忠誠
忠誠(ちゅうせい)とは、自らが所属する国家、団体、それらの権力者、または思想に対し,尊敬の念を伴った献身と服従の態度を示すことである[1]。
古くから社会構造を形成する重要な要素と考えられており、儒教における重要な徳目の一つとして「忠」があげられている。その意味は二つあり、一つは忠信という語の示すように心の在り方、もう一つは君臣関係を律するものという限定した使用法である。日本においては、同じく儒教の重要な徳目で、身近な人間への心遣いをあらわす「孝」より、忠を優先する考え方となったが、元となった中国では「孝」を優先するのが一般的である[2]。
外国の忠誠
編集英語で忠誠を表す語には、Allegiance Fidelity、Loyaltyがある。
- Fidelity:約束・主義などに従うこと
- Loyalty:個人の心、感情から来る献身を表す。
- Allegiance:国や組織への義務的な忠誠
「Allegiance」には、二つの種類があると考えられている。一つは、生まれながらに所属していた国家や主権者へ示す忠誠(natural allegiance)、もう片方は、帰化した国家などに示す忠誠(local allegiance)である[3]。
イギリスでは、原則として国王の領土内で出生した者はイギリス臣民として「国王への忠誠」を義務とし、国王は「イギリス臣民に対する保護義務」を持つ[4]。
忠誠の儀式
編集中世において、主君と家臣は主従関係を結ぶ際、オマージュと呼ばれる叙任式を執り行われていた。現代においては、忠誠宣誓(loyalty oath)とよばれる忠誠の誓い (アメリカ)、忠誠宣誓 (ドイツ)など、各国で帰化の際や、公式行事で行われている[5][6]。
社会心理学での研究
編集社会心理学の分野で忠誠心は、1980年に組織コミットメントという操作性の高い概念が輸入されて以来、盛んに研究されている[8][9][10]。
組織コミットメントとは、「ある特定の組織に対する個人の同一化および 関与の強さ」が代表的な定義とされているが、研究者や目的によって定義は変化するため一概には言えない[11]。分かりやすく書くと「組織に対して、どれだけ貢献したいのか」という傾向のことである。
ベッカーは組織コミットメントを情緒的、功利的な要素で分類し[12]、その後、メイヤーとアレンが感情的要素、存続的要素、規範的要素に再分類を行った[13]。感情的要素は組織への愛着,存続的要素とは給金などの損得、規範的要素とは、それまでの研究に無かった義務感・倫理観等の規範に従い、そうすべきだからするという概念である[8][14]。
これらの研究の結果によって、OCQ(Organizational. Commitment Questionnaire)という尺度を用いて、従業員などの組織への忠誠心、貢献意識(コミットメント)の傾向と高さをはかることが可能となっている。
出典
編集- ^ 忠誠(コトバンク)
- ^ 于君, 「『平家物語』における武士の「孝」と「忠」」『広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域』 62号 p.404-396, 2013年, 広島大学大学院教育学研究科, ISSN 1346-5554, doi:10.15027/35389。
- ^ Commentaries on the Laws of England: In the Order, and Compiled from the Text of Blackstone and Embracing the New Statutes and Alterations to the Present Time 著:John Bethune Bayly 1840年1月1日 66p
- ^ 宮内紀子, 「1948年イギリス国籍法における国籍概念の考察 : 入国の自由の観点から」『法と政治』 62巻 2号 p.163(1102)-203(1062), 2011年, ISSN 02880709。
- ^ 新田浩司, 忠誠宣誓(コトバンク)
- ^ アメリカ合衆国における国旗に対する忠誠の誓い(pledge of allegiance to the flag of the United States)の法的問題について」『地域政策研究』 高崎経済大学地域政策学会, 第7巻第2号 2004年10月 p.1-16
- ^ バイア(コトバンク)
- ^ a b 田尾雅夫編著, 「「会社人間」の研究 : 組織コミットメントの理論と実際」京都大学学術出版会. 1997, 334p。
- ^ 第2章 コミットメント:組織コミットメント、ジョブインボルブメント、キャリアコミットメント、職務満足(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
- ^ 松山一紀, 「〈論文〉帰属意識と忠誠心, そして組織コミットメント」『商経学叢』 60巻 1号, p.83-106, 2013年09月, 近畿大学商経学会
- ^ 高橋弘司, 「組織コミットメント尺度の項目特性とその応用可能性 : 3次元組織コミットメント尺度を用いて」『経営行動科学』 11巻 2号 1997年 p.123-136, doi:10.5651/jaas.11.123。
- ^ Becker, H. S. (1960). “Notes on the Concept of Commitment”. American Journal of Sociology 66: 32. doi:10.1086/222820. JSTOR 2773219.
- ^ Meyer, J. P.; Allen, N. J. (1991). “A three-component conceptualization of organizational commitment”. Human Resource Management Review 1: 61. doi:10.1016/1053-4822(91)90011-Z.
- ^ 西脇暢子, 「専門職従業員の組織コミットメントとパフォーマンスの関係性--研究リーダー,研究員,技術者を対象にしたデータ分析 (公開月例研究会講演記録〈第257回(2010.12.16)〉 2008〜2009年度産業経営プロジェクト一般研究成果報告 組織流動化時代の人的資源開発に関する研究--組織間協力と組織間人材移転を踏まえた人材開発・育成・活用の問題を中心として)」『日本大学経済学部産業経営研究所所報』 68号 p.50-54, 2011-03, NAID 40018818368