を南へ逃走。横浜市鶴見区で止まっていたところを警察官や関係者に捕獲された。約6キロメートルの脱走だった[11]。
- 2013年2月20日、笠松競馬場で調教中だった牝馬のスイートが厩務員を振り切り、装鞍所から脱走。100メートル先の道路で軽乗用車と衝突。馬は左前脚の付け根を付近を骨折し、予後不良となった[12]。
- 2013年4月26日、笠松競馬場で出走前のパドックから装鞍所へ移動中だった牡馬のミッキーオスカーが突然暴れ出し、逃走。鉄のゲートを突き破り場外へ逃走、最終的に競馬場から約7.6キロ離れた各務原市内の路上で各務原警察署の警察官に取り押さえられた[13][14]。
- 2013年10月28日、笠松競馬場で調教中の2歳牝馬コスモビジョンが騎手を振り落として競馬場外へ脱走、付近の町道を走行中の軽乗用車に衝突した。軽乗用車はそのはずみでさらに対向車に衝突、運転手が死亡した[15]。またコスモビジョンも死亡した[16]。なお1年以内に3度も放馬事故を引き起こしたことを踏まえ、笠松競馬は翌月の11月5日から8日まで開催予定だった第13回開催を自粛する事態となった[17]。
放馬しての勝利
脚注
編集- ^ “【オークス】サファイア 岩田振り落とし放馬で除外”. スポニチ Sponichi Annex (2009年5月25日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “カレンチャン重賞4連勝でGI初制覇/スプリンターズS”. netkeiba (2011年10月2日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “【天皇賞・秋】G1で放馬…大歓声が一転、悲鳴へ ダンビュライトは無念の競走除外”. スポニチ Sponichi Annex (2018年10月28日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “【オークス】サウンドビバーチェ競走除外の理由は「顔部挫創」 発走地点で他の馬に蹴られる”. 東スポ競馬 (2022年5月22日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “【オークス】レース直前放馬→除外 15分遅れ発走 レース中CMで中継終了地域も ファン困惑”. デイリースポーツ online (2024年10月28日). 2022年5月22日閲覧。
- ^ “【秋華賞】また放馬!サウンドビバーチェが岩田望を振り落としカラ馬で疾走 馬体「異常なし」でそのまま出走”. 東スポ競馬 (2022年10月16日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “【CBC賞】また!サウンドビバーチェが3度目の放馬 いずれも重賞での〝珍事〟「二度あることは三度あるを体現」”. 東スポ競馬 (2024年8月18日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “ヨシカワクン“夜遊び”で新馬戦出走取り消し”. スポニチ Sponichi Annex (2012年7月6日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ a b “競走馬が競馬場から脱走、県道走る”. 日刊スポーツ (2007年2月25日). 2007年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月28日閲覧。
- ^ “阪神競馬場から競走馬逃げる、レース中に落馬事故”. 朝日新聞社 (2007年2月24日). 2007年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月28日閲覧。
- ^ “競走馬が脱走!川崎から横浜まで6キロ国道走る”. スポニチ Sponichi Annex (2011年6月1日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “笠松の競走馬逃げ、軽乗用車と衝突 ”. 中日新聞 (2013年2月20日). 2013年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月28日閲覧。
- ^ “競走馬、住宅地を駆ける 岐阜・笠松競馬場から逃走”. 日本経済新聞 (2013年4月27日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “競走馬大逃げ 笠松→各務原、7.6キロの“場外レース””. 岐阜新聞web. 2013年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月28日閲覧。
- ^ “逃げた競走馬と車が衝突、男性死亡 岐阜・笠松競馬”. 朝日新聞社 (2013年10月28日). 2013年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年11月4日閲覧。
- ^ “笠松競馬場で競走馬と乗用車の衝突事故”. netkeiba (2013年10月28日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “笠松競馬が開催自粛、名古屋競馬は開催日程を変更へ”. netkeiba (2013年10月30日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “放馬したフェイトフルウォーが2馬身半差で快勝/東京新馬”. netkeiba (2010年10月10日). 2024年10月28日閲覧。
- ^ “全競走成績|競走成績|フェイトフルウォー”. JBISサーチ(JBIS-Search). 2024年10月28日閲覧。