摩擦 (クラウゼヴィッツ)
摩擦(まさつ、独:Friktion im Kriege)とは、軍事学において計画・命令を実際に実行する上で直面する障害を意味する。
概要
編集初めて摩擦の概念を軍事学に導入したのはカール・フォン・クラウゼヴィッツである。彼は『戦争論』の中で、天候、敵の応急的・非合理的な反応、偶発的な問題、予測不能な事件などの偶発的な事件を挙げながら、これらが机上の計画を現実に実行に移す際には障害のみならず脅威にもなりうると論じた。その意味において摩擦は、理論上の戦争と実践上の戦争とを全般的に区分する。
核兵器が開発された現代では、摩擦の概念に新しい意味合いが含まれ、偶発的なエスカレーションや軍事的な誘因などの危険を指すようになる。この新しい概念としての摩擦に対しては、国際連合や国際法による伝統的な開戦法規の規制、偵察・通信のイノベーションによる情報環境の改善によって対処されている。それでも一般に計画が大規模になるほど摩擦が重要な意味を持つ傾向に変わりはなく、摩擦による不測事態への対処は指揮官の中心課題であり続けている。
摩擦の原因は大別すると以下の3種類があり、それらの組合せによって摩擦が発生する。
参考文献
編集- カール・フォン・クラウゼヴィッツ、清水多吉訳『戦争論』中公文庫、2001年。
- Simpkin, R. E. Race to the swift: Thoughts on twenty first century warfare. London: Brassey's. 1985.
- Lebow, R. N. Clausewitz and crisis stability. Political Science Quarterly 103(spring):81-110.
- Benoist-Mechin, J. Sixty days that shook the West: The fall of France, 1940. New York: Putnam. 1963.